ケアマネジメント・システムに対する総合評価に関する研究

文献情報

文献番号
200200282A
報告書区分
総括
研究課題名
ケアマネジメント・システムに対する総合評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
白澤 政和(大阪市立大学大学院生活科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松井妙子(大阪府立看護大学・医療技術短期大学部)
  • 岡田進一(大阪市立大学・大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ケアマネジメント・システムを評価していく上で欠かすことができないことに、介護支援専門員が円滑に業務を行える環境にあるかどうかや、スーパーバイザーなどから適切な助言を受けて、適切なケアマネジメントができているかどうかなどがあげられる。さらに、介護支援専門員がさまざまなサービス提供者と連絡・調整を行い、円滑に連携を行っているかどうかもケアマネジメント・システム評価においては、重要な点であると考えられる。
そこで、まず第1番目の研究では、介護支援専門員が現状の業務についてどのように感じているのか、あるいは、どのような点で困難感を感じているのかを明確にすることとした。そのような困難感を明らかにすることにより、どのような対策が必要であるのかを明確にするとともに、ここで明らかとなった困難感が低い介護支援専門員が所属する機関は、比較的良好なシステムを採用していると評価することができ、また、システム評価の基準の一部とすることができると考えられる。
ケアマネジメント・システムを評価していく上で欠かすことができないことに、介護支援専門員とケアマネジャーと連携が求められるホームヘルプサービス・コーディネーターがある。居宅サービスの中で、最も重要なサービスの一つがホームヘルプサービスであり、そのサービスとの連携は、ケアマネジメントスキルで非常に重要なものである。
また、介護支援専門員が行う連携業務は、介護計画の立案・見直し・実施に大きな影響を与え、その連携の質がケアマネジメント・サービスの質と大きな関連があると考えられる。
そこで、第2番目の研究では、まず、連携をキー概念として、介護支援専門員とホームヘルパーの役割を明確にするとともに、どのような点で介護支援専門員が困難感を感じているのかを明らかにすることとした。困難感の分析を通じて、介護支援専門員とホームヘルプサービスとの連携に、どのような課題があるのかを明確にし、今後の課題を提示する。
研究方法
①介護支援専門員の業務困難感の研究(分担研究者:岡田進一担当)
調査対象者は、大阪府下の居宅介護支援事業者所400カ所の介護支援専門員400名(1カ所1名で調査回答を依頼)である。居宅介護支援事業者の抽出は、平成14年8月にWAM―NETに登録されている事業所から無作為に抽出をすることとした。
調査方法は、質問紙を用いた横断的調査法である。質問紙の配布・回収は、郵送で行った。
調査期間は、2002年8月30日から10月18日までである。調査回答は任意とし、回答が得られた比率(回収率)は、67.3%であった。
調査項目には、基本属性、知識・価値・技術に関する困難感、援助・自己覚知に関する助言ニーズなどがある。
調査項目の作成にあたっては、先行研究をもとに、主任研究者・分担研究者からなる研究プロジェクトグループで検討を行い、数名の介護支援専門員にパイロット・テストを行い、その合意が得られている。したがって、調査項目の表面的妥当性は確保されていると考えられる。また、ここで使用した尺度の信頼性(クロンバッハのα)は、0.8以上であり、信頼性の確保もできていると判断した。
② 介護支援専門員の連携における困難感の研究(分担研究者:松井妙子担当)
調査対象者は、平成13年8月の時点でWAM-NETに登録されている大阪市・京都市・神戸市の居宅介護支援事業者400ヶ所に就業している介護支援専門員400名(1事業所1名で回答を依頼)である。
調査方法は、質問紙を用いた横断的調査法である。質問紙の配布は、質問紙を居宅介護支援事業所に直接郵送配布し、その回収は、無記名で直接郵送回収する方法を採用した。
調査期間は、2003年1月24日から2月14日までである。調査回答は任意とし、回答が得られた比率(回収率)は、45.3%であった。
調査項目には、基本属性、研修状況、給付管理担当数、連携に関する困難感などがある。
調査項目の作成にあたっては、先行研究をもとに、主任研究者・分担研究者からなる研究プロジェクトグループで検討を行い、数名の介護支援専門員にパイロット・テストを行い、その合意が得られている。従って、調査項目の表面的妥当性は確保されていると考えられる。また、ここで使用した尺度の信頼性(クロンバッハのα)は、0.7以上であり、信頼性の確保もできていると判断した。
結果と考察
①介護支援専門員の業務困難感の研究
介護支援専門員の性別については、「女性」が78.3%、「男性」が21.7%であり、女性が大きい割合を占めていた。
年齢については、「40歳代」が34.3%と最も多く、次いで「30歳代」が30.6%、「50歳代」が26.4%の順となっていた。
学歴については、「専門学校・短期大学」が45.5%であり、次いで「大学・大学院」が30.3%であった。
所持資格は、「看護師・准看護師」が最も多く36.7%、次いで、「介護福祉士」が27.7%、ホームヘルパーなど「その他」が21.2%となっていた。
医療・保健・福祉分野における経験年数は、「10年以上20年未満」が46.1%であり、次いで「5年以上10年未満」が24.0%であった。
因子分析の結果、業務上の困難感については、「対人援助職の価値観の葛藤」、「コミュニケーション技法の難しさ」、「ケアプランの作成の難しさ」、「介護支援専門員に対するサポート体制の不備」などの因子が抽出された。また、重回帰分析の結果、そのような困難感に関連する要因として、「業務遂行の自信」、「仕事の負担感」、「職場内のスーパービジョンおよびコンサルテーション」があった。以上のことから、業務遂行への自信を高めるための教育体制の整備、仕事の負担感を軽減する雇用条件の整備および事務作業の簡略化、職場内スーパービジョンおよびコンサルテーションの体制確立などが重要な課題でることが理解できる。
② 介護支援専門員の連携における困難感の研究
調査対象となった介護支援専門員の平均年齢は、43.2歳であった。
性別は、「女性」が77.2%と7割以上を占めていた。
所持資格は、「看護師・准看護師」が27.1%と最も多く、次いで「介護福祉士」が23.1%であった。
月平均の担当ケース数では、「21から40ケース」が35.8%と最も多く、次いで「41ケース以上」が31.1%、「0~20ケース」が29.9%であった。
連携における困難感の因子構造を明確にするため、主成分分析(バリマックス回転)を行った。その結果、「ケアプランとサービスの不整合の際の困難感」、「役割認識の不一致」、「サービスの要請に対する非協力的態度」などが因子として抽出された。
t検定およびF検定の結果、「役割認識の不一致」および「サービスの要請に対する非協力的態度」に関連する要因には、サービス導入段階での同行訪問や、継続的な相互連絡、介護支援専門員とホームヘルパーの信頼関係などがあげられる。これらの要因は、介護支援専門員とホームヘルパーとのコミュニケーション能力とも関連しており、教育研修などで、連携におけるコミュニケーション技法などを教授していくことも求められる。
結論
本研究により、ケアマネジメント・システムの評価においては、介護支援専門員の知識量や技量だけでなく、その知識量や技量が高まる体制についての評価が必要であることが明らかとなった。具体的には、コミュニケーション能力などの向上を目指した居宅支援事業所内の教育体制、スーパービジョンおよびコンサルテーション体制などについても評価の対象とし、介護支援専門員個人の評価だけでなく、ケアマネジメント・システムをトータルな視点で評価していくことが望まれる。

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