看護基礎教育における認知領域面の教育基準作成に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200101237A
報告書区分
総括
研究課題名
看護基礎教育における認知領域面の教育基準作成に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 照子(愛知医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 田島桂子(広島県立保健福祉大学)
  • 藤村龍子(東海大学)
  • 田村正枝(長野県看護大学)
  • 村田恵子(神戸大学)
  • 太田喜久子(慶應義塾大学)
  • 安酸史子(岡山大学)
  • 井上智子(東京医科歯科大学)
  • 筒井真優美(日本赤十字看護大学)
  • 小田正枝(西南女学院大学)
  • 加藤千代世(社会保険看護研修センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
4,636,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今日の医療の進歩は専門分化と複雑性をもたらし、最新機器やコンピューターによる検査技術、移植医療や遺伝子治療など新たな検査や治療が台頭している。一方で在宅や地域医療では、チーム医療を前提とした保健・医療・福祉の諸専門職者との協働や、家族員も加えた生活に密着したシステム化が求められている。こうした医療環境や社会状況の変化に対応した適切な看護を提供するために、専門職者としての看護実践能力の質的保証は社会的責務といわなければならない。そこで,本研究では看護基礎教育における看護実践能力の育成を目指して,その根拠となる認知領域面の教育内容の基準を作成することが目的である。本年度は看護実践能力の中心である看護技術に焦点を当て,現在必要とされている看護技術を明らかにし,それとの関連から各看護学の教育単位および教育内容を明らかにすることを目的としている。
研究方法
現在の医療・看護の現場で必要とされている看護技術の実態を把握するために、以下の方法で看護技術内容を検討した。①平成7年度以降の公的基金(厚生科学研究費、科学研究費、社会福祉・医療事業団助成等)による8つの研究報告書に基づいて、技術項目を抽出した。②わが国で看護職者の継続教育に関して定評のある病院、および全国にわたる研究協力者が推薦する病院をあわせて9施設の院内プログラムから、現場で必要とされている看護技術項目を抽出した。
これらに基づいて、看護職者に求められる技術を精選するために、研究分担者が中心となって、人間の成長・発達段階、看護に実践の場、看護実践過程、保健師・助産師・看護師に不可欠な内容等に視点から、看護技術項目を統合した。
精選した看護技術項目に基づいて、各看護学領域(基礎、成人、母性、小児、精神、地域・在宅、老人看護学)別に、看護技術を支える認知領域の内容を含めた教育単位の構築、および教育内容を明らかにした。
結果と考察
看護技術内容は、①生活過程に関する援助技術②生活と治療・看護の過程に必要な技術、③治療過程に関する援助技術、④看護の実践過程に必要な技術、⑤看護システムに関する技術、⑥健康生活維持に関する課題への対応技術の,6つの枠組みに分類され,それぞれ大項目から,具体的な技術項目を中項目として提示した。
これらの看護技術は、認知領域面の基盤が明瞭であるとき看護実践能力の育成が可能であることから,看護技術を中心にした各看護学の認知領域面に関して教育単位構成が検討され,教育単位・教育内容について次のような結果を得ている。
基礎看護学では,人間の基本的ニーズを充足するための看護技術や看護の実践展開過程の基盤となる技術等を含めて11単位構成を提唱している。成人看護学では、基礎看護学で習得した看護技術を土台として、生活機能障害の視点から、健康期・急性期・慢性期・終末期、および看護基礎能力とする教育単位にまとめている。母性看護学では、主たる対象者が健康人であることから、対象の持つ発達課題の達成や健康の維持・増進を支援するために必要な技術習得を主眼として5つの教育単位をあげている。小児看護学においては、小児の成長・発達を基盤とした単位構成を試みている。精神看護学では、基本から実践過程、活動の広がりという視点から単位構成をしている。在宅・地域看護学においても、基本概念および展開技術・実践技術として、地域看護・在宅看護別に教育単位をあげその内容を提示している。老人看護学では、高齢者の状況や問題への対応・援助技術と高齢者に関わる看護職が身につけている技術・能力とする2大教育単位として、それぞれサブ単位を設けている。
これらの教育単位は、さらに必要に応じて看護技術を中心としながら関係する認知領域の内容を①知識、②知識の理解・解釈および関係把握、③クライエント・患者・家族を含めた状況下における問題解決力の面から階層的に組織する予定である。
結論
初年度の研究結果から、看護実践の現場において必要とされる看護技術が明らかになった。それらを基に看護基礎教育における認知領域面の教育単位を構築し、それぞれに関わる看護技術を中心とした内容を各看護学別に検討し提示した。
これらの結果に基づいて、教育の実際およびその可能性を把握するために調査を実施する。また、認知領域面の教育内容を構造的に明らかにし、基礎教育と継続教育との関係を考慮しつつ、基礎教育における看護実践応力育成のための認知領域面における教育内容の基準を作成することが今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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