文献情報
文献番号
200200344A
報告書区分
総括
研究課題名
小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
鴨下 重彦(社会福祉法人賛育会賛育会病院)
研究分担者(所属機関)
- 松尾 宣武(国立成育医療センター)
- 衛藤 義勝(東京慈恵会医科大学)
- 木下 勝之(順天堂大学医学部付属順天堂医院)
- 藤村 正哲(大阪府立母子保健総合医療センター)
- 市川 家國(東海大学医学部)
- 村田 雄二(大阪大学大学院医学系研究科)
- 小宮山 淳(信州大学医学部)
- 中野 仁雄(九州大学大学院医学研究院)
- 桃井 真里子(自治医科大学)
- 大澤 真木子(東京女子医科大学)
- 岡井 崇(昭和大学医学部)
- 加藤 達夫(聖マリアンナ医科大学)
- 州博(東北大学大学院医学系研究科)
- 清野 佳紀(岡山大学大学院医歯学総合研究科)
- 朝倉 啓文(日本医科大学)
- 桑原 正彦(広島県地域保健対策協議会)
- 柳澤 正義(国立成育医療センター)
- 保科 清(東京逓信病院)
- 小林 邦彦(北海道大学大学院医学研究科)
- 片田 範子(兵庫県立看護大学)
- 蝦名 美智子(神戸市看護大学)
- 田邊 美智子(福井医科大学医学部)
- 西田 美佐(国立国際医療センター研究所)
- 田中 康雄(国立精神・神経センター精神保健研究所)
- 横尾 京子(広島大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
80,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
小児科・産科医に過重な労働が強いられている実態を明らかにし、改善のため人材をいかに確保・育成していくか、限られた人材、財源などをいかに効率よく配備するか、などの課題について調査研究し、小児・周産期医療のあるべき姿を幅広く提言する。
研究方法
25名の分担研究者は以下の4つのテーマ(班)に分かれて調査研究を実施した。なお本年度は原則としてパイロット的調査とし、次年度の全国調査に備えることとした。
Ⅰ.小児科・産科医を取り巻く環境の現状と認識に関する研究(班長=松尾宣武)
Ⅱ.小児科・産科医の勤務状態の改善に関する研究(班長=中野仁雄)
Ⅲ.今後の小児科・周産期医療体制に関する研究(班長=清野佳紀)
Ⅳ.小児科・周産期医療に関連する保健医療専門職員の育成に関する研究(班長=片田範子)
Ⅰ.小児科・産科医を取り巻く環境の現状と認識に関する研究(班長=松尾宣武)
Ⅱ.小児科・産科医の勤務状態の改善に関する研究(班長=中野仁雄)
Ⅲ.今後の小児科・周産期医療体制に関する研究(班長=清野佳紀)
Ⅳ.小児科・周産期医療に関連する保健医療専門職員の育成に関する研究(班長=片田範子)
結果と考察
小児科関係:
①わが国の小児プライマリケアにおける一般小児科医、家庭医、専門小児科医の役割分担があいまいなのが問題、適正な小児科医の数はこれら役割分担を明確にした上で出す。
②慈恵医大関連10施設の若手小児科医28名の意識調査により、約半数が研修に満足しているが、収入の不足、多い当直回数、研修や仕事の内容の不適切などの不満もある。
③全国規模で病院小児科医のworkforceの調査・分析を行うため、病院、医師の調査の原案を作成。二次医療機関でもプライマリーケア的疾患患者の業務量が多いのが問題。
④米国では医師の10%が小児科医であるに対し日本は約5%で、その分が過重労働?
