ケアマネジメントにおける福祉用具・住環境支援の一体的有効活用とその評価法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200200281A
報告書区分
総括
研究課題名
ケアマネジメントにおける福祉用具・住環境支援の一体的有効活用とその評価法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
高山 忠雄(東北文化学園大学医療福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 田内雅規(岡山県立大学)
  • 安梅勅江(浜松医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険の導入に伴い、限られた財源の中で、いかに福祉用具と住環境システムを一体的に活用して、より効率性の高い自立の促進や介護負担の軽減への効果を得るかは緊急度の高い課題となっている。高齢障害者へのケアマネジメントにおいて、福祉用具と住環境システムの一体的な活用は極めて重要であるにもかかわらず、従来は一体的な評価法が存在しない故に、別々な視点から評価され、資源の有効活用を妨げてきたことは否めない。またケアマネジャーにとっては、ケアプランの作成や対象者への情報提供、ケアの評価の際に、福祉用具と住環境システムの一体的な活用に関する指標が存在しないという現状がある。
本研究は、高齢障害者へのケアマネジメントにおいて、福祉用具と住環境システムを一体的に活用することで、より有効に利用者の自立の促進、介護負担の軽減を図るべく、一体的な活用による効果の予測と結果の評価を可能にする評価法の開発を目的とするものである。すなわち、従来の福祉用具、住環境システムの分断的な評価ではなく、身体機能および生活機能の充足度に焦点を当てた両者の一体的な活用の促進を意図し、ケアプラン作成、ケア実施後の効果の評価によるフィードバックの指標となる評価法の開発を目的とするものである。
研究方法
本研究の特徴は、3つの柱を設定し、身体機能および生活機能を評価指標とした福祉用具と住環境システムの一体的な活用評価に関する既存研究の体系化、利用者側からみた一体的な活用の臨床評価、サービス提供側からみた一体的な活用評価の実態調査を実施し、多角的な視点からの分析を統合することにより、科学的な手法に基づく妥当性を検証し、かつ実践からの意向を反映した実用性の高い成果を得ることである。
「研究総括・福祉用具と住環境システムの一体的な活用評価法の体系化(高山)」と「在宅サービス施設機関における福祉用具と住環境システムの一体的な活用評価の実態(田内)」については、本年度は「福祉用具と住環境システムの一体的な活用評価法に関する研究-介護保険導入による福祉用具・住宅改修の実態把握-」として統合して実施し、初年度、次年度の体系的な整理に基づき抽出されたケアマネジメント過程で必要とされる関連技術項目について検討が必要な課題について妥当性を検討するため、ケアマネジメント関連専門職134名に対する質問紙調査を分析した。
「身体機能および生活機能別の福祉用具と住環境システムの一体的な活用評価法のマトリックス化-評価指標及び専門性評価シートの開発-(安梅)」では、ケアマネジメントに携わる専門職及びサービス利用者7グループ(1グループ7~8名)計52名に対しフォーカスグループインタビューを実施し、地域に在住する要介護高齢者の福祉用具と住環境システムの活用の実態から、一体的な活用のための評価指標及び専門性評価シートを開発した。
結果と考察
「福祉用具と住環境システムの一体的な活用評価法に関する研究-介護保険導入による福祉用具・住宅改修の実態把握-(高山、田内)」では、ケアマネジメントの過程で必要とされる関連技術項目について妥当性を検討し、具体的な評価項目の設定と評価の方法が明らかにされた。
「身体機能および生活機能別の福祉用具と住環境システムの一体的な活用評価法のマトリックス化-評価指標及び専門性評価シートの開発-(安梅)」では、福祉用具と住環境システムの一体的な活用評価を検討する上で、実際の支援場面における技術のプロセスを踏まえ、支援場面における行動の意義付けを行い、1)アセスメント、2)評価、3)知識、4)説明、5)手順(手続き)、6)情報、7)連携の領域に沿った評価項目を抽出し、専門性評価シートを開発した。
具体的には、「アセスメント」では(1)情報収集とアセスメントとして、1)利用者の日常生活場面に基づいたアセスメント、2)居住環境の把握、3)福祉用具と居住環境の複合的なアセスメント、4)アセスメントの目的の明確化、5)サービス利用姿勢、6)介護力、7)地域、(2)目標設定として、1)課題の明確化、2)自立支援、3)問題解決能力の向上、4)問題の優先性の決定、を設定した。
「評価」では、(1)権利の保護として、1)利用者の権利擁護、2)代弁者機能、
(2)有効性として、1)利用者・家族の変化、2)生活リズムの保持、3)個別性への配慮、4)利用者・家族の満足度、5)問題解決、6)継続利用希望、7)エンパワメント、8)適時性、(3)適切な介入として、1)問題解決に向けての対応、2)フォローアップ、(4)評価の実施として、1)評価、を整理した。
「知識」では、(1)基本的知識として、1)福祉用具と住宅改修の複合活用による有効性理解、2)福祉用具に関する知識、3)住宅改修に関する知識、(2)知識としての蓄積として、1)研修機会の確保、2)関連領域における知識の蓄積、を取り上げた。
「説明」では、(1)利用者に対する説明として、1)説明方法、2)適切な説明の実施、(2)理解として、1)利用者の理解の確認、(3)同意として1)利用者の意向確認、2)同意、を設定した。
「手順(手続き)」では、(1)手順に基づいた手続き(過程)として1)手続き、(2)記録の整備として1)個人記録の整備、(3)苦情対応として1)苦情への対応、を盛り込んだ。
「情報」では、(1)情報収集として1)積極的な情報収集、(2)個人情報に対する管理として1)情報管理方法、2)情報収集方法、(3)情報公開・開示として
1)情報開示システム、2)個人情報請求システム、を置いた。
「連携」では、(1)連絡調整として1)チームメンバーとの連絡調整、2)チームにおける関係作り、(2)目標の共有化として1)チームでの目標への合意形成、
2)目標の優先性の決定、(3)情報の共有化として1)情報伝達の方法に関する合意形成、2)状況変化に応じた情報共有化、(4)当事者のチームへの参加促進として1)利用者の参加、(5)役割分担として1)役割分担の明確化、2)責任の共有化、(6)評価として1)チーム機能評価の実施、2)チームカンファレンスの実施、(7)地域連携として1)地域の社会資源の活用、を取り込んだ。
本研究から期待される効果としては、福祉用具と住環境システムの一体的な評価に基づくサービスの提供が可能となり、対象者のクオリティ・オブ・ライフの向上が図られる点、対象者への適切な情報提供により個々人の選択と自己決定が尊重される点、ケアマネジャーのケアプラン作成、サービス評価に資する点、さらには限りある社会資源の有効活用を図る点があげられる。
一方、利用者と社会資源のインターフェースとしての役割を果たす専門職の機能を最大限に高めるために、専門職にとって、一体的な活用評価に関する情報を把握することは極めて有効である。専門職が、福祉用具と住環境システムの一体的な活用に関する知識と技術を獲得し、より有効性かつ効率性の高いケアマネジメントの実現が期待される。
さらに、本研究により開発された評価法は、1)ケアマネジメントに関わる専門職の実践過程における評価指標、2)スーパーバイザーによる専門職の資質向上のための実務教育指標、3)養成課程の教育プログラムの一法、として活用が可能である。その延長として、各種専門職の資質の向上はもとより、国あるいは地方自治体の今後の専門職養成研修の基盤整備への一助となると考えられる。
結論
福祉用具と住環境システムの一体的な活用評価のための項目の妥当性を確認し評価指標と専門性評価シートを開発した。今後の実用化が期待される。

公開日・更新日

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