高齢者血管病に対する遺伝子治療ならびに内皮前駆細胞移植療法の開発-臨床応用を目指した基礎研究-

文献情報

文献番号
200200255A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者血管病に対する遺伝子治療ならびに内皮前駆細胞移植療法の開発-臨床応用を目指した基礎研究-
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
江頭 健輔(九州大学大学院医学系研究科心臓血管病態制御学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 居石克夫(九州大学大学院医学研究院病理病態学)
  • 米満吉和(九州大学大学院医学研究院病理病態学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
11,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
動脈硬化・血栓症に陥った血管の再生修復を目指す新たな治療システムの構築は我が国の医療・医学的対策として推進すべき重要課題である。本研究の目的は、「高齢者血管病」の新たな治療体系を確立し、実際に臨床応用可能な臨床治験プログラム(遺伝子治療、内皮前駆細胞療法など)を構築し社会への貢献を目指すことである。
研究方法
1)"血管内皮細胞特異的に発現する新規遺伝子(日の丸遺伝子)の単離と機能解析"
慢性的一酸化窒素産生阻害によって高血圧、心肥大、動脈硬化が生じる。我々は、その分子機序を解明する方法としてsubtractive hybridization法により新規遺伝子LACS (L-NAME-related actin cytoskeletal protein)を一酸化窒素産生阻害ラットの心臓より単離した。LACSは心臓および骨格筋に特異的に発現し、高血圧心肥大モデルの心臓で広く発現が増加しており、培養心筋細胞においても心肥大誘導後に発現が増加した。これらの成績から、LACSは心筋細胞肥大に関与する新規遺伝子と考えられる。
2)我が国独自の新規ベクターの臨床応用
我々は我国で開発された新しいウイルスベクター(センダイウイルスベクター)の高いポテンシャルを報告して来た。本ベクターは特に下肢虚血に対する血管新生遺伝子治療に極めて有効であり、FGF-2の高い治療効果を証明して来た。これらの知見をもとに、SeV-FGF2を用いた重症虚血肢に対する血管新生遺伝子治療を計画し、九州大学遺伝子治療専門委員会、同倫理委員会の承認を経て厚生労働省に申請した。
3)抗MCP-1遺伝子治療戦略の確立
我々が開発した変異型MCP-1遺伝子を用いた遺伝子導入が抗MCP-1遺伝子治療として有用であることを報告してきた。ステント内再狭窄モデルにおいて、ステント内内膜肥厚が有意に減少することを明らかにした。これらの研究成果から、MCP-1をターゲットとする治療が再狭窄に対する有用な新規治療になる可能性が明かとなったので、「再狭窄に対する遺伝子治療臨床研究」を厚生労働省へ申請した。
4)末梢血内皮前駆細胞移植療法による治療的血管新生
重症狭心症患者の1症例に末梢血内皮前駆(CD34陽性)細胞療法を実施した。末梢血EPCを採取した後、胸部小切開を行い、虚血心筋組織にEPCを注入した。細胞療法28日後に評価を実施した結果、運動耐容能の増加と血管造影での側副血行路の描出の増強が得られた。副作用はなかった。
結果と考察
結論
1)新規遺伝子LACSがアクチン繊維との関連を介して、心筋細胞肥大に関与している可能性が考えられる。
2)一連の研究から、センダイウィルスベクターを用いたFGF-2遺伝子導入が有効かつ安全な治療的血管新生療法になることが示された。
3)再狭窄ならびに動脈硬化の原因にMCP-1が必須の役割を果たすことが明かとなった。さらに、霊長類でMCP-1をターゲットとする治療が再狭窄に対する有用な新規治療になる可能性が初めて示された。
4.本研究により末梢血内皮前駆細胞移植が、安全かつ低侵襲で広く臨床応用可能な治療法になる可能性があることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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