⑤信州大学小児科の教官、医員、大学院生について、内科との比較調査。平均勤務時間は小児科が週80時間(内科74)、特に小児科研修医は週100時間と厳しい労働条件。
⑥救急指定医療機関の小児科を対象としたアンケート調査で、小児科は時間のかかる割には医師一人当たりの医療収入は低く、小児科全体の医業収入も内科の58%。
⑦東京女子医大の若手卒業生1721名のアンケート調査で、産休、育児休暇、復職、配偶者の理解、職場環境などから、今後の女性医師支援の在り方を考察。
⑧聖マリアンナ医大の学生の動向。小児科は在学中から20~28%と希望者が多いのに対し、産婦人科には7~10%。医学生レベルでは、勤務条件の厳しさよりもやり甲斐が重要。
⑨第一線病院におけるフレックスタイム導入、僻地における小児医療体制の構築、特機能
病院における救急部と小児科の連携が重要。
⑩広島県で熟練開業小児科医のボランティアによる小児救急電話相談事業を開設、成功。
⑪他科の医師のための小児初期救急ガイドブックの作成の試み等、他科との連携を検討。
⑫救急病院における救急患者の主訴の分析。発熱、嘔吐・下痢などの6種類で主訴の81.9%
主訴についての住民の理解を得、夜間救急患者は減少、小児科医の予備力が高まる。
⑬北海道の3大学小児科関連93病院で、女性小児科医の産前、産後および育児に関する
調査。女性小児科医の多くが、勤務と育児の板ばさみで苦悩している。
⑭小児救急医療の現場におけるコメディカルの協働状況を調査し、電話相談やトリアージ看護師の活用、コンビニ化現象への対応策など問題点が抽出。
⑮小児医療の現場で採血、点滴などの処置を受け、また入院する子どもたちは、理解力に見合った説明を受けている場合が少なく、苦痛を乗り越えるための心のケア(プレパレーション)が極めて重要であることが指摘。
⑯小児医療において、特に慢性疾患の療養支援をより効果的に行うため、20の小児総合医療施設の管理栄養士・栄養士78名全員に質問紙調査を行い、併せて文献調査により、給食管理業務の外部委託が望ましい方向であることを提示。
⑰虐待や発達障害問題に関して、小児医療チームと児童相談所、精神保健センターが協働している場合は多くないこと、しかし協働した場合には結果は良好。
⑱NICU退院児の在宅医療を支える訪問看護ステーションの働きから、NICU、ステーション、小児科医院、三者の連携によって、新生児医療環境の整備が進み、小児科産科若手医師の確保に重要な役割を果たすことが示唆。
産科関係:
①順天堂大学関連13施設で卒後20年以下の産婦人科医81名にアンケート調査。入局の動機、産科医をやめたいか、その理由は?、女性産科医の勤務体制など問題点を把握。
②産科医療について、大阪大学医学部5年生99名を対象とするメールによる意識調査。生命の誕生という感動的な場面がポジティブなイメージの反面、ネガティブな面の上位は訴訟が多いこと。
③既存の資料の分析により、ハイリスク妊娠・分娩の増加、実働産婦人科医師数の減少、女性産婦人科医の割合の増加、卒後臨床研修の必修化の影響などを抽出。
④産婦人科医会の調査結果で、産婦人科医師不足の要因を解明。診療上与える影響、悪循環の形成などを指摘、今後産科医を育成・支援していく方策を提言。
⑤産科医療について日仏の勤務条件の差などを比較検討。日本の女性産科医を最も困らせているのは産休・育児休暇の問題。
⑥産科リスクを軽減するための調査解析により、アクシデントによる妊婦死亡を減少させること、母体搬送の上で1次2次3次の周産期医療機関の分担連携が不十分なこと、産科オープンシステムを推進すること、女性医師の増加による当直体制におけるマンパワー不足、などが解決すべき問題点が明らかに。
⑦助産師外来実施施設の医師(管理者)助産師100名の面接および質問紙調査で、現状を把握。ICMコアコンピテンシー(世界助産師会議による専門職として必要な知識技能)の調査、職務満足度の調査を行い、結果は概ね良好。
①わが国の小児プライマリケアにおける一般小児科医、家庭医、専門小児科医の役割分担があいまいなのが問題、適正な小児科医の数はこれら役割分担を明確にした上で出す。
②慈恵医大関連10施設の若手小児科医28名の意識調査により、約半数が研修に満足しているが、収入の不足、多い当直回数、研修や仕事の内容の不適切などの不満もある。
③全国規模で病院小児科医のworkforceの調査・分析を行うため、病院、医師の調査の原案を作成。二次医療機関でもプライマリーケア的疾患患者の業務量が多いのが問題。
④米国では医師の10%が小児科医であるに対し日本は約5%で、その分が過重労働?
