在宅痴呆性高齢者の環境適応の円滑化と介護負担軽減のための居住支援プログラムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
200200283A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅痴呆性高齢者の環境適応の円滑化と介護負担軽減のための居住支援プログラムの開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 桂子(日本社会事業大学社会福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 足立啓(和歌山大学)
  • 児玉昌久(早稲田大学)
  • 松永公隆(長崎純心大学)
  • 下垣光(日本社会事業大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ゴールドプラン21において、痴呆性高齢者支援対策の推進は重点課題と位置づけられている。北欧等での実践から、痴呆性高齢者に適した環境は、行動を改善し、治療的効果をもたらすことが注目されている。しかし、わが国においては、在宅と施設の環境と生活の継続を容易にする住環境整備指針や、在宅生活が困難となった場合に施設環境適応を円滑にする施設環境整備指針やそれと合わせて行う環境適応援助プログラムなど体系的な居住支援プログラムは皆無の状況である。3年間の研究計画では、痴呆の症状に対応して、家族介護者や介護職員が取り組むことのできる環境整備や環境適応支援プログラムの開発を目的とする。初年度は在宅生活継続のために、①在宅痴呆性高齢者への調査より、在宅生活の継続に有効な住環境整備の内容を明確化、②在宅介護者のストレスへの、ストレスマネジメントのモデル化と対処プログラム作成等を行った。平成13年度は、在宅から施設へ移行した際に、環境適応を容易とする環境整備と適応援助について、以下のテーマを取り上げ検討を行った。①痴呆ユニットのケア環境が入居者の行動やケアの個別性に与える効果を事例研究より実証。②痴呆性高齢者の行動に及ぼす施設の物理的環境と職員の関わりの影響を数量的調査より実証。③高齢者施設における援助者への職場環境と痴呆性高齢者への専門的環境の関連性を分析。④痴呆性高齢者への環境支援指針(PEAP日本版3)をユニットケア施設に適用し有効性の検討。⑤言語指標の使用が困難な痴呆性高齢者の環境ストレス指標としての唾液中免疫抗体分析の検討。平成14年度は、既存施設の環境改善に取り組みたいという要望に応えるために、「痴呆性高齢者への環境支援のための指針」を用いた既存施設における環境改善の介入研究を中心として、それを進める際の基本知識を含めた、施設環境づくり研修プログラムの作成を目的とする。
研究方法
①痴呆性高齢者ケアと環境に関する基本的な考え方の整理、②「痴呆性高齢者への環境支援のための指針」の特徴を分かりやすく解説、③「痴呆性高齢者への環境支援のための指針」を活用する際の課題を、痴呆ケアに携わるスタッフへの調査に基づき明らかにした、④この指針を用いて、特別養護老人ホームにおいて介入研究を実施して、施設環境づくりのプロセスと評価手法を明らかにした、⑤施設スタッフのサイドから、環境づくり推進の要因や課題を明らかにした。
結果と考察
結論
3年間の研究計画では、痴呆の症状に対応して、家族介護者や介護職員が取り組むことのできる環境整備や環境適応支援プログラムの開発を行った。初年度は在宅生活継続のために、①在宅痴呆性高齢者への調査より、在宅生活の継続に有効な住環境整備の内容を明確化、②在宅介護者のストレスへの、ストレスマネジメントのモデル化と対処プログラム作成等を行った。平成13年度は、在宅から施設へ移行した際に、環境適応を容易にする環境整備と適応援助について、以下のテーマについて成果を得た。①痴呆ユニットのケア環境が、入居者の行動やケアの質に与える効果を事例的研究より実証。②痴呆性高齢者の行動に及ぼす施設の物理的環境と職員の関わりの影響を、数量的調査より実証。③高齢者施設における、援助者への職場環境と痴呆性高齢者への専門的環境の関連性を分析。④痴呆性高齢者への環境支援指針(PEAP日本版3)を、ユニットケア施設に適用し有効性の検討。⑤言語指標の使用が困難な痴呆性高齢者の環境ストレス指標としての、唾液中免疫抗体分析の検討。平成14年度は①在宅環境整備と介護者のストレス軽減に関する研究成果は、ハンドブック「あなたもできる 痴 呆に配慮した住まいの工夫(児玉桂子監修(財)長寿社会開発センター」に活かされ、約10万 部が地域に配布されるなど、痴呆性高齢者の在宅継続と介護負担の軽減に寄与し、痴呆性高齢者 と家族の地域での生活を支援している。②小規模ケア施設の環境整備と環境適応支援プログラムに関する研究成果は、ユニットケア普及運 動に取り入れられ、緊急整備課題であるケアユニット等の充実に寄与している。③本研究で開発した「痴呆性高齢者への環境支援のための指針(PEAP日本版3)」を用いた施設環境 づくりに関する研究は、第3回日本痴呆ケア学会優秀論文賞を受賞した。現在環境づくりの実践 が進められており、既存施設の施設環境改善に有用な多面的プログラムの開発ができた。③本研究による一連の成果は、すでに高齢者痴呆介護研究研修センター等の研修プログラムの一部 に採用されており、痴呆介護の質的向上に貢献している。以上のように、環境整備による介護の軽減が図れ、介護費用の削減が可能であり、ゴールドプラン21の重点課題である痴呆性高齢者支援対策に多大な寄与が期待できる。

公開日・更新日

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