老化に伴うカルパイン活性制御不全の機構解明

文献情報

文献番号
200200188A
報告書区分
総括
研究課題名
老化に伴うカルパイン活性制御不全の機構解明
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 玉夫(東京都老人総合研究所糖鎖生物学部門)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
8,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Klotho遺伝子変異マウスは寿命が短く、ヒトの老化症状に類似した多彩な症状を示すことから早期老化モデルマウスとして位置づけられている。このことから、klotho遺伝子の機能を解析することにより老化及び老化に伴う病態の分子機構を理解するための重要な知見が得られることが期待される。そこで、klotho遺伝子の変異による、各組織の分子レベルでの変化について解析し、老化との関連について検討した。
研究方法
Klotho変異マウス(野生型、ヘテロ接合変異型、ホモ接合変異型)を用いて、各臓器の膜画分蛋白質をSDS-PAGEで分離し、CBB染色を行った。野生型とホモ接合変異型で発現量が異なるバンドについて、アミノ酸シークエンスおよびマススペクトルにより蛋白質の同定を試みた。さらに、同定した蛋白質と関連する蛋白質の発現をウェスタンブロットで解析した。さらに自然老化マウスを用いて老化との関連を検討した。
(倫理面への配慮)
実験動物の使用に関しては、動物愛護に十分配慮するとともに所内実験動物委員会に実験計画書を申請し承認を受ける。
結果と考察
膜画分蛋白質のSDS-PAGEの結果、ホモ変異型の腎臓で著しく減少しているバンドが観察された。そのバンドについてアミノ酸部分配列を決定した結果、αII-spectrin(αSpII)であることが明らかとなった。αSpIIに対する特異抗体を用いて各臓器をウェスタンブロットで調べたところ、αSpIIの減少は肺と腎臓で著しく、他の臓器ではほとんど観察されなかった。また、ホモ変異型の肺と腎臓で約150kDa付近に抗αSpII抗体に反応する新たなバンドが検出された。αSpIIはcalpainによって分解され150kDaの分解物を生じることが知られている。そこで、ホモ変異型におけるαSpIIの分解にcalpainが関与しているか検討した。その結果、ホモ変異型の肺と腎臓ではμ-calpainが著しく活性化し、μ-calpainの内在性阻害物質であるcalpastatinが消失していることが明らかとなった。さらにヘテロ接合型を用いた解析から、μ-calpainの活性化の割合は klotho蛋白質の発現量の減少に伴って上昇することが分かった。また、自然老化マウスを用いて同様の解析を行ったところ、klotho蛋白質は老化によって減少し、それに伴ってμ-calpainが活性化することが明らかになった。以上の結果から、klotho蛋白質の欠失や減少により、臓器特異的に calpain-calpastatinを介した蛋白質分解系が活性化し、αSpIIの分解が促進されることが明らかとなった。このとき腎臓のHE染色像では組織の傷害が見られなかったことから、一連の分解反応がklothoマウスにおける肺気腫や腎障害の原因となることが示唆された。また、klotho蛋白質の減少を起因とする一連の蛋白質分解反応が自然老化における腎障害等にも関与する可能性が示唆された。
結論
klotho蛋白質はcalpainの活性制御に関わっており、老化過程でklotho蛋白質が減少することにより、calpainの活性化を制御できなくなることが、腎障害等の老化関連疾患の要因となっていることが示唆された。

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