北海道の地域医療における情報通信技術を用いた生涯医療教育及び遠隔医療支援(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200101221A
報告書区分
総括
研究課題名
北海道の地域医療における情報通信技術を用いた生涯医療教育及び遠隔医療支援(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
山本 和利(札幌医科大学地域医療総合医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 辰巳治之(札幌医科大学付属情報センター)
  • 青木則明(ベイラー医科大学)
  • 木村眞司(札幌医科大学地域医療総合医学講座)
  • 明石浩史(札幌医科大学付属情報センター)
  • 川畑秀伸(札幌医科大学地域医療総合医学講座)
  • 宮田靖志(札幌医科大学地域医療総合医学講座)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
北海道の医療においては、都市部は供給過剰であり、逆に地方の市町村ではいまだに供給不足が続き地域間格差が深刻な問題となっている。それだけにとどまらず、市町村立病院や国保診療所・病院は医師の供給源を大学医学部の医局の順繰りの人事に求めざるを得ない状況があり、地元に根付いて継続性を持って医療に当たる医師が不足している。これらの原因には、子弟の教育や、現代人の都会志向以外に、地方における医師の生涯教育および診療支援の不足があると考えられる。地元に根付く医師を確保するためには、生涯教育および診療上の不安を取り除くことが大いに役立つ可能性がある。最新の医療に関する情報の取得と、他の医師とのディスカッションの機会を作ることの意義は大きいと考えられる。また、我が国の現在の医療体制では、大学・大病院での専門医からの教育が重視され、医療過疎地で働く医師は、僻地医療によって得られた経験を元に若手の医師を教育する機会に恵まれず、大きな損失となっている。
近年の情報通信技術(情報技術、IT)の進歩に伴って、リアルタイムの画像伝送によるテレカンファレンスシステムやそれを利用した医療システムであるテレメディシンが注目されており、本邦だけではなく、欧米においてもその実証実験が行われているが、その有用性に対しての包括的な評価が十分には行われていないのが現状である。
本研究の目的は、北海道の遠隔地と大学病院を結ぶ相互支援システムのニーズを洗い出し、実際にシステムを試験的に構築してこれを定量的・質的に評価するものである。具体的には、北海道の医療過疎地域に勤務する医師と大学病院間における、情報通信技術を活用した有機的な相互支援システムの具体的なアプリケーションを考え、実際に(1)大学病院から診療および生涯教育を支援するようなシステム、および(2)医療過疎地の診療所にいる指導医と大学にいる研修医・指導医を結んで、現場と合同でプライマリ・ケアに関するセミナーやワークショップ、講義を開催するようなシステムを試験的に構築し、定量的かつ質的に情報通信技術の地域医療・生涯教育・卒後教育への有用性、利便性、短所を評価し、今後のテレメディシンの応用と可能性とそれに関わる医療経済的分析を行うものである。また、 ITの大きな課題である 使いやすさやuser interfaceについても検討を加えるものである。
研究方法
1. 遠隔コンサルティングに用いるテレビ会議システムに関する考案
米国のヒューストン、テレフォートならびに沖縄県で使用しているテレビ会議システムについてインタービューにより情報収集した。また文献かたの収集も行った。また、道内で実際運用されているテレビ会議システムを用いてテレビ会議に必要な各種要件を検討した。
2.遠隔医療支援の促進因子と障壁
対象は北海道と沖縄で任意に選択した9名の医師である。方法は事前に準備した質問内容をすべて録音し、質的研究手法を用いて遠隔医療支援に関する促進因子と阻害因子の概念を抽出し、カテゴリー別にまとめた。
3. 隔医療の導入における質的研究の役割
総合診療研究会において「質的研究をやってみよう」という少人数で討論する企画を立て、18名の参加を得て、保健・医療サービス分野での質的研究を実施するに当たってての問題点を検討した。
結果と考察
結果1.遠隔コンサルティングに用いるテレビ会議システムに関する考案
現在利用可能なテレビ会議システムについて15の方法を比較検討しえた。その結果、画質、温室などテレビ会議システム一般に求められる性能の他に、画像共有デバイズなどの付加機能、簡便性などの要素も重要であることがわかった。
2. 遠隔医療支援の促進因子と障壁
促進因子・阻害因子として、人間、道具、支援内容、支援システムそのもの、タイムリーさ、コストの6つカテゴリーが抽出された。
3.遠隔医療の導入における質的研究の役割
内容分析から、信頼性、実施過程、認知度の3つのカテゴリーが抽出された。
考案
1.遠隔コンサルティングに用いるテレビ会議システムに関する考案
現行のネットワーク環境ではテレビ会議システム一般に求められる性能すべてを満たすような帯域を確保できる施設は非常に少ない。都市部に比べ過疎地では光ファイバー、DSL等のインフラの整備が非常に遅れている。よってそのような状況下においては快適なテレビ会議を施行可能なシステムを工夫する必要があろう。また、実際に使用する際には操作の簡便性も追求する必要があろう。できるならば多地点接続が可能なシステム導入が望ましい。
2.遠隔医療支援の促進因子と障壁
6つカテゴリーが抽出されたが、今後は対象を増やして、かつ質的研究手法を精錬して調査することが必要となろう。
3.遠隔医療の導入における質的研究の役割
研究の質を保ちながら現実的な研究を遂行するためには、実践的な質的研究手法を用いなければならないが、この研究を通じてその方法論を洗練する作業も必要となろう。
結論
北海道の地域医療において情報通信技術(IT)を応用した医療過疎地と大学病院を結ぶ相互支援システムについて、そのニーズを洗い出し、実際に診療支援・生涯教育・研修医教育を目的としたシステムを構築し、その地域医療・医学教育に与える効果を定量的・質的に検討を加えた。その結果、遠隔コンサルティングに用いるテレビ会議システムについては画質、温室などテレビ会議システム一般に求められる性能の他に、画像共有デバイズなどの付加機能、簡便性などの要素も重要であることがわかった。遠隔医療支援の促進因子と障壁として促進因子・阻害因子として、人間、道具、支援内容、支援システムそのもの、タイムリーさ、コストの6つカテゴリーが抽出された。遠隔医療の導入における質的研究の役割については信頼性、実施過程、認知度の3つのカテゴリーが抽出された。

公開日・更新日

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