就労女性の妊娠分娩および妊産婦健康診査のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200200347A
報告書区分
総括
研究課題名
就労女性の妊娠分娩および妊産婦健康診査のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
西島 正博(北里大学)
研究分担者(所属機関)
  • 木下勝之(順天堂大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
女性の社会進出が目覚しく、妊娠中の就労は周産期予後に悪影響を及ぼす可能性が危惧されるが、就労女性は晩婚化傾向にあり、高齢化に伴う合併症頻度が増加するのか、就労そのものが妊娠予後に影響するのかについて不明な点が多い。就労そのものが周産期予後に及ぼす影響を明らかにすることは就労女性の妊産婦健康管理のあり方を考える上でも重要と思われる。そこで就労に起因する因子と周産期予後との関連について検討する。
研究方法
平成11年度厚生労働科学研究費補助金子ども家庭総合研究事業「妊産婦の健康管理及び妊産婦死亡の防止に関する研究」(主任研究者 桑原慶紀)で作成した妊産婦健康調査票を用いて、平成11年9月から12年2月までの調査期間に分担研究班の協力施設(7施設)、班員の施設及びその関連施設(120施設)で調査をおこなった。妊娠12週までに胎児心拍動が確認された単胎の初産婦および1回経産婦4556例を対象とし、プロスペクティブな検討をおこなった。
妊産婦健康調査票の内容は、家庭環境、就労の有無、就労内容を中心とした71項目からなり、初診時と妊娠帰結時に妊婦による記入を行った。分娩終了後は、主治医により妊娠・分娩経過を評価した。重症妊娠悪阻,切迫流産,流産,切迫早産,早産(34週未満),37週未満,貧血(血中ヘモグロビン9.0g/dl),重症妊娠中毒症,子宮内胎児発育遅延と就労との関連についてロジスティック回帰分析を行った。
結果と考察
4556例の対象例で妊娠中も就労していた例は44%、非就労が32%であった。なお、10%が妊娠を契機に就労を中止しており、14%が不明であった。正社員としての就労が42%で、パートタイム,派遣社員が24%、その他が26%であった。勤務形態は52%が日中勤務で、時間交代制,夜勤,その他が17%、不明が31%であった。母子健康管理指導連絡カードについて79%が認知していたが、実際に使用した例は9%に過ぎなかった。
周産期事象の発症頻度で、有意差を認めた項目を以下に示す。
(1) 重症妊娠悪阻
労働負荷の変動・技能の低活用・人々への責任などストレスが大きいと発症しやすかった。
(2)切迫流産
就労有無で差は見られなかった。飲酒ありは、飲酒なしに比べて発症頻度が低く徒歩・自宅勤務・公共機関30分以内で発症しやすかった。
(3)流産
35歳以上で発症しやすかった。従来の見解と矛盾しない。
(4)切迫早産
就労の有無でその頻度に差は見られなかったが、職場の結婚している女性の割合が10%以上で発症しやすく、職場の女性の子供のいる割合が10%以上で発症しやすかった。BMI 25未満で発症しやすい。勤務形態が日中勤務(交代制や夜間・夕方のみではない)で発症しやすい。
(5)早産(34週未満)
職場の物理的環境(騒音・温度・湿度)が良好なほど早産頻度が低かった。
(6)早産(37週未満)
35歳以上で早産頻度が高かった。就労に関しては、量的労働負荷が少ない妊婦で早産の発症頻度が高かった。
(7)貧血
妊娠経過中の貧血はやせている妊婦で発症しやすく、経産婦・育児ありで発症しやすい。
(8)重症妊娠中毒症
BMI 25以上、初産婦で発症しやすかったが、就労有無で発症頻度に差は見られなかった。
(9)子宮内胎児発育遅延
喫煙ありで発症しやすい。
今回検討した周産期事象と就労の有無には関連は見られなかった。しかしながら就労のみの検討では、肉体的・精神的ストレスのある職場での就労女性で重症妊娠悪阻の発症頻度が高かった。また、不良な職場の物理的環境は早産の発症に繋がる可能性が示唆された。
結論
妊娠中の就労が周産期予後に負の影響を及ぼす可能性が少ないことが明らかとなった。しかしながら肉体的・精神的ストレスの負荷や物理的な就労環境が不良な場合は、周産期予後に影響する可能性があることを認識した上で妊産婦健康診査を考える必要がある。

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