海外の統計情報の実態とその評価に関する研究

文献情報

文献番号
200200139A
報告書区分
総括
研究課題名
海外の統計情報の実態とその評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
宮城島 一明(京都大学大学院社会健康医学系健康政策管理学)
研究分担者(所属機関)
  • 里村一成(京都大学医学部公衆衛生学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 統計情報高度利用総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人口や保健の分野では、諸外国との比較に統計が様々な形で利用されているが、その基礎となる調査・統計処理の方法、規模、正確性等については明確な情報がないのが現状である。日本のe-JAPAN戦略における統計情報のオンライン等による収集について各国の対応と問題点について検討を行った
研究方法
OECD加盟国に対して情報収集のオンライン化への考え方や現状についてアンケート調査を行った。質問内容は三師調査、患者調査、病院調査の情報収集について行った。この調査はオンライン化が推進されている国ではemailの使用が可能と考えてemailで行ったが、emailにて返信のない場合あるいはインターネット検索等でメールアドレスが不明の場合は郵送で行った。同時に日本の統計情報についての認識・意見も問い合わせた。国全体ではないが、一部の州においてオンラインでの情報収集をしている場合はその現状を個別に問い合わせた。聞き取り調査としてはドイツのe-governmentにおける保健統計情報の現状について行った。
結果と考察
研究結果及び考察:ドイツに対する聞き取り調査はe-governmentの統計についてボンにある連邦の事務所で行った。現在、e-governmentの統計においてはデータの公表をインターネットを通じて行うもので、データの収集等は多くは紙媒体であり、一部のみイントラネット(STAnet)で行っていた。今後も基本的には、データ収集特に個人データを含むものについては紙ベースで行う予定であった。ここ数年間で保健情報のうち出産関係のみオンラインでの収集を予定していた。今後は、従来まで、役所等で紙の集計等をしていた人が磁気媒体やオンラインに入力する、言い換えれば紙を磁気媒体に変えるだけであり、個人レベルでインターネットを介して入力することはほとんど考えられていなかった。また、イントラネットであるが入力データの保護はID、パスワードの他、SSLを使うだけで十分と考えられていた。入力者の個人識別等については、従来の紙ベースの情報収集時にそこまで行っていないのにあえて行う必要はないと考えられていた。公表するデータの保護は一般的なファイアウォールだけであり、元々公表していたものであるから厳しい保護は不要との考えであった。ドイツでの統計情報の収集は元々、連邦がすべてを行うのでなくそれぞれのデータを持っている団体からデータをもらうのが中心であり、そのデータを磁気媒体でもらう交渉が行われているとのことであり、それぞれの団体がどのようにしてデータを集めているかはオンラインかどうかを含めて連邦レベルではあまり関知していないとのことであった。また、大々的にオンライン化によるデータ収集を行っているヨーロッパの国はないという話であった。e-JAPANに利用できる情報はあまりなかった。このことはe-JAPANが世界的にみても最新であるためと考えられ、むしろ問題点等の情報を発信していく立場にあるのではないかと考えられた。日本の統計情報についての評価も質問したが、OECDの統計上に載っていることの認知だけでほとんど使用しないとのことであった。また、現実にe-governmentに載せてある統計を検索してもらったが日本の欄はあるものの対象等の違いからか空欄にされているものが多かった。(参考資料としてドイツの担当者が用意してくれた書類を添付した。)
統計情報の収集に関して磁気媒体やオンラインを使うかどうかについての調査では、現在までに回答を得ている国のなかでは磁気媒体については使用中あるいは使用予定があるもののオンラインについては公表のみが多かった。少なくともヨーロッパにおいては個人情報のはいるデータについては磁気媒体での提出については考慮されているもののオンライン特にインターネットによるデータの入力等はプライバシーの保護の観点からなかなか難しいものがあることが推測された。現在回答している国が小国であるため、オンライン化等の必要性が薄いことも考えられる。今回の調査ではインターネットの普及率についての調査を行わなかった点もあり、明確にできなかったが、インターネットの普及がオンライン化促進を促す可能性は考えられる。OECD加盟国における日本の統計情報に対する評価についてもあまり回答がないが、OECDの加盟国は主としてヨーロッパの加盟国であり、OECDの統計情報に載っているのを知っている程度であり、積極的にその情報の正確性や内容について評価は行われていないと考えられる。海外への郵送等による調査では回収率が悪く、また、再三の督促にもかかわらず、人口の多い主要国からの回答がほとんどなかったため、日本における統計情報収集等に生かせるデータは限定的にしか得られなかった。また、聞き取り調査にしても今回OECD、ドイツに対しては行えたが、費用の面等で十分に行えなかった。日本に役立つ情報を得るためには人口の多いアメリカ、フランス、イギリス、オーストリア等に個別に場合によっては州や市町村に対しての聞き取り調査を含めて行うべきと考えられた。(回答の中には州によって違うことが明記されているものも散見された。)アンケートだけでは細かい制度上の違いが明確にできず、そのため、対象国が回答しにくい面があったり、現状が十分表現できなかったのではないかと思われる。
今回の調査でわかったことは、少なくとも回答を寄せた国においてはデータの収集から管理までの国の関与は日本が一番多いのではないかということであった。また、今後のデータ収集に関しても日本人に受け入れられるプライバシーの保護を確立することによってオンライン化が可能になるのではないかという点である。特にプライバシーに関する考え方は時代の流れによっておりドイツの聞き取り調査で担当者が話していたように、今後人々の考え方の変化をみて徐々に方法を変えていくという方法が必要ではないかと考えられた。
結論
海外における情報統計は収集の体制が日本とかなり異なることが示唆された。今後、地方分権などの国の事務の見直しのなかで、データ収集を職能団体等の特定の団体を利用することも必要と考えられる。e-JAPAN戦略は世界的にみてもかなり先進的なものを含むことが示唆されまた、個人情報を含むデータのオンライン化は慎重にメリットとデメリットを検討すべきではないかと考えられた。

公開日・更新日

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