老人性痴呆疾患治療病棟におけるクリニカルパスを利用した痴呆性高齢者治療の検討

文献情報

文献番号
200200238A
報告書区分
総括
研究課題名
老人性痴呆疾患治療病棟におけるクリニカルパスを利用した痴呆性高齢者治療の検討
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
鮫島 健(社団法人日本精神科病院協会)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋正和(戸田病院)
  • 中村英雄(ナカムラ病院)
  • 大塚俊男(東京武蔵野病院)
  • 松原三郎(松原病院)
  • 森村安史(大村病院)
  • 伊藤弘人(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
3,575,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
行動障害や精神症状をともなう痴呆性高齢者の治療は、老人性痴呆疾患専門病棟(老人性痴呆疾患治療病棟と同療養病棟)において行われているが、これらの治療においては、各種治療法(薬物療法、精神療法、生活療法、生活介護)と種々の職種の病棟スタッフなどが、有効に連携してこそ十分な治療効果が期待される。このための手法として「クリニカルパス法」を導入し、実際にその効果を検討することは極めて有意義なことと言える。
研究方法
平成14年度は、日本精神科病院協会会員の精神科病院(3病院)の老人性痴呆疾患治療病棟において、それぞれ独自に痴呆患者用クリニカルパスを開発し、その施行を各病棟で試みた。各クリニカルパスは各病院の病棟スタッフとパス作成コーディネーター等でクリニカルパス作成会議を数回開き、開発を進めた。①平成14年6月からは石川県の精神科病院で、②平成14年11月には兵庫県の精神科病院で、③平成15年1月には岐阜県の精神科病院で、それぞれクリニカルパスを開発し試行した。この間、東京において、数回に渡って研究会議を開催して検討を深めた。また、平成13年度より開発、導入を試みた3病院が継続してクリニカルパスの実施を進め、さらに本研究において一番初めに痴呆クリニカルパスを導入している東京の精神科の1病院の老人性痴呆疾患専門病棟では、病棟スタッフに対する調査と、入院患者の特徴についての調査を行った。
結果と考察
3精神科病院において老人性痴呆疾患専門病棟の痴呆用クリニカルパスが開発され試行された。痴呆用クリニカルパスの内容や形式等は、各老人性痴呆疾患専門病棟の入退院の状況は各地域によって大きく異なるために、それぞれの特徴を生かした独自のものを開発する必要があった。実際にパス法を試行してみると、①いずれの病院においても病棟スタッフ間の連携が深まり、さらに、各種の治療法が総合的に有効に働いて、治療効果をさらに高めた。②O病院では、病棟内で主治医が異なる場合であっても、パス法を施行することで、主治医相互の連携が図られて、治療内容の向上につながった。③M病院では、3ヶ月で自宅への退院が目標となる患者についてパス法を施行したが、当初からの症状のアセスメントと家族との連携が重要であることが示された。④O病院では、精神症状と身体症状について、幅広く詳細にアセスメントすることで、治療内容を正確に評価することが可能となった。これにより、治療内容が著しく向上した。いずれの病院でも、僅かなスタッフであっても、最大限の効果を示すようにクリカルパス法を導入して検討を加える必要がある。
結論
本研究結果は、老人性痴呆疾患専門病棟における痴呆疾患のクリニカルパスの開発とその試行結果を報告する数少ない資料である。行動障害や精神症状により介護が困難となった痴呆性高齢者の入院治療においても、クリニカルパス導入は治療の内容の向上に大きな効果があることが示された。今後はさらに各病棟が継続してクリニカルパスへの改良を進め、相互に交流を深めながら、その効果を広めて行く必要がある。

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