老化細胞で見られるストレス反応に基づいた細胞老化のテーラーメード的診断・治療技術の開発

文献情報

文献番号
200200229A
報告書区分
総括
研究課題名
老化細胞で見られるストレス反応に基づいた細胞老化のテーラーメード的診断・治療技術の開発
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
石川 冬木(東京工業大学大学院生命理工学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
種々の刺激による細胞老化誘導の分子機構を明らかにし、個人別、臓器別に再生組織の老化程度を診断し、細胞老化を治療する方策を築く。
研究方法
正常ヒト線維芽細胞として、WI38および市販されている新鮮ヒト正常線維芽細胞を用いた。通常の方法により継代を行い、集団細胞数が2倍に増えるのに要する時間を集団倍加時間とし、集団倍化数をPDL (population doubling level)で表した。p38を活性化し細胞老化を誘導する系については、前年度の報告書に記載したとおりの方法を用いた。パピローマウイルスE6およびE7蛋白質を発現するベクターは、京大ウイルス研酒井博幸博士より供与を受けた。p38活性化後の遺伝子発現プロファイルの解析は、東大医科研中村祐輔教授との共同研究により行った。
結果と考察
ストレス反応性MAPK p38は、種々の細胞種における細胞老化発現のための共通経路である。しかし、その下流には種々の細胞老化表現型を誘導するために少なくとも2種類以上の経路が存在しており、その意味で、p38は細胞老化誘導経路のボトルネックに相当するユニークな立場を占める。
この知見を臨床的に応用するにあたって以下の二つの可能性が存在する。
第一に、p38が様々なストレス誘導性細胞老化の共通経路に相当することから、活性化p38を同定することによって、様々な原因によって細胞老化を起こしつつある細胞を全て同定できる可能性である。細胞老化は、ストレスによって誘導されることが知られているので、個体においては、解剖学的位置、生理学的条件が異なるために、同一組織を構成する細胞群のあいだでも部位によって受けるストレス量が異なり、従って細胞老化の起こりやすさも異なるであろうと予想される。また、異なる個人においては細胞老化が起こりやすい臓器・組織が異なるであろう。細胞老化部位を個人別に正確に決定することはテーラーメード診断の第一歩である。現在、作成を進めている活性化p38に対する新規モノクローナル抗体が実用化されれば、その臨床的価値は大きいと期待される。
第二に、治療面から考えると、p38のノックアウトマウスは致死であることが知られているので、p38を分子標的とした抗細胞老化治療は考えにくい。しかし、本年度の本研究により、p38の下流には異なる経路が存在することが明らかとなったので、その中の特定の経路に標的を絞ることによって細胞老化のある特定の表現型のみを回復させるような治療薬の開発が可能であると期待される。その意味で、現在解析を進めているマイクロアレイによるp38誘導遺伝子の同定が期待される。
結論
今年度の本研究により、p38誘導性細胞老化経路を分子標的とした臨床的応用を開拓する端緒が得られた。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-