⑤信州大学小児科の教官、医員、大学院生について、内科との比較調査。平均勤務時間は小児科が週80時間(内科74)、特に小児科研修医は週100時間と厳しい労働条件。
⑥救急指定医療機関の小児科を対象としたアンケート調査で、小児科は時間のかかる割には医師一人当たりの医療収入は低く、小児科全体の医業収入も内科の58%。
⑦東京女子医大の若手卒業生1721名のアンケート調査で、産休、育児休暇、復職、配偶者の理解、職場環境などから、今後の女性医師支援の在り方を考察。
⑧聖マリアンナ医大の学生の動向。小児科は在学中から20~28%と希望者が多いのに対し、産婦人科には7~10%。医学生レベルでは、勤務条件の厳しさよりもやり甲斐が重要。
⑨第一線病院におけるフレックスタイム導入、僻地における小児医療体制の構築、特機能
病院における救急部と小児科の連携が重要。
⑩広島県で熟練開業小児科医のボランティアによる小児救急電話相談事業を開設、成功。
⑪他科の医師のための小児初期救急ガイドブックの作成の試み等、他科との連携を検討。
⑫救急病院における救急患者の主訴の分析。発熱、嘔吐・下痢などの6種類で主訴の81.9%
主訴についての住民の理解を得、夜間救急患者は減少、小児科医の予備力が高まる。
⑬北海道の3大学小児科関連93病院で、女性小児科医の産前、産後および育児に関する
調査。女性小児科医の多くが、勤務と育児の板ばさみで苦悩している。
⑭小児救急医療の現場におけるコメディカルの協働状況を調査し、電話相談やトリアージ看護師の活用、コンビニ化現象への対応策など問題点が抽出。
⑮小児医療の現場で採血、点滴などの処置を受け、また入院する子どもたちは、理解力に見合った説明を受けている場合が少なく、苦痛を乗り越えるための心のケア(プレパレーション)が極めて重要であることが指摘。
⑯小児医療において、特に慢性疾患の療養支援をより効果的に行うため、20の小児総合医療施設の管理栄養士・栄養士78名全員に質問紙調査を行い、併せて文献調査により、給食管理業務の外部委託が望ましい方向であることを提示。
⑰虐待や発達障害問題に関して、小児医療チームと児童相談所、精神保健センターが協働している場合は多くないこと、しかし協働した場合には結果は良好。
⑱NICU退院児の在宅医療を支える訪問看護ステーションの働きから、NICU、ステーション、小児科医院、三者の連携によって、新生児医療環境の整備が進み、小児科産科若手医師の確保に重要な役割を果たすことが示唆。
産科関係:
①順天堂大学関連13施設で卒後20年以下の産婦人科医81名にアンケート調査。入局の動機、産科医をやめたいか、その理由は?、女性産科医の勤務体制など問題点を把握。
②産科医療について、大阪大学医学部5年生99名を対象とするメールによる意識調査。生命の誕生という感動的な場面がポジティブなイメージの反面、ネガティブな面の上位は訴訟が多いこと。
③既存の資料の分析により、ハイリスク妊娠・分娩の増加、実働産婦人科医師数の減少、女性産婦人科医の割合の増加、卒後臨床研修の必修化の影響などを抽出。
④産婦人科医会の調査結果で、産婦人科医師不足の要因を解明。診療上与える影響、悪循環の形成などを指摘、今後産科医を育成・支援していく方策を提言。
⑤産科医療について日仏の勤務条件の差などを比較検討。日本の女性産科医を最も困らせているのは産休・育児休暇の問題。
