文献情報
文献番号
200200191A
報告書区分
総括
研究課題名
骨粗鬆症におけるテーラーメード医療の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
折茂 肇(東京都老人医療センター)
研究分担者(所属機関)
- 白木正孝(成人病診療研究所)
- 上西一弘(女子栄養大学)
- 伊東昌子(長崎大学医学部)
- 細井孝之(東京都老人医療センター)
- 浦野友彦(東京大学大学院加齢医学)
- 太田博明(東京女子医科大学)
- 池田恭治(国立長寿医療研究センター)
- 大橋靖雄(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
骨粗鬆症は骨量の病的減少が骨微細構造を破綻させ、易骨折性をもたらす疾患である。骨粗鬆症における治療効果には個人レベルでのばらつきが大きく、より効率のよい治療を進めるためにはテーラーメード医療の立場から、これまでの治療法を再評価し、再構築することが必要である。本研究では骨粗鬆症の予防と治療について個人レベルでの最適化をおこない、より効率のよい新しい診療体系を確立することを目的とする。
研究方法
結果と考察
①骨粗鬆症における骨密度変化の個人差に関する研究:無治療で3年間腰椎骨密度の推移を観察した閉経後女性例の0-1年度の変化率(%1Y)と1-2年度の変化率(%2Y)ならびに2-3年度の変化率 (%3Y)および%2Yはいずれの変化率も極めてよい相関を示した。また%1Yと%2Yの相関は活性型VD3(VD), ビタミンK2(VK)、EHDP、結合型女性ホルモン(CEE)、第三世代ビスフォスフォネート(BP))による治療のいずれにおいても腰椎骨密度変化率は年度間でよい相関を示した。各骨粗鬆症治療薬の骨密度に対する効果は薬剤により大きく異なる。ゆえに相互の有効性を比較できる方法の他にある薬剤投与例のなかで相対的にみて有効であるか否かを検討するための判定基準も必要である。②閉経前における腰椎骨密度減少に関する検討:全例における%L2-4BMD は -1.5±8.5 % と有意な変動はなかった。しかし、卵巣機能の低下を示唆する月経周期が12ヵ月間に 2 周期以上不順な症例に限定すると有意な骨量減少を認めた。一方FSH値が高い卵巣機能不全を呈している例では骨量の低下が著しく、骨代謝が亢進している例では骨量の低下が著しいことが判明した。これらの結果から閉経前婦人では一過性であれ E2 値が低下し、FSH 値が上昇する例では、12ヵ月間で明らかな骨量の低下が認められることが判明した。③"安定同位体44Ca経口負荷試験によるカルシウム吸収率の推定"の臨床応用への検討:尿中総カルシウム排泄量、リン排泄量および腰椎骨密度との間に正の相関がみられた。尿中44Ca排泄と骨代謝マーカーの間には明確な関係はみられなかったが、尿中44Ca排泄量と腰椎骨密度の間には正の相関がみられた。2時間ごとの尿中44Ca排泄量と24時間尿中44Ca排泄量の相関をみたが、特に相関はみられなかった。④遺伝子解析からのアプローチ:骨粗鬆症に対する治療効果をDXA 法による腰椎骨密度の変化で見た場合、その個人差の分布が各薬剤ごとに得られた。responder と non-responderの定義についてはa.BMDの変化について4分割位をとり、1位をresponder、4位をnon-responderとする、b.BMDの変化が正の者をresponder、負のものをnon-responderとする、c.BMDが3%以上増加したものをresponder、その他をnon-responderとする、などいくつかの考えかたがあり、この点をどうとりあつかうかが、今後の課題である。⑤in vivo 骨梁構造評価法の検討: 骨折症例群と対照群の2群間には、DXA腰椎骨密度には有意差は認められなかった。QCT腰椎骨密度には軽度の有意差(p<0.05) を認めた。骨梁構造パラメターのうち、いくつかのものはDXA骨密度よりも骨折例と非骨折例を分離する能力がすぐれていた。⑥骨芽細胞における新たな骨形成制御因子の同定:エストロゲンによる骨芽細胞増殖にはサイクD2,D3/CDK4,CDK6を介した経路が機能していることが示された。LRP5遺伝子のイントロンに存在する遺伝子多型5種類中、一種類の多型では、全身骨ならびに腰椎骨密度(Z score)において有意差を呈していた。特に全身骨密度(Z score)においては2群間で p=0.0051と強い相関係数を示した。⑥活性型ビタミンD治療に対する反応性を規定する遺伝子群の探索:VDRがないことで発現レベルが1/10以下に低下する、すなわちVDRの存在によって発現が10倍以上上昇する遺伝子群を14同定した。OPG KOマウスにおいて、1a,25(OH)2D3は用量依存性に骨吸収を抑制し骨密度を上昇させることが明らかになった。骨髄からM-CSF依存的に増殖する破骨細胞の前駆細胞を単離し、M-CSFとRANKL依存的に起こる破骨細胞形成に対する作用を調べたところ、1a,25(OH)2D3はこれを用量依存的にかつ著明に抑制するが、この作用はVDR KOマウス由来の細胞ではまったく認められず、VDR依存的な薬理効果であることが明らかになった。さらに、1a,25(OH)2D3によってタンパク質レベルあるいは活性が変化するのは、c-Fosタンパク質のみであり、c-Fosタンパク質の重要性が確認された。⑦統計手法の基礎的検討:イベントの発生が時間的に規則正しく確認されているデータでは、必ずしも区間打ち切りを考慮しない手法でも妥当な推定値が得られることが示唆された。骨折についても大規模デー
タにより妥当なモデルの検討を行うことが必要である。再発については、GEEを用いた区分ポアソン回帰では薬剤効果を過小評価する傾向にあったが、バイアスやMSEは総合的に比較的小さい結果となっており、他のモデルと比べて相対的に性能が良いと判断できる。現在のわが国には方法論の検討を行えるたけの大規模骨折データが存在しない。複数試験のメタアナリシスを行い、より詳細な方法論の検討と実際の骨量のリスク因子としての評価を行うことが今後の課題である。
タにより妥当なモデルの検討を行うことが必要である。再発については、GEEを用いた区分ポアソン回帰では薬剤効果を過小評価する傾向にあったが、バイアスやMSEは総合的に比較的小さい結果となっており、他のモデルと比べて相対的に性能が良いと判断できる。現在のわが国には方法論の検討を行えるたけの大規模骨折データが存在しない。複数試験のメタアナリシスを行い、より詳細な方法論の検討と実際の骨量のリスク因子としての評価を行うことが今後の課題である。
結論
公開日・更新日
公開日
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更新日
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