高齢者の施設・在宅における終末像の実証的検証および終末期ケアにおける高齢患者の自己決定のための情報開示のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200200198A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の施設・在宅における終末像の実証的検証および終末期ケアにおける高齢患者の自己決定のための情報開示のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
葛谷 雅文(名古屋大学大学院医学研究科健康社会医学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山孝博(医療法人財団石心会川崎幸クリニック)
  • 伴信太郎(名古屋大学医学部附属病院総合診療部)
  • 服部明徳(東京都老人医療センター)
  • 水川真二郎(杏林大学医学部高齢医学教室)
  • 内藤通孝(椙山女学園大学大学院生活科学研究科栄養保健科学教室)
  • 植村和正(名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座)
  • 益田雄一郎(名古屋大学大学院医学系研究科健康社会医学専攻発育・加齢医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の終末期ケアの特徴として、「非癌患者の終末期ケア」の問題がある。一例として、今後ますます増加が予想される「痴呆患者の終末期ケア」の問題があげられる。さらに「介護・福祉施設における終末期ケア」、「在宅患者に関する終末期ケア」の問題も、高齢者に特有な終末期ケアに関する課題であろう。また癌患者であっても、その終末像は若年者と大きく異なることが少なくない。加えて高齢者の終末期ケアは比較的長期にわたる介護が必要であったり、老化に付随する多臓器障害を抱えているといった高齢者に特有な事象が存在する。したがって社会的、技術的に高齢者に特有な、共通な終末期医療・ケアがあるはずである。一方では、終末像はきわめて「個別性」の高いものであり、終末期ケアの標準化が非常に困難であった。かように複雑な高齢患者の終末期ケアにおいて、患者の自己決定が実現されるためには、まず終末期ケアの内容が患者に理解しやすい形で「情報開示」される必要がある。そして患者の十分な理解のもとで得られた「インフォームドコンセント」に基づいて、「終末期ケアに関する患者の自己決定」を促していかなければならない。我々の研究班は、平成14,15年度に「情報開示」に必要な。従来複雑とされた終末像のデータベースの構築を実現する。そしてその成果をもとに平成16年度以降に、終末期ケアに関する「情報開示・インフォームドコンセント」の方法論の飛躍的な発展を目指す。
研究方法
(1)九州地区の国立病院医療従事者の高齢者終末期医療に関する意識調査をアンケートで行った。(2)東京都多摩地区の医師、看護師、介護職員、高齢患者、患者家族に対して「高齢者の終末期医療」に関するアンケート調査を行った。(3)岐阜県の公立病院の在宅医療科で訪問した末期癌患者を看取った主たる介護者を対象に在宅療養に関する意識調査を行った。(4)事前調査として、北海道地区、中部地区、沖縄地区13施設において、聞き取り調査を行い、それぞれの地区における高齢者の在宅終末期医療の現状・問題点を明らかにする。本調査においては前向きに死亡前48時間以内に呈した症状・徴候、実施された医療行為を記録していく。(5)愛知県の療養型病床群において、死亡した患者に対して、患者の属性、痴呆の状況、死亡前6ヶ月間に行われた治療を調査する。
結果と考察
(1)死亡場所、経管栄養のあり方、痴呆終末期患者へ治療、癌患者・非癌患者への延命治療、現状の終末期医療のあり方に関して、医師、看護師、検査技師の間に意識の相違が見られた。いずれの項目においても職種間の意見の相違がまちまちであり、一定の傾向は見られなかった。医師の意識が高い場合、看護師の意識が高い場合、検査技師の意識が医師の一致する場合と看護師に一致する場合などがあり、今後の検討が必要と思われた。(2)医療職および介護職と患者および患者家族の間で最も差が見られたのは、「患者に対する信条・習慣への配慮」に対しての意識と、「大学病院の果たすべき終末期ケアに対する要素」であり、前者は患者および患者家族があまり医療職・介護職に比しあまり重要視しておらず、後者は患者および患者家族が大学病
院での看取りを重要と考えていることがわかった。高齢者医療を行う者は、患者や家族の立場や要求と専門知識に立脚した医療行為に偏ることなくバランスのいい医療行為が求められていると考えられた。(3)在宅療養の希望が強く、それに応えるために医療者の緩和ケアに対する知識・技術とともに意識の向上が望まれる。週に数時間程度の訪問看護では労力に関する協力に限界があり、精神的な支えを十分に行う必要があると考えられた。(4)三地区において在宅における看取りの割合に大きな相違が見られた。北海道地区は少なく、長野県を含む中部地区が在宅の看取りの割合が多かった。異なった地域社会のあり方や文化背景の中で、在宅終末期医療の実像を正確に捉える必要があると考えられた。(5)痴呆患者群と非痴呆患者群と比較したところ、痴呆患者群において昇圧剤の使用、輸血の実施、栄養チューブの挿入の頻度が高かった。痴呆患者の終末期においては、終末期に至るまでの早い段階で患者・患者家族の希望について議論する必要があると考えられた。
結論
(1)医療従事者の中でも現状の終末期医療を問題と考え、無益な医療をしていると感じている場合があり、今後の議論が必要である。(2)患者や家族と医師の間、あるいは同じ高齢者医療に携わる医療従事者の間においても、その職種や立場の違いによって高齢者の終末期の捉え方に大きな差が見られることが明らかになった。(3)今後、入院期間の短縮が進められる中で、条件の悪い例が増加する可能性が予測される。患者の病状のみでなく、家族の身体・精神面でのアセスメントも含めた包括的な対応が求められている。(4)現在実施中の本調査の結果が出ておらず結論を述べることができないが、予備調査の結果からは、異なった地域社会のあり方や文化背景が在宅終末期医療の実像に何らかの影響があると考えられた。(5)痴呆患者に対する終末期医療および栄養投与法は、得られる利益および苦痛、患者およびその家族の希望を考慮して行われるべきである。今回の結果では痴呆の状態であることが終末期医療に影響を与えているとはいえない。

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