文献情報
文献番号
200200200A
報告書区分
総括
研究課題名
舌機能評価を応用した摂食嚥下リハビリテーションの確立
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
赤川 安正(広島大学歯学科)
研究分担者(所属機関)
- 津賀一弘(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 顎口腔頚部医科学講座 先端歯科補綴学研究室)
- 吉田光由(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 顎口腔頚部医科学講座 先端歯科補綴学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
舌は摂食・嚥下に深く関与し,食塊の形成と咽頭への送り込みには十分な舌圧が必要であるといわれている。また,高齢者においては,舌で食塊を口腔から咽頭へ送り込む能力の低下が誤嚥性肺炎の要因であるとも指摘され,舌圧の測定・評価は摂食・嚥下障害の臨床上大きな意義を有すると考えられる。舌圧を測定する手法には,各種の圧力変換器を用いるものが多いが,いずれも被験者毎に口蓋床や複製義歯など特殊な装置が必要であり,高額で精密機器のため取り扱いも難しく多数の被験者を対象とする測定には至っていない。その結果,舌圧を研究対象として測定できているものの,臨床での診断や治療に際しての舌圧の評価には結びついていない。本研究では,新たに簡便な舌圧測定装置を開発,これを用いて多数の被験者の舌圧を測定・評価して臨床応用の基礎となる舌圧の知見を集積することを目指した。
分担1目的:ディスポーザブルの口腔内プローブとこれを用いた簡便な舌圧測定装置を開発することを目的とした。
分担1方法:直径18 mmのラテックス製風船,1 mlのディスポーザブルシリンジの外筒と長さ8 mm,外径6mmのステンレスパイプから成るディスポーザブルの口腔内プローブ,圧力導入型ひずみゲージ式圧力変換器(9E02-P-13-2,NEC 三栄,東京)およびデジタルオシロレコーダー(Omniace Ⅱ RA1200,NEC 三栄,東京)から構成される舌圧測定装置を作製した。自覚的に摂食・嚥下障害を認めない被験者106名(20-39歳)が風船を自身の舌と口蓋との間に挿入,これを随意的な最大の舌圧で7秒間押しつぶし,この時に発生する舌圧(最大舌圧)と,風船を含んだままで水5 mlを嚥下する際の舌圧(嚥下舌圧)を各々3回ずつ測定した。
分担1結果:最大舌圧および嚥下舌圧はくり返し測定を行っても,ほぼ一定の値を示した。嚥下舌圧の波形を観察すると,頂点が1つの単峰型,頂点が2つの二峰型,頂点が3つ以上のその他の3タイプに分類でき,同一被験者内での嚥下舌圧波形は2回以上同一タイプの波形を示したものが93 %と良好な再現性を示した。
分担2目的:では開発した舌圧測定装置により成人における年齢と舌圧の関係を検討することを目的とした。
分担2方法:被験者は自覚的に摂食・嚥下障害を認めない219名とし,実験1と同様に舌圧を測定した。
分担2結果:全被験者(20-95歳)を若年群(20-39歳),中年群(40-65歳),高年群(66歳以上)に分け,各群の平均最大舌圧をみたところ,若年群:27.7±5.5 kPa,中年群:27.3±7.0 kPa,高年群:23.2±7.2 kPaであり,加齢とともに減少する傾向がみられた。また,被験者のうち20歯以上の残存歯を有し可撤性床義歯を使用していない161名について同様に群分けして分析したところ,最大舌圧は全被験者の場合と同様,加齢とともに減少する傾向がみられた。嚥下舌圧はそれぞれ,若年群:12.9±7.8 kPa,中年群:10.8±7.3 kPa,高年群:10.7±6.9 kPaであり,加齢にともなう減少傾向はみられなかった。全被験者の最大舌圧と嚥下舌圧の間には有意な正の相関が認められ(rs = 0.371,P < 0.0001),20歯以上残存者についても同様であった(rs = 0.319,P < 0.0001)。
分担3目的:歯の欠損と義歯の有無が舌圧に及ぼす影響を検討することを目的とした。