⑥産科リスクを軽減するための調査解析により、アクシデントによる妊婦死亡を減少させること、母体搬送の上で1次2次3次の周産期医療機関の分担連携が不十分なこと、産科オープンシステムを推進すること、女性医師の増加による当直体制におけるマンパワー不足、などが解決すべき問題点が明らかに。
⑦助産師外来実施施設の医師(管理者)助産師100名の面接および質問紙調査で、現状を把握。ICMコアコンピテンシー(世界助産師会議による専門職として必要な知識技能)の調査、職務満足度の調査を行い、結果は概ね良好。
結論
各班員の予備調査は順調に行われ、小児医療、産科医療について下記の問題点が明らかにされた。また本調査に向けて改善すべき点も示された。
①巷間に言われる小児科医の不足は、医師絶対数の不足ではなく、workforceの不足であり、救急医療、周産期医療、および小児精神保健医療について全国的な調査結果のデータベース化を推進することが喫緊の課題。
②産科のマンパワー不足の背景要因の一つに訴訟の増加があり、根本的対策が必要。
③小児科産科とも医療の地域差が大きく、この点に配慮した上での救急医療システムの構築や周産期医療ネットワークの確立が重要で、若手医師確保のためにも有効。
④女性医師のworkforceは重要であり、特に女性勤務医の生活向上のために、出産や育児の支援体制が今後一層充実すること。一つの具体的な施策は院内保育所の完備と24時間保育を可能とすること。育児を行う女性医師が安心して診療に従事できる体制を築くことは、小児科産科に限らず、21世紀の医療界では重要になる。
⑤諸外国の小児科、特に日米比較により、わが国小児科医の過重労働が明らか。国内でも他科との比較で小児科医の労働条件は厳しい。
⑥人員確保において危機的な状況に置かれているのは主として中規模病院の小児科・産科であり、フレックスタイムの導入など思い切った方策が取り入れられるべき。
⑦小児医療、産科医療に対する医学生の意識調査は次年度特に力を入れたい課題。
⑧小児科産科医療の充実発展のために、コメディカルとの協働は不可欠で、特に患者本位の医療の立場からも積極的に連携を深める。
①巷間に言われる小児科医の不足は、医師絶対数の不足ではなく、workforceの不足であり、救急医療、周産期医療、および小児精神保健医療について全国的な調査結果のデータベース化を推進することが喫緊の課題。
②産科のマンパワー不足の背景要因の一つに訴訟の増加があり、根本的対策が必要。
③小児科産科とも医療の地域差が大きく、この点に配慮した上での救急医療システムの構築や周産期医療ネットワークの確立が重要で、若手医師確保のためにも有効。
④女性医師のworkforceは重要であり、特に女性勤務医の生活向上のために、出産や育児の支援体制が今後一層充実すること。一つの具体的な施策は院内保育所の完備と24時間保育を可能とすること。育児を行う女性医師が安心して診療に従事できる体制を築くことは、小児科産科に限らず、21世紀の医療界では重要になる。
⑤諸外国の小児科、特に日米比較により、わが国小児科医の過重労働が明らか。国内でも他科との比較で小児科医の労働条件は厳しい。
⑥人員確保において危機的な状況に置かれているのは主として中規模病院の小児科・産科であり、フレックスタイムの導入など思い切った方策が取り入れられるべき。
⑦小児医療、産科医療に対する医学生の意識調査は次年度特に力を入れたい課題。
⑧小児科産科医療の充実発展のために、コメディカルとの協働は不可欠で、特に患者本位の医療の立場からも積極的に連携を深める。
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