混合型企業年金が企業と従業員福利厚生に与える影響に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200003A
報告書区分
総括
研究課題名
混合型企業年金が企業と従業員福利厚生に与える影響に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
千保 喜久夫(財団法人シニアプラン開発機構)
研究分担者(所属機関)
  • 小川悟(三菱信託銀行株式会社)
  • 日下部朋久(三菱信託銀行株式会社)
  • 石川真嗣(三菱信託銀行株式会社)
  • 鵜野芳輝(三菱信託銀行株式会社)
  • 遠藤宣裕(三菱信託銀行株式会社)
  • 福本昇(三菱信託銀行株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の企業年金制度において今後重要性が増すと見込まれる混合型企業年金(キャッシュバランスプラン)について、この分野で先行するアメリカの事情を参考としながら、わが国における仕組みの概要を整理し、他の企業年金制度との比較を通してその特徴を抽出して、企業にとっての意義、従業員福利厚生からみた意義を調査研究する。
研究方法
混合型を含む企業年金の関係者、専門家を中心に研究会を組成し、各方面から見解を求め、かつ広く意見を聴取した。同時に、文献調査と分析を行い、アメリカへの出張面談も実施し多面的な研究を行った。さらに、混合型企業年金についてはすでに制度が始まっていることから、実務的側面、今後の制度改善点などにも配慮した研究を行った。
結果と考察
混合型企業年金(キャッシュバランスプラン)について金利等の条件を変数とするケースを前提に各種試算を行ったところ、これにかかわる退職給付債務の金利感応度が従来の確定給付型企業年金に比べ抑制されることが確認された。かつその抑制度合いについても目処をつけることができた。今後、金利の上昇可能性を考慮すれば従来型に比較し退職給付債務の減少度合いが小さくなることもありえようが、さらに将来的な金利循環局面をも考えれば、依然混合型の金利感応度抑制効果は、企業収益に対する影響を抑えることとなり、それだけ企業の年金提供余力が増すものと期待される。
結論
わが国では厳しい企業経営環境、資産運用難、退職給付会計の導入等によって、退職給付制度においても抜本的な改革が実施されつつある。そのなかで、退職給付債務がそのまま削減される確定拠出年金・企業型の導入、確定給付型からの転換が進められている。これは、従業員ニーズからみると転職に不利とならない点では前向きの評価があるといわれているが、厚生年金基金との対比でみれば終身年金が提供されないことを意味し、今後の長寿化時代には必ずしも適合した動きであるとは限らない懸念がある。今後の企業年金制度を設計するに際しては、企業ニーズすなわちそれに成果主義を反映させること、経済金融情勢の影響を極力抑えること、質の高い従業員を確保することが考慮されるであろう。一方、従業員にとって退職給付は重要な福利厚生制度であり、安心して働けるためには老後所得保障の一環としてますますその重要性が高まるものとみられる。そして、この両者のニーズは混合型企業年金(キャッシュバランスプラン)において調和させることができるものと考えられよう。企業は給付カーブを変えつつ、しかし運用リスクを負担する。従業員は金利変動の影響を受け入れるが運用利回りはゼロ以下とならず、運用リスクを負わず制度設計しだいでは終身年金の余地も残される。このような仕組みが可能となる混合型企業年金(キャッシュバランスプラン)は新しい時代に合った制度とみられるだろう。

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