分担3方法:残存歯20歯以上で可撤性床義歯を使用していない31名(66-87歳)と少なくとも上顎に総義歯を使用中の30名(62-95歳)について,義歯の装着時ならびに非装着時について実験1と同様に舌圧を測定した。
分担3結果:上顎総義歯を使用している者は義歯装着時において20歯以上が残存する者が発揮する最大舌圧と同等の値を示し,一方,義歯非装着時においては20歯以上の残存者と比較して高い最大舌圧を発揮した。また,嚥下舌圧については上顎総義歯を使用している者は義歯装着時と非装着時のいずれにおいても,20歯以上が残存する者と同等の舌圧を発揮していた。
分担1目的:ディスポーザブルの口腔内プローブとこれを用いた簡便な舌圧測定装置を開発することを目的とした。
分担1方法:直径18 mmのラテックス製風船,1 mlのディスポーザブルシリンジの外筒と長さ8 mm,外径6mmのステンレスパイプから成るディスポーザブルの口腔内プローブ,圧力導入型ひずみゲージ式圧力変換器(9E02-P-13-2,NEC 三栄,東京)およびデジタルオシロレコーダー(Omniace Ⅱ RA1200,NEC 三栄,東京)から構成される舌圧測定装置を作製した。自覚的に摂食・嚥下障害を認めない被験者106名(20-39歳)が風船を自身の舌と口蓋との間に挿入,これを随意的な最大の舌圧で7秒間押しつぶし,この時に発生する舌圧(最大舌圧)と,風船を含んだままで水5 mlを嚥下する際の舌圧(嚥下舌圧)を各々3回ずつ測定した。
分担1結果:最大舌圧および嚥下舌圧はくり返し測定を行っても,ほぼ一定の値を示した。嚥下舌圧の波形を観察すると,頂点が1つの単峰型,頂点が2つの二峰型,頂点が3つ以上のその他の3タイプに分類でき,同一被験者内での嚥下舌圧波形は2回以上同一タイプの波形を示したものが93 %と良好な再現性を示した。
分担2目的:では開発した舌圧測定装置により成人における年齢と舌圧の関係を検討することを目的とした。
分担2方法:被験者は自覚的に摂食・嚥下障害を認めない219名とし,実験1と同様に舌圧を測定した。
分担2結果:全被験者(20-95歳)を若年群(20-39歳),中年群(40-65歳),高年群(66歳以上)に分け,各群の平均最大舌圧をみたところ,若年群:27.7±5.5 kPa,中年群:27.3±7.0 kPa,高年群:23.2±7.2 kPaであり,加齢とともに減少する傾向がみられた。また,被験者のうち20歯以上の残存歯を有し可撤性床義歯を使用していない161名について同様に群分けして分析したところ,最大舌圧は全被験者の場合と同様,加齢とともに減少する傾向がみられた。嚥下舌圧はそれぞれ,若年群:12.9±7.8 kPa,中年群:10.8±7.3 kPa,高年群:10.7±6.9 kPaであり,加齢にともなう減少傾向はみられなかった。全被験者の最大舌圧と嚥下舌圧の間には有意な正の相関が認められ(rs = 0.371,P < 0.0001),20歯以上残存者についても同様であった(rs = 0.319,P < 0.0001)。
分担3目的:歯の欠損と義歯の有無が舌圧に及ぼす影響を検討することを目的とした。
分担3方法:残存歯20歯以上で可撤性床義歯を使用していない31名(66-87歳)と少なくとも上顎に総義歯を使用中の30名(62-95歳)について,義歯の装着時ならびに非装着時について実験1と同様に舌圧を測定した。
分担3結果:上顎総義歯を使用している者は義歯装着時において20歯以上が残存する者が発揮する最大舌圧と同等の値を示し,一方,義歯非装着時においては20歯以上の残存者と比較して高い最大舌圧を発揮した。また,嚥下舌圧については上顎総義歯を使用している者は義歯装着時と非装着時のいずれにおいても,20歯以上が残存する者と同等の舌圧を発揮していた。
研究方法
結果と考察
結論
以上の結果より,簡便性を有し日常的に応用が可能な舌圧測定装置を開発することができ,さらにこれを用いた舌圧測定により高齢者の舌圧に関する知見を集積することで,加齢や歯の欠損に伴う舌圧の変化の一端を明らかにすることができた。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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