核・生物毒・化学物質毒災害および関連する災害(NBC災害)に対する総合的医療対応の研究-多面的な対応体制の確立を目指して

文献情報

文献番号
200101236A
報告書区分
総括
研究課題名
核・生物毒・化学物質毒災害および関連する災害(NBC災害)に対する総合的医療対応の研究-多面的な対応体制の確立を目指して
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
原口 義座(国立病院東京災害医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 友保洋三(国立病院東京災害医療センター)
  • 荒井他嘉司(国立病院東京災害医療センター)
  • 山本保博(日本医科大学)
  • 岩本愛吉(医科学研究所)
  • 吉岡敏治(日本中毒センター)
  • 大橋教良(日本中毒センター)
  • 石原 哲(全日本病院協会)
  • 佐々木憲次(警視庁)
  • 小川弘行(東京消防庁)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
21,768,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、特に欧米先進国においては核・生物毒・化学物質災害(NBC災害)が重視されてきている。本研究は、核・生物毒・化学物質災害および関連する災害(NBC災害)に対する総合的医療対応を確立する目的で行った。なお関連する災害として、核物質・化学物質を含めた爆発事故・事件、およびテロリズムによる災害への医療対応も重要と考え当初より加えてきた。
研究方法
研究の概要としては、各災害の特徴を洗い出すことから始めた。これらの災害には、基本的に多くの重要な共通点がある反面、異なった対応を要する面がある。すなわち、共通の対応体制を確立し、更に各専門的な対応体制を加味してゆくという両面作戦・研究が必要である。
前者の「共通する研究項目」の代表的なものとして被災者の汚染時の除染方法の研究、2次災害としての医療従事者も含めた2次汚染予防の準備の研究、汚染を免れた多数の人々・住民に対する不安・精神的な対応、そのためのマニュアル作成の研究、これらを総合的に考えた際に必要となる基本的な災害訓練を確立する研究等の項目に関して、幅広い視野で研究を行った。
例えば、この内の精神的な対応に関しては、各種の災害における精神的患者対応のあり方に資するためのワークショップを開催した(プログラムを添付)。また、東京地下鉄サリン事件後7年を経過した時点でのPTSDの現状についてアンケート調査を行った。
後者の「異なった対応を要する面」における研究としては、災害の種類別・発生時期、認識・判定・診断方法別の想定が必要であり、また被害が明確になった際における専門分野別の役割分担・状況把握体制(例えば感染症では、いわゆるサーベイランスの意義)の研究を行った。実際には、複数の専門家を米国より招へいし、バイオテロリズムに焦点をあてたシンポジウムを各地で繰り返し施行し、各地の専門家を交えた意見交換・情報収集を行った(抄録集を添付)。
これらの研究の最終段階としては、実際に対応できるような体制に至るための種々の災害のシミュレーションの作成と合理的、かつ具体的な災害別の訓練の施行に繋げ、対応能力の向上を確認できる段階にまで進めるものであるが、既に初年度の本年度よりNBC災害を想定した災害医療訓練も並行して行い、その問題点を洗い出した(3月30日に施行、詳細は報告集としてまもなく作成予定)。
これらの研究は、次項に示す如く、NBC災害以外にも自然災害後の2次災害の軽減(例えば、大地震発生後の食中毒発生への対策、阪神淡路大震災でも若干問題となったアスベスト等を含む有毒物質による被害対応等)にもFeed backできる点も有意義と考えられる。
結果と考察
まだ初年目であるが、今回の研究で得られた成果・結果としては、以下のごとくである。
①「共通する研究項目」として
1)訓練としての放射能汚染・化学物質毒汚染・炭疸菌等のバクテリア汚染に対する除染方法を具体的に検討し、ゾーニングの必要性とその限界(極端な潔癖性は避けるべき)を調べることができたこと、
2)2次災害、2次汚染予防対策として、マニュアルの作成、医療従事者への平時よりの教育の必要性が指摘できたこと、
3)精神的な対応としては、精神科の側からの対応のありかた(早期から、どう対応するべきか)に関しては、各災害原因別に個別の対応を確立すべきことが明らかとなった他、サリン患者に関しては、いまだ精神面での影響が残存する例も少なくないことが認められた(今回詳細に検討できた症例数は、約20例とまだ少数であるが)。
②「異なった対応を要する面」として
1)最も焦点をあてた生物毒災害としては、まず平時におけるサーベイランスとその上での医療施設のスタッフに対する教育・訓練の徹底の重要性が、第1にあげられ、更に円滑に進めるには備品・物品面での充実も具体的な項目として必要と考えられ、リストアップできる段階になったこと、
2)化学物質災害に関しても、特殊性を十分熟知した上での、教育・訓練、多施設との協力体制の充実の必要性が認められ、
3)放射性物質災害に関しても、基本は、化学物質災害と同様、やはり、平時よりの教育と訓練、そのためのマニュアルの充実が確認された。
これらは、テロ・爆発を含めて、緊急性に鑑み、円滑な手順が必要であるが、想定されるものは、
①現場→②除染→③救命処置・救急処置→④搬送→⑤医療施設での同様の対応(②除染→③処置→④院内搬送・検査(種別・規模等により若干の順番の変更はありうる)となるが、これを的確に行うには、多施設(消防・救急、警察、自衛隊等)と医療施設との密接な協力が必要である。これには、既に本年度にも行っているが、災害訓練の施行が最も好ましく(本年度でもある程度の合理的な訓練のあり方を確立できる見込みがえられたが)、更に確実なものとするには、訓練を繰り返す必要がある。
なお今後の展開として、看護部門、検査関係、NGO医療関係、獣医、マスコミ、社会学者、旅行医学関係部門、スポーツ医学、ロボット学者、オブザーバーとして外務省・内閣危機管理室部門にも加わっていただき、より幅広く・深いものとする予定である。
結論
初年度は、精神的な対応に関しての研究、2次災害としての2次汚染予防の研究、
大規模感染症に対するサーベイランスを含む対応のありかたの研究
NBC災害訓練も並行して行い、その問題点を洗い出すことを行った。次年度は、これらを有機的につなげるべく研究を進めるのみならず、
災害弱者としての視点から、いわゆるCWAP、慢性疾患患者への対応
2次災害を最小限とするためのマニュアル作成、災害種別を念頭に置いたロボット化
NBC汚染患者(2次汚染も含めて)の搬送システム(ネットワーク)の確立へ向けての研究
一般市民への伝達体制(情報収集も含めて)を充実につづける所存である。

公開日・更新日

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