看護基礎教育における看護技術教育の基準作成に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200101238A
報告書区分
総括
研究課題名
看護基礎教育における看護技術教育の基準作成に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
田島 桂子(広島県立保健福祉大学)
研究分担者(所属機関)
  • 藤村龍子(東海大学)
  • 高橋照子(愛知医科大学)
  • 井上智子(東京医科歯科大学)
  • 田村正枝(長野県看護大学)
  • 村田恵子(神戸大学)
  • 安酸史子(岡山大学)
  • 太田喜久子(慶應義塾大学)
  • 加藤千代世(社会保険看護研修センター)
  • 筒井真優美(日本赤十字看護大学)
  • 小田正枝(西南女学院大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
4,176,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今日の医療・看護では、最新の医療機器やコンピュータ処理による検査技術、移植医療や遺伝子治療などの高度医療への対応、人口の高齢化やQOLへの対応などが必要である。このことは、医療施設内では高度の最新医療への関わりを行い、一方では医療・看護の場を地域に移行し在宅看護、地域医療・看護の組織化の推進が求められていることを意味する。したがって、看護職者はこのような医療・看護環境の中で、確実な看護技術を用いた適切な看護の提供と、状況に応じた看護技術に関わる指導的役割を担う能力を身につけておく必要がある。このような社会背景の変化や多様なニーズに応じた看護実践能力を有する看護専門職者の育成には、看護技術教育の体系的な検討が不可欠となる。そこで本研究では、これからの時代に即した看護専門職者の育成過程に必要な看護技術とその教育のあり方に関する基準を作成することを目的としている。尚、本年度は医療関係現場で必要とされている看護技術を明らかにし、その教育実態を把握することが目標である。
研究方法
現在の医療・看護の現場で必要とされている看護技術の実態を把握するために、以下の方法で看護技術内容を検討した。1)平成7年度以降の公的基金(厚生科学研究費、科学研究費、社会福祉・医療事業団助成等)による8つの研究報告書に基づいて、技術項目を抽出する。2)わが国で看護職者の継続教育に関して定評のある病院、および全国にわたる研究協力者が推薦する病院をあわせて9施設の院内教育プログラムから、現場で必要とされている看護技術項目を抽出する。3)1)、2)項に基づいて、看護職者に求められる技術を体系的に精選するために、研究分担者が中心となって、人間の成長・発達段階、看護実践の場、看護実践過程、保健師・助産師・看護師に不可欠な内容等の視点から、看護技術項目を再整理する。4)3)項で整理された看護技術について、看護職の指導者の認識および指導実態を把握する。調査は設定した看護技術項目ごとに①日常の指導対象としている内容、②基礎教育での指導を望む内容、③臨地における指導の可能性をイ.無免許での実施の可能性、ロ.指導下での可能性、ハ.見学にとどめたほうがよい内容などを問う項目を入れた質問紙を作成し実施する。調査対象者は、臨床指導の経験をもち、かつ看護教育の基礎を学習した看護教員養成課程(臨床経験5年以上の看護職者対象)の修了直前の研修生とする。
同時に、看護技術教育のあり方を検討するために、精選した看護技術項目に基づいて、各看護学領域(基礎、成人、母性、小児、精神、地域・在宅、老人看護学)別に、看護技術を支える認知領域の内容を含めた教育単位の構築、および教育内容・方法の検討を進めている。
結果と考察
本研究の基礎資料として作成した看護技術内容は、具体的な技術項目を中項目とし、それらを大項目に範疇化し、最終的に6つの枠組みに分類した。6枠組みは①生活過程に関する援助技術②生活と治療・看護の過程に必要な技術、③治療過程に関する援助技術、④看護の実践過程に必要な技術、⑤看護システムに関する技術、⑥健康生活維持に関する課題への対応技術となった。
これらによる調査は、対象者719名、回収数339(回収率47.1%)であった。その結果、「日常の指導対象としている内容」については、「生活過程に関する援助技術」と「生活と治療・看護の過程に必要な技術」の中の基盤となる技術の指導の割合は高くなっているが、臨地での実施頻度が低い技術の指導の割合は低くなっている。また、「基礎教育で指導を望む内容」の結果については、いずれの技術も総体的に割合は高くなっているが、重要な技術であっても臨地における実施頻度に影響されて割合が低くなっている技術項目もある。さらにこれらの結果を「臨床経験年数別」および「臨床経験領域別」でみると、差のある項目は見られないが、「臨床における学生指導経験年数別」にみると、「基礎教育で指導を望む内容」に関わる項目のうち、臨地で実施頻度の少ない技術の指導に関して、経験年数6年以上の者の割合が有意(5%ないし1%)に低くなっている。
これらの実態は、設定した看護技術項目がおおむね看護基礎教育において必要な内容であると認識されていることを示していると考えられる。一方では、この実態が臨地における確実な看護実践能力育成には、「臨地における指導の可能性」と現在検討過程にある教育単位の構築に基づく教育内容の取り上げ方および教育方法の工夫などとの関係から、看護技術教育内容を具体化する必要があることを示唆しているとも受け取れる。
結論
初年度の研究段階では、今日必要とされている看護技術内容の検討と臨地実習指導者らの看護技術教育に対する認識および実態を明らかにした。これらの結果を考慮して、指定規則に表示されている各看護学を軸とした教育内容を、教授-学習過程を含めて具体的に検討することにおいて、看護技術教育の基準を作成していくことが今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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