へき地・離島医療における診療支援システムの評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200101234A
報告書区分
総括
研究課題名
へき地・離島医療における診療支援システムの評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
小濱 啓次(川崎医科大学救急医学)
研究分担者(所属機関)
  • 滝口雅博(弘前大学医学部附属病院)
  • 吉新通康((社)地域医療振興協会)
  • 鈴川正之(自治医科大学)
  • 米倉正大(国立病院長崎医療センター)
  • 大田宣弘(島根県立中央病院)
  • 小濱啓次(川崎医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
へき地・離島医療の改善を合目的に行うための指標を客観的に評価する目的で「医療のへき地度」のスコア化を試み、主観的にも「医療上のへき地」と考えられた地域でのスコアが高くなることがわかった。さらなる本スコアの妥当性を検討していく必要がある。へき地・離島医療の確保と質の向上のためには、医療資源のより効果的な活用を目指したへき地医療情報ネットワークの確立が必要である。このことによって、医師間の交流支援、代診支援、診療支援、生涯教育支援などが可能となり、かつへき地・離島医療の評価法にも役立つものと思われる。へき地・離島に勤務する医師の研修のあり方については、卒前教育、卒後研修カリキュラムの作成、研修を行う病院の設定が重要である。このことによって、より充実した医師研修効果が得られ、研修システムの評価判定が可能となる。へき地・離島の救急医療、高度特殊医療においては、最後の砦となる総合病院への搬送を行わなくてはならず、経済的な問題も含めて多くの困難性がある。おのおの地域に応じた医師数、経済効率、搬送システムをみながら、総合的に評価する方法を構築しておく必要がある。へき地・離島の現地調査により、二次医療圏単位のへき地医療体制に限界のあるところもあることから、今後へき地・離島医療支援を持つ総合病院を核に、教育体制、医師供給体制、搬送体制等を統括した体制の評価法の検討が必要である。以上のようにこの研究においては今まで構築してきたへき地・離島医療のシステムを評価する方法を検討することを目的とし、このことによりへき地・離島における総合的な医療の改善を図ろうとするものである。
研究方法
研究にあたっては下記の通り研究課題を分担する。分担研究者滝口雅博は「へき地・離島における医療のへき地度の評価に関する研究」を、分担研究者吉新通康は「へき地・離島における医療従事者にかかわる情報ネットワークの評価に関する研究」を、分担研究者鈴川正之は「へき地・離島に勤務する医師の研修システムの評価に関する研究」を、研究分担者米倉正大は「へき地・離島における患者搬送システムの評価に関する研究」を、分担研究者大田宣弘は「へき地・離島における診療支援体制(医療機関)の評価に関する研究」を、分担研究者小濱啓次は「へき地・離島における診療支援体制のあり方と評価に関する調査研究」を各々分担する。医療のへき地度に関する研究については、試作したへき地度数より、多くのへき地・離島を比較検討し、医療のへき地度の妥当性を評価し、さらなる客観性を求める。医療従事者にかかわる情報ネットワークに関する研究については、各々の都道府県における効率的な、へき地・離島への医師従事者の需給策を検討し、評価する。医師の研修システムの評価に関する研究については、へき地・離島医療を行う上で必要な研修内容を検討し、研修カリキュラムを作成したので、これを評価する。診療支援体制に関してはそのあり方と評価方法について検討する。すなわち、へき地医療支援機構やへき地医療拠点病院に求められているものは何かを、またそれらをどのように評価するべきかを、検討する。現地調査及び都道府県の地域保健医療計画を参考にし、実際的な面よりへき地・離島における医療の問題点と改善策を追求し、よりよいへき地離島医療のあり方についても検討する。以上の分担研究者は年数回の会議をもってお互いに意見交換する。
結果と考察
へき地・離島におけ
る医療の改善を合目的に行うために地域の「へき地の程度」を客観的に評価する目的で「医療のへき地度」のスコア化試み、妥当な結果を得ることができた。このスコア化の調査を全国レベルで行いデータベース化することにより、「医療のへき地度」の程度がより客観的に把握できるようになり、分布図が作成できるものと思われる。また、インターネットを基盤とするへき地医療情報ネットワークを利用することで、施設の紹介、医療従事者の紹介、代診派遣といったマンパワー支援の基盤整備、医師の診療支援、生涯教育などの情報活用に期待される。一方、へき地医療情報ネットワークを通信や活動記録のデータベースとして構築し、各都道府県でのへき地医療の活動内容の紹介やへき地医療支援機構の評価といったへき地・離島医療全体の交流・評価も可能となるものと思われる。へき地・離島に勤務する医師の研修システムの評価方法については、全国の大学附属病院および臨床研修指定病院に対しアンケート調査を行い卒後臨床研修とその評価の実態を示し、へき地・離島医療に勤務する医師の研修システム自体の評価基準について明らかにした。また、へき地支援機構が研修システム向上のために果たすべき役割についても示した。離島へき地における救急患者を発症から高次医療機関での治療開始までの時間について、頻度の高いくも膜下出血と急性心筋梗塞の搬送の現状を調査したところ、おのおの平均516分、782分であった。くも膜下出血では、再破裂の危険な時期を考慮すると妥当な時間であった。一方、心筋梗塞では、診断がつくまでにかなりの時間を要していることが分かった。今後、疾患別に症例を重ね搬送地図を作成していくことにより、適切な搬送が行えるものと思われる。へき地・離島に対する診療支援体制(医療機関)の評価は、画一的な方法で行うことは困難である。診療支援は、支援を受ける地域の特性に応じて行われるべきであり、また診療支援を行う医療機関の状況も考慮する必要がある。しかしながら現段階では、基幹病院においては、へき地・離島に対する診療支援が基本的な業務の一つであることを十分に理解されていない。したがって実施すべき支援事業を総合的に判断する評価法を策定し、へき地・離島に対する診療支援を推進する必要がある。また、現地調査によって、各都道府県において救命救急センターを併設した基幹病院にへき地医療支援機構を設置し、顔の見える形で種々のシステムを構築していくことが重要であることがわかった。
結論
現状において、へき地・離島医療における医療支援システムの構築に最も求められていることは、医学教育における地域医療学あるいは総合診療医学の位置づけを強化すること、医師の供給体制を安定化すること、地域救急医療体制を確認することの3点であると思われる。

公開日・更新日

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