αトコフェロール転送蛋白遺伝子変異による酸化ストレス病態の解明

文献情報

文献番号
200200185A
報告書区分
総括
研究課題名
αトコフェロール転送蛋白遺伝子変異による酸化ストレス病態の解明
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
水澤 英洋(東京医科歯科大学(大学院脳神経機能病態学))
研究分担者(所属機関)
  • 横田隆徳(東京医科歯科大学)
  • 新井洋由(東京大学)
  • 内原俊記(東京都神経総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
αTTPノックアウトマウスにおける酸化ストレス病態を解明し、各種神経変性疾患の病態解明のためそれらのモデルマウスとの掛け合わせを行い行動から分子病態までを解析する。酸化ストレスが老化や発癌等に果たす役割を明らかにするために多数のαTTPノックアウトマウスを作出し長期飼育をして寿命などの要素についても解析する。ビタミン E の抗酸化作用を含む機能全体を明らかにするためにα-TTP ノックアウトマウスを用いて、ビタミン E 欠乏時および過剰投与時に変動する遺伝子群を明らかにする。
研究方法
野生型とαTTPノックアウトマウスでHNE修飾の程度に差があるタンパクを同定するとともに病理変化の解析を更に進めた。αTTPノックアウトマウス、Sweden型変異APPトランスジェニックマウスとG93A変異SOD1トランスジェニックマウスをB6/C57Jにもどし交配後掛け合わせた。aTTPノックアウトマウスの精子とC57/JB6の野生型雌(aTTP+/-)の卵で体外受精をし、まずaTTP+/-の個体群を次いでノックアウトマウスを作出し観察した。ヒトneuroblastoma由来の培養GOTO細胞の過酸化水素による酸化ストレスに対する反応を検討しヒト脳の脳梗塞巣と比較した。対照のC57 BL/ 6J Jcl 系雄マウスとα-TTP ノックアウトマウスをビタミンE欠乏および過剰食で飼育し、血液、脳、肝臓のRNA を抽出した。Affymetrix 社の GeneChipR を用いたマイクロアレイ法により発現遺伝子の解析を行った。なお、本研究は倫理委員会および動物実験委員会の承認を得ておりこれらの面に十分に配慮した研究を行っている。
結果と考察
HNEにより高度に修飾されているタンパクの1つはCu/Zn superoxide dismutase (SOD1)と判明し、それにより酸化ストレスが増強されているものと思われる。副腎にもリポフスチン様顆粒の蓄積を証明し局所での酸化ストレスが疑われる。動物モデルではそれぞれのマウスのB6/C57Jへのもどし交配を完了し、αTTPノックアウトマウスとG93A変異SOD1トランスジェニックマウスの掛け合わせを開始し、G93A SOD1とαTTP-/-のダブルヘテロマウスを作出、運動機能や繁殖機能の解析も行っている。多数のaTTPノックアウトマウスの作出のためのプロトコールを完成、業者を選択し業務委託を行い体外受精に着手した。培養GOTO細胞では過酸化水素への暴露によってApoE蛋白の発現が増加し、ヒト脳梗塞巣でもastrocyteやmicrogliaに加え神経細胞にも明らかなApoE様免疫活性が認められ、今後ApoEとの相互関係も重要と思われる。ビタミン E により大きくup regulation するものとして脳ではoxytocin-neurophysin Iを含む12遺伝子、肝臓ではCYP4A14 やCYP7B1 を含む7 遺伝子を同定し、酸化ストレス関連遺伝子としてはerythropoietinやラジカル捕捉能をもつ metallothioneinの発現が増加し、エネルギー代謝関連遺伝子としてはグルコース6リン酸の発現が減少し解糖系に係わる酵素の発現は増加することが判明した。
結論
αTTPノックアウトマウスではSOD1がHNEの修飾を受けその機能が障害されてさらに酸化ストレスが強まる機序が想定され、副腎髄質もその場所の一つと思われた。ビタミンE欠乏が寿命や神経系にどのように影響を与えるかを検討するために、αTTPノックアウトマウスを多数作出する作業を開始した。また、酸化ストレスがApoE蛋白の発現をもたらすことから両者の関連が示唆された。さらに、DNA マイクロアレイ法を使用しビタミン E により制御される遺伝子の網羅的な解析を行った結果、α-TTP 欠損マウスの脳においては、ビタミン E 欠乏状態と比較してビタミン E を過剰に投与すると
下垂体後葉ホルモンであるoxytocinが誘導されることが判明し、ビタミン E が血管ホメオスタシスなどにも関与する可能性を見い出した。この機能はビタミン Eの新規の超抗酸化作用を示す生理作用として大いに期待される。

公開日・更新日

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