医療機関におけるクロイツフェルト・ヤコブ病保因者(疑い含む)に対する医療行為についてのガイドライン策定に関する研究

文献情報

文献番号
200200084A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関におけるクロイツフェルト・ヤコブ病保因者(疑い含む)に対する医療行為についてのガイドライン策定に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
金子 清俊(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第七部)
研究分担者(所属機関)
  • 黒岩義之(横浜市立大学神経内科)
  • 児玉南海雄(福島県立医科大学医学部脳神経外科)
  • 有馬邦正(国立精神・神経センター武蔵病院臨床検査)
  • 信国圭吾(国立療養所南岡山病院神経内科)
  • 小村健(東京医科歯科大学口腔外科)
  • 後藤雄一(国立精神・神経センター神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
-
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.医療行為によるプリオン病の伝達を予防するため、プリオン病患者や硬膜移植歴や遺伝性プリオン病の遺伝子保因等のあるプリオン病ハイリスク者に対する、手術、内視鏡検査、剖検、歯科治療等の医療行為を行う際のガイドラインが必要となる。
2.多数の変異型CJDの発生がある英国では、患者、ハイリスク者のいずれについても対応可能なマニュアルを2002年4月に公開したところである。
3.一方、わが国においては、硬膜移植が過去に多数実施されていることから、変異型CJDの多い英国と同様、ハイリスク者が多く存在すると考えられるが、平成14年3月のヤコブ病訴訟により硬膜移植歴が医療機関において把握されるケースが急増し、神経内科専門病院のみならず、あらゆる医療機関でガイドラインに対する必要性が高まっている。
4.これまでに、患者に対する基本的な医療行為上の留意点については、2002年2月に発行した、「クロイツフェルト・ヤコブ病診療マニュアル(改訂版)」に記載されているが、本マニュアルは、診断法に関する記載が中心であり、医療行為を行う際の本格的なガイドラインについては未完成である。
5.我が国におけるこれらの方々に対する医療行為に関するガイドラインを作成することで、現在各医療機関で混乱しているプリオン病患者またはプリオン病に罹患している可能性のある者への医療行為について一定の方針を示すことができる。
研究方法
 プリオン病に罹患している可能性のある者に対する医療行為のガイドラインについて、国内外の知見を収集するとともに、実際の医療行為におけるプリオン伝達の可能性について検証を行い、今後の国内における医療行為に関するガイドラインについて検討を行う。
1.国内外の知見を収集(主要文献の翻訳を含む)
(1) (1)WHO: WHO infection contorol guidelines for transmissible spongiform encephalopathies. Report of a WHO consultation. Geneva, Switzerland, 23-26 March 1999
(2)厚生労働省特定疾患対策事業、厚生労働省遅発性ウィルス感染調査研究班:クロイツフェルト・ヤコブ病診療マニュアル(改訂版)2002
(3)CJD Incidents Panel : Management of possible exposure to CJD through medical procedures. A consulting paper. October 2001
(4)Axon ATR, Beilenhoff U, Bramble MG, et al. Variant Creutzfeldt-Jacob diseae(変異型CJD) and gastrointestinal endoscopy. Endoscopy 2001;33:1070-1080
(5)Report of the working group on decontamination of instruments in dental services in Scotland. 2002
(6)ヘルシンキ宣言(日本医師会訳)http://www.med.or.jp/wma/helsinki00_j.html
(7)遺伝医学における倫理的諸問題の再検討(WHO/HGN/ETH/00.4)翻訳:日本人類遺伝学会会員有志(平成14年10月7日)
2.国内における医療行為に関するガイドライン策定に向けての課題整理
(1)Sporadic CJD
・医療行為 (IVH、気管切開)、看護
・歯科治療 (神経根)
・剖検
(2)硬膜移植後 CJD
・脳外科治療
(3)Variant CJD:末梢リンパ組織の感染性
・内視鏡
・輸血、移植
・歯科治療 (神経根、出血)
(4)プリオン病ハイリスク者
・個人に関する倫理問題 (医原性、家族性プリオン病等)
・公衆衛生上の必要性 (特にVariant CJD)
結果と考察
1.主要文献の翻訳を含めた国内外の知見の収集(インターネット上で公開予定)
(1)WHO: WHO infection contorol guidelines for transmissible spongiform encephalopathies. Report of a WHO consultation. Geneva, Switzerland, 23-26 March 1999
(2)厚生労働省特定疾患対策事業、厚生労働省遅発性ウィルス感染調査研究班:クロイツフェルト・ヤコブ病診療マニュアル(改訂版)2002
(3)CJD Incidents Panel : Management of possible exposure to CJD through medical procedures. A consulting paper. October 2001
(4)Axon ATR, Beilenhoff U, Bramble MG, et al. Variant Creutzfeldt-Jacob diseae(変異型CJD) and gastrointestinal endoscopy. Endoscopy 2001;33:1070-1080
(5)Report of the working group on decontamination of instruments in dental services in Scotland. 2002
(6)ヘルシンキ宣言(日本医師会訳)http://www.med.or.jp/wma/helsinki00_j.html
(7)遺伝医学における倫理的諸問題の再検討(WHO/HGN/ETH/00.4)翻訳:日本人類遺伝学会会員有志(平成14年10月7日)
2.クロイツフェルト・ヤコブ病感染予防ガイドラインの策定
目 次
第1章 総論
第2章 非侵襲的医療行為、看護及びケア
第3章 消化管内視鏡検査
第4章 脳神経外科手術
第5章 歯科治療
第6章 剖検・試料作成
第7章 倫理的問題
結論
プリオン病に罹患している可能性のある者に対する医療行為のガイドラインについて、国内外の知見を収集に向けた関連主要文献の翻訳を行った上で、「クロイツフェルト・ヤコブ病感染予防ガイドライン」を策定した。
今後の課題として、啓蒙活動(特にプリオン病剖検率の向上)及びプリオン病ハイリスク者に対するコンサルテーションの問題が挙げられる。特に後者は、個人に関する倫理問題 (医原性、家族性プリオン病等)のみならず、公衆衛生上の必要性 (特にVariant CJD)からも重要な課題である。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-