高齢者における健康で働きがいのある就労継続の社会的基盤に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200236A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者における健康で働きがいのある就労継続の社会的基盤に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
柴田 博(桜美林大学)
研究分担者(所属機関)
  • 杉澤秀博(桜美林大学)
  • 樋口美雄(慶応義塾大学)
  • 岡村清子(東京女子大学)
  • 横山博子(つくば国際大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①1998年に設定した全国55~64歳の男女に対する縦断調査に基づき、職業性ストレスの視点からみた高齢者の就労の質の評価とその規定要因を明らかにすること、②良好な就労継続・転職・再就職の社会的・心理的要因を解明すること、③中年・若年の高齢就労者に対する態度が、高齢者の就労環境に大きな影響をもつと予想されるため、中年および若年層を対象にした調査によって高齢就労者に対する意識、態度とその関連要因を解明すること、④シルバー人材センター、行政の職業訓練の利用者を対象に調査し、これらの施策が高齢者の健康で働きがいのある就労持続の面からみてどのような効果があるかを評価する。平成14年度の課題は、③の課題に関連して、大都市部に居住する若年就労者の高齢就労者・高齢者・高齢社会に対する観念や態度を明らかにすることであった。
研究方法
東京都の区市部、千葉県・神奈川県・埼玉県の市部に居住する25~39歳の男性3,000人を対象に、2003年1~2月に郵送配布・訪問回収・自記式法による調査を実施した。回収率は43.0%であった。
結果と考察
高齢就労者・高齢者・高齢社会に対する意識や態度とその関連要因を分析した結果、次のようなことが明らかとなった。1)高齢就労者に対する意識・態度:①高齢就労者に対する意識には「勤勉性」「非効率性」「協調性」の3つの次元があること、②「非効率性」といった否定的な観念や高齢就労者を排除していこうという差別的な態度をもつ人の割合は、これらを否定する態度の人よりもかなり多く存在していること、③高齢就労者を「非効率的」とみなす人で特に高齢就労者に対する差別的な態度が強いこと、④高齢就労者と一緒に仕事することは、高齢就労者に対する差別的な態度を直接的に解消するだけでなく、高齢就労者を「非効率的」とみなす傾向を低めることによって間接的にも差別的態度の改善につながること、⑤中高年齢就労者のデータと若年就労者の高齢就労者に対する態度のデータを用いて、両者の就労先特性を比較した結果、中高年齢者と若年者ともに、大企業においてエイジズムスコアが高い傾向があった他は、2つの年齢層で共通の傾向はほとんど見られず、中高年齢者と若年者の間でエイジズムに対する意識が異なる可能性が高いこと、などが明らかとなった。2)一般高齢者に対する意識・態度:①検証的因子分析によって、Fraboni Scale of Ageism(FSA)の3因子モデル(誹謗、差別、接触の回避)の交差文化的な妥当性が確認されたこと、②高齢者に関する事実を知らない者の方がエイジズムが強いという「知識」仮説が支持されたこと、②生活満足度が低い者や老後不安感が高い者の方がエイジズムが強いという「不満・不安」仮説は、部分的に支持されたこと、などが明らかとなった。3)高齢社会への対応:①介護保険料の支払い、年金保険料の支払いに対する意識については、約半数の人がこれらの保険料の支払いについて反対していたこと、②所得や職業など保険料の支払額を規定する要因よりも、学歴や老後の生活がイメージできないこと、高齢者に対する差別的な態度傾向や同居経験、加齢に関する知識が乏しいといった要因の方が、世代間扶養に対する否定的な意識に結びついていたこと、などが明らかとなった。
結論
若年者の高齢就労者・高齢者・高齢社会に対する意識・態度を検討した結果、高齢者の就労推進を妨げるような意識や態度が若い世代にかなり広範囲にみられること、否定的な意識や態度の改善には、正しい老後への知識の普及、積極的に生活している高齢者と接触をもつことなどが重要であることが
示唆された。

公開日・更新日

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更新日
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