健康危機管理研修および訓練のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200200134A
報告書区分
総括
研究課題名
健康危機管理研修および訓練のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
原口 義座(国立病院東京災害医療センター臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 友保 洋三
  • 石原 哲
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、全ての医療部門において健康危機管理の重要性が認識されてきている。健康危機管理には、幅広い分野が包括されるが、その中でも、災害時における健康危機管理は、不適切な対応がなされた際の、社会的悪影響の大きさから極めて重要と思われる。
平成13年9月以降の一連の米国での同時多発テロを受け、今まで以上に緊急に健康危機管理体制の緊急の充実、NBC(核・生物・化学)テロの国内対策の強化まで含めた幅広い・柔軟な対応が求められている。このためには、平常時から健康危機管理に従事する職員の研修が必須であるが、既に厚生労働省は、平成10年度から都道府県健康危機管理研修会を開催してきている。本研究は更に充実した健康危機管理研修のあり方、その向上を目的とした研究であり、既に数年間の経験の蓄積があるが、その結果を踏まえて、更なるレベルアップを目的としたものである。
研究方法
平成10年度からの都道府県健康危機管理研修会を踏まえた研究である。
各職種・専門分野で研修すべき内容は異なると考えられるが、本研究では、地方自治体の視点を踏まえた健康危機管理体制の実態・問題点を分析し、都道府県等職員に対して必要な研修項目・研修方法・訓練方法の今後のあり方について検討を加えたものである。
結果と考察
研究結果=検討結果に関しては、検討内容として、
1)「研修内容本体に関して」、は健康危機管理(災害医療)をどうとらえるかによって、変わってくるが、基本的には、総論としての災害(災害の全体像、災害に関わるシステム・法的体制、我が国の災害医療対策の現況、その他)の知識を得ることと各論ともいえる災害医療の実際の考え方(トリアージの問題、災害弱者の問題、NBC災害(核・生物毒・化学物質毒災害)、こころのケアのありかた、等)を一定程度知識として獲得しておくことが必要と考えられ、車の両輪ともいえる。
2)「研修を受講する側の立場からの視点」からみると、updateのテーマで興味を引く・引かないも重要であるが、より重要な視点は、地域的な特色を生かすことであると考えられる。
一方、地域的にみて可能性が極めて少ない災害項目に関しては、万が一発生した際に、パニックに陥る危険性が高い。
3)「研修・訓練を教育・指導する側」に関するありかた、の観点に関しては、まだきちんとした評価体制が確立していない現在で、大きな問題として残された。
すなわち、現在の評価方法としては、受講生側からの評価、主催者側からの評価、講師グループからの評価、本人の評価、第3者からの評価、その他、があるが、これらはいわゆる360度評価、450度評価と呼ばれている。
この観点からみると、各々問題点がある。その詳細は省略するが、最も重要な視点は、研修内容に関連する項目であり、教える側として、広い視野・高い立場・長期的視点に立った総論的な研修内容(横幅のある内容)と、専門性・習熟性に力点を置いた各論的な研修(縦の深みのある内容)の二つの大きな方向性がある。各々に利点・問題点がある。
研修方法としては、1)講義は知識集積に力点をおき、2)身体を用いた活動的実地訓練は、実際の器具に触れるなど、体感で覚え、3)その中間形態ともいえる机上シミュレーションは、広い視野で、他の立場のものとの協力体制の確立・重要であるにもかかわらず準備していない項目や脱落した項目の確認が可能となる。
考察=考察を提示する。
1)「研修内容本体に関して」は、評価の観点にも関連するが、基本的には、総論としての災害と各論ともいえる災害医療の実際の考え方・専門的な考え方を一定程度知識として獲得しておくべきであり、車の両輪として、特に地方自治体における活動を考える上で、住民との接点・マスコミとの協力体制の確立上、必須といえる。
2)「研修を受講する側の立場からの視点」からみると、地域的な特色を生かすことにより、地域毎に特に経験に基づいた知識や習熟した技術を更にレベルアップ可能となると考えられ、また同様な災害に被災した経験の少ない他地区からの研修生へも伝達することにより、受講生全体のレベルアップ(ボトムアップ)、パニック防止、今後のネットワーク推進に有効である。
3)「研修・訓練を教育・指導する側」に関するありかた、の観点に関しては、まだきちんとした評価体制が確立していない現在で、最大の問題である。いわゆる360度評価、450度評価にも問題がある。
最も重要な視点は、研修内容に関連する項目であるが、広い視野・高い立場・長期的視点(横幅のある内容)と専門性(縦の内容)の組み合わせ型である。
我が国では、特に医療分野では、専門性が重視される傾向から、現在の災害医療研修は、しばしば後者(各論的な内容)に比重が大きくなりがちである(また興味もひきやすいこともあるが) 。特に講師の先生方は、自らの専門分野に拘泥することも多く、全体像を把握していないことがしばしばみられ、大きな問題点として残される。特に地方自治体の立場からは、望ましくないと考えられる。
研修方法としては、講義・身体を用いた活動的実地訓練は、その意義を既に述べたが、その中間形態ともいえる机上シミュレーションは、違う地域の経験・違う立場からの見方、法的な問題を含めた問題点(不備な点等)、実際には起こりにくいが、しかしおこりうる特殊状況(夜間・休日・豪雨、積雪等も含めて)への幅広い対応広いの学習に効果的である。視野で、他の立場のものとの協力体制の確立・重要であるにもかかわらず準備していない項目や脱落した項目の確認に意義がある。
結論
以上、本研究の概容を提示した。
今後の方向性として、研修後の知識獲得度も検討しつつある(テストの形をとる必要は必ずしもないと考えるが)。
また私たちの施設(国立病院東京災害医療センター 臨床研究部)で作成した印刷物等が有効に活用できると考えられる。これらの教育シリーズ一覧も提示した。

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