病院会計準則及び医療法人の会計基準の必要性に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200073A
報告書区分
総括
研究課題名
病院会計準則及び医療法人の会計基準の必要性に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
会田 一雄(慶應義塾大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
-
研究費
7,507,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
病院会計準則は、前回の改正から20年を経過し、医療施設機能の類型化、介護保険制度創設による医療サービスの構造変化等病院を取り巻く内外の環境は大きく変動しているため、その見直しの必要性が各方面から指摘されている。今日、医療機関に対し様々な情報提供要請がなされており、経営内容開示もそのひとつとされ、外部関係者への開示機能も加味すべき方向へと移行している。さらに、企業会計領域では経済のグローバル化に対応した国際会計基準全面導入の動きが加速し、また公会計や非営利会計にも大きな変化が生じている。(1)このような環境のもと、病院会計のあり方、会計情報の内容、開示方法等に関して病院会計準則を見直し、すべての病院施設の経営実態を比較可能とする会計基準を設計することが必要である。(2)また、民間病院の中核的開設主体たる医療法人は、社会保障制度改革や医療需要の変化等によりその業務内容に大きな変化が生じており、医療施設、介護施設に対する会計基準だけでは法人全体の経営内容を適切に表示しえず、医療法人会計基準の必要性を検討する根拠が見出される。
研究方法
本研究では、(1)非営利性、施設単位等、病院会計準則の性格と位置付けの確認作業、(2)情報の期待水準と期待ギャップの原因解明を意図した会計情報利用に関する実態調査、(3)会計情報としての財務諸表体系等の見直し作業、(4)医療法人会計基準のあるべき姿の設計作業等を研究目標として設定し、活動を展開した。まず、病院会計準則及び新たな会計基準についての文献調査、会計情報利用実態に関する関係者への聴き取り調査に続き、会計データと財務諸表の意思決定目的への利用についての海外調査を実施した。次に、医療を巡る社会経済環境の変化、情報利用者の関心領域、期待水準等を分析し、病院会計準則の基本的性格、財務諸表体系、経営指標と会計情報の関係、異なる開設主体の比較可能性を確保するためのアプローチ等について、専門家会議を中心に考察を進めるとともに、研究協力者全体会議において、関係者からの要望、実務的対応可能性等に関する意見を聴取し、検討を重ねてきた。最終的に病院会計準則(改正案)及び医療法人会計基準の必要性について、研究成果が纏められた。
結果と考察
本研究の結果、病院会計準則は施設単位である病院毎に作成される会計情報のための会計基準であり、異なる開設主体であっても病院の経営実態を比較する仕組みを導入することが必要であることが判明した。ひとつは従来の資本の部を純資産の部と定義し直したことであり、もうひとつは本部費の記載方法、内容を統一させたことである。また、運営状況を把握するためには、従来の損益計算書に加えて、キャッシュ・フロー計算書を財務諸表体系に包含し、経営の改善、強化を図るために、資金の流れにも着目すべきとされた。さらに、業務が変容しつつある医療法人全体の会計情報を整備すべきことが確認され、会計情報とともに事業報告書を制度化すべきであるとの提言を行った。
結論
病院会計準則を適用した会計情報によって病院の経営改善、強化を進めるにあたっては、開設主体毎の適用に関するガイドラインを準備し、かつ、普及を図るための施策が必要である。今回の研究成果として報告した病院会計準則(改正案)の実施に係わる規定を整備して、早急に制度化し、病院関係者の期待に応えることが期待される。また、本研究によって医療法人会計基準の必要性が確認された。今後は、この研究成果を踏まえて医療法人会計基準(案)を検討し、これにもとづく財務報告制度を構築して、社会的責任を果たすシステムを整備すべきである。これによって、経営の透明性、効率性を高め、福祉型社会に見合った情報提供が
実現されよう。

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