高齢者虐待の発生予防と援助方法に関する国際的研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200235A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者虐待の発生予防と援助方法に関する国際的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
多々良 紀夫(淑徳大学社会学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究パートナー国として選んだ5ヶ国(アメリカ、イギリス、アルゼンチン、オーストラリア及びカナダ)の高齢者虐待早期発見・早期介入システムを研究し、日本に適した仕組みや考え方があれば、それらを様々な形で日本に紹介することである。特に、アメリカが高齢者虐待に関する研究や制度などが最も進んでいるということから、アメリカの研究には力を入れる。また、これら5ヶ国の他に、フィンランドやノルウェーなどの北欧諸国がどのように高齢者虐待に取り組んでいるのか調査する。
研究方法
本研究の目的を考えると、いかに正確かつ十分な海外の資料を得るかということが本研究の成功の鍵である。そこで、本研究では、高齢者虐待に関して最も知識あると思われる専門家を各研究パートナー国から選び、それらの専門家から情報を得る方法をとっている。本研究の研究者は、3人(ダイチマン、ベネット及びクール)が医師で、2人(ブラウネルとポドニークス)は博士号を持つ大学教授である。また、これら5人は国際高齢者虐待予防機構(INPEA)の役員も務める世界的に認められた高齢者虐待の専門家である。ちなみに、本研究の主任研究者多々良は、米国高齢者虐待問題研究所(NCEA)の所長を10年間務めたことがあり、INPEAの理事も務める高齢者虐待の研究者である。本研究は、これらの研究協力者やその他の研究協力者から直接情報を得る他に、文献や資料からも情報を収集している。加えて、本研究では調査票を用いての調査も行っている。「高齢期における心配事や高齢者権利擁護に関する比較調査」においては、フィンランド、ノルウェー、アメリカ及び日本の4ヶ国で合計400人から郵送調査法により情報を集めた。このように、本研究では様々な方法を用いて研究に必要な情報を収集しているのである。
結果と考察
様々な方法により収集された情報やデータは、集計・分析などを経て、いくつかの成果物となったのであった。これらのプロセスは時間のかかるもので、日本と海外で数多くの研究補助者が動員された。本研究の成果物は、日本及び複数の外国の研究者や実践者の高齢者虐待の知識や介入スキルの向上のために役に立つことであろう。平成14年度においては、以下の成果をあげた。1.『高齢者虐待早期発見・早期介入ガイド』第3版。2.『アメリカ、オーストラリア、カナダ、ノルウェー及びラテンアメリカ諸国における高齢者虐待早期発見・早期介入システム』。3.『日本、北アメリカ及び英国における高齢者虐待文献資料』。4.Elder Abuse: The Early Detection and Early Intervention Systems in Australia, Canada, England, Norway and The United States of America。最後に、5.『高齢期の心配事、政府の機能及び高齢者の権利擁護に関する世代間の認識の違い-4ヶ国比較調査』である。これらの成果は、本研究に関わる研究者らの努力の結果を象徴している。それぞれの成果の内容を簡単に説明すると、まずガイドは高齢者専門職が虐待のサインをもとに高齢者虐待を発見し、適切な介入ができるために書かれているが、高齢者自身や家族が高齢者虐待に関する知識を向上させるためにも大いに役立つと考えられる書物である。ガイドは主に日本国内で配布されているが、米国高齢者虐待問題研究所(NCEA)を通じて、アメリカの日本人コミュニティへも配布された。次に、外国の高齢者虐待対応システムに関する書物であるが、これは本研究海外研究協力者が執筆した論文を翻訳して書物にしたものである。このような書物はこれまでに日本で発行されたことないことから、日本の研究者にとって貴重な資料になることは間違いないだろう。続いて、文献資料集であるが、これはアメリカ、カナダ及びイギリスで
本研究の研究協力者のコネクションを通して配布されることになるであろう。日本の研究者も含めて、これらの国の研究らが便利に使う資料になるであろう。次は、本研究のパートナー国の研究協力者らが執筆した英文の資料集である。アメリカの高齢者虐待問題研究所(NCEA)で登録するための交渉を進めているが、もしこれが実現すれば同研究所の資料センターを通して全アメリカ及びカナダの研究者がアクセスできる資料になるであろう。最後の報告書は日本語版であるが、4ヶ国の研究協力者は自国語で報告書を執筆する計画であるので、将来は北アメリカ、フィンランド及びノルウェーの研究者の目にも触れることになるであろう。
結論
本研究では。研究パートナー国5ヶ国の高齢者虐待対応システムを研究して、そこから日本に適したシステムや考え方を日本の研究者や実践者に様々な形で紹介することを目的としている。これまでにいくつかの成果物を完成させ、日本の高齢者虐待を研究する者や高齢者にサービスを提供する専門職に利用された。一方、いくつかの本研究の成果物は、外国の研究者等にも役に立つと思われるのである。

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研究報告書(紙媒体)

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