寒冷・豪雪地域におけるデイサービスの効果に関する研究

文献情報

文献番号
200200202A
報告書区分
総括
研究課題名
寒冷・豪雪地域におけるデイサービスの効果に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
西脇 友子(新潟大学医学部保健学科看護学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 中村和利(新潟大学)
  • 上野公子(新潟大学)
  • 藤野邦夫(新潟大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、寒冷・豪雪地域の新潟県大和町における要介護在宅高齢者の通所介護の効果性を検証する研究のベースライン調査として、冬期間の要介護在宅高齢者の健康特性を明らかにすることを目的とする。
研究方法
(1)調査対象者 平成14年10月時点で大和町在住の介護保険認定を受けた在宅高齢者で、調査依頼に同意が得られた205名である。(2)調査場所・調査期間 通所介護利用者158名は、通所介護利用施設で調査を行い、通所介護非利用者47名は、訪問により調査を行った。調査は、平成15年2月と3月に行われた。(3)調査項目と調査方法 調査項目は、基本属性・身体機能・精神機能・栄養状態とした。年齢・性別・通所介護利用期間及び頻度・家族構成・既往歴・現病歴などの基本属性、Barthel index、見る、聴く、噛むことの困難度、外出頻度、転倒の有無、MMSE 、GDS-15、日本版EuroQolは、質問紙を用い面接調査で把握した。その他身体機能は、左右の握力を測定すると共に四肢筋量を生体電気インピーダンス方式の筋量測定装置(MUSCLE α)で測定した。栄養状態は血液検査(アルブミンとヘモグロビン)と身長・体重を用いた。
結果と考察
(1)対象者の基本属性 205名のうち85歳以上が107名(52.2%)で平均年齢は83.6歳(±8)であった。男性は62名(30.2%)、女性は143名(69.8%)でそれぞれの平均年齢は81.2歳(±9)、84.7歳(±7.3)であった。通所介護利用者158名の平均年齢は84.3(±8.1)、非利用者47名では81.5歳(±7.5)であった。 家族構成は、約8割が多世代家族で、夫婦二人と独居はそれぞれ約5%であった。日中一緒一緒にいる人の有無では「いる」が約80%、主介護者の健康は「健康である」が90%弱であった。通所介護利用者158名の通所介護利用期間は、3年以上が41%と最も多く、ついで1年未満が26.3%であった。平均利用回数は男女とも週2.7回で、週3回と週2回が多くそれぞれ35.4%と31.0%であった。(2) 身体機能と栄養状態の特徴について ADLの項目で「0」(全面的・部分的な助けが必要又はできない)と答えた割合は、入浴(78.1%)が最も高く、冬期間の外出頻度は、72.7%が「ほとんど外出しない」であり、入浴サービスを含む通所介護は閉じこもり防止の観点からも寒冷・豪雪地域の在宅要介護高齢者と介護者にとって必要なサービスであることが分かる。握力は、日常生活での移動能力や加齢に伴う筋力の低下を反映すると言われている。今回の握力(右)の平均値は、男性17.71(±6.79)、女性12.40(±4.64)で既存の一般在宅高齢者の健康調査値より低く、ADL得点が高いと、握力も高い傾向があり、筋力を維持し低下を遅らせるようなサービスが求められる。PEM(蛋白・エネルギー低栄養常態)の評価・判定の基本的指標である体重の結果をみてみると、平均体重は男性51.43kg、女性42.36kgで他の研究より若干低値であった。しかし、PEMリスク者(血清アルブミン値3.5g/dl未満)は杉山らの在宅ケアの対象者を対象とした結果と比較して半分以下の12.7%であり、大和町の要介護在宅高齢者の栄養状態は比較的保持されていると思われる。(2)精神機能の特徴について MMSEは、拒否や継続困難、難聴などのため49名が実施不可能であった。実施できた156名(実施率76.1%)の平均は22.33(±5.31)、23点以下は、68名(43.6)%であった。GDS-15は176名(実施率85.9%)が実施可能であった。うつ傾向とうつ状態の両方を合わせた割合は男性50%、女性41%、通所利用者45%、非利用者40%であった。QOL調査の実施可能者は5項目法(効用値)で182名、視覚評価法(VAS値)で154名であった。効用値の結果は、平均値0.497(±0.221)、分布の割合では0.5~0.599が最も多く42.
3%、次いで0.1~0.299の17%で他の在宅高齢者を対象とした調査より低値で、VAS値も同様の傾向であった。しかし、通所介護利用者と非利用者別の効用値とVAS値は、それぞれ0.447(±0.214)、0.649(±0.167)、65.1(±16.93)、64.2(±19.62)でADL得点が低く年齢が高い通所利用者において、効用値は低いが自覚的健康度を示すVAS値が若干高い傾向であった。又、通所介護利用者より非利用者で「1年前より健康状態が悪化」の割合が高く抑うつ傾向を示すGDS値も高い傾向であり、通所介護が、高齢で障害があっても健康だと感じることと抑うつ傾向に何らかの影響を及ぼしている可能性が伺えた。
結論
①ADL項目では入浴に介護が必要が約78%で最も高く、冬期間の外出は72.7%がほとんど外出しておらず、寒冷・豪雪地域の通所介護の必要性がわかった。②既存の一般地域高齢者を対象とした調査と比較し身体機能は脆弱傾向であったが、血清アルブミン値で3.5g/dl以下の割合は、他の研究結果の半分以下だった。大和町の要介護高齢者の栄養状態は比較的保持されていると思われる。③今回調査した要介護在宅高齢者の効用値、VAS値、GDS-15で示される精神状態は、既存の一般地域高齢者を対象とした調査と比較し悪かった。④1年前と比較した健康状態の変化では、より悪化したが通所介護利用者より非利用者で高い傾向であり、VAS値とGDS-15も同じような傾向を示し、通所介護と自覚的健康観や抑うつが関係している可能性が伺えた。

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