第三者による病院機能評価活動の効果的・効率的な評価手法の研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200101216A
報告書区分
総括
研究課題名
第三者による病院機能評価活動の効果的・効率的な評価手法の研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
伊賀 六一(財団法人日本医療機能評価機構)
研究分担者(所属機関)
  • 大道久(財団法人日本医療機能評価機構)
  • 寺崎仁(財団法人日本医療機能評価機構)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
15,509,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第三者による病院機能評価活動は、1997年の本稼動以来5年を経過した。この間の経験を踏まえて次のような運用面での課題が抽出された。(1)複合種別を運用するにあたって、種別間の項目表現や項目の階層レベルなどの整合が必ずしも徹底されていない。(2)種別は受審病院側の任意選択によっており、認定証には適用された種別が表記されるが、病床の機能が複合されていながら、必ずしも複合種別での申請がなされておらず、病床機能の複合状況と認定証の種別表記に齟齬が生じる場合がある。(3)医療事故防止に関する社会的要請が強まっており、そのような観点から病院機能評価に対する期待も高まっているが現状の評価項目体系では、医療の安全確保に関連する評価項目が複数の領域にまたがっており、医療施設が医療の安全確保に関する改善活動を行う際に指針となりにくい。(4)病院の組織的基盤を評価するにあたり、組織論として不可欠な「リーダーシップ」の視点が十分でない。また、診療の質や看護の提供状況の評価手法がおもに部門活動の評価となっており、診療・看護のプロセスを十分に評価しきれていない。このようにより適切な評価を行うためには、評価内容の充実を図る必要がある。(5)現在の種別体系では、例えば救急医療機能や臨床研修機能など、社会的に特段の役割を担っている病院の機能を十分に評価しきれていない。
本研究はこれらの課題を解決して、より効果的・効率的な病院機能評価を実施するために、評価項目体系を見直すとともに、実運用に向けて試行調査を実施し、より適切な病院機能評価の基盤を確立することを目的とする。
研究方法
具体的な改定方針を次のように設定した。①患者の権利と安全の確保に間する領域を独立させ、管理者等のリーダーシップと診療・看護の経過に着目した評価項目を加えて体系化を図る。②病院の種別によらず共通する評価項目を包含した統合版評価項目を作成する。③病床区分に応じて統合版評価体系を適用し、必要に応じて病床種別に固有な項目を付加して運用する。⑤実際の審査に当たっては、受審病院の規模・機能・性格などに応じて必要な項目の範囲を類型化する。⑥認定の表記は、一般・精神・長期の種別とモジュール機能とする。以上のような方針のもと、領域別検討班において、有識者で合議する「コンセンサス・アプローチ」で項目の検討を実施した。検討班で開発された改定評価項目の妥当性、有効性を検証するために、また、一定の時間枠内で効率的な審査ができるよう、審査手順を検証すること、その他運用面での課題を抽出し、実運用に向けて調整を行うことを目的として試行調査を計画した。病院団体に試行調査協力病院の推薦を依頼し、13病院の協力を得た。また、日本医療機能評価機構のサーベイヤー479名の中から特別審査員・評価部会員を中心に審査経験豊富なサーベイヤーを抽出し、協力依頼を行った。協力病院および協力サーベイヤーによる試行調査説明会を開催し、書面審査調査票を配布した。この調査票には、自己評価調査票として新評価項目がすべて含まれている。また審査手順を協力病院、協力サーベイヤー双方に説明した。書面審査調査票提出後、日程調整を行い、1病院あたり4名~7名のサーベイヤーが病院を訪問して試行調査を行った。試行調査にあたり、協力病院、協力サーベイヤーにアンケート調査を実施した。また協力サーベイヤーを召集し、新評価項目の具体的課題を検討する報告検討会を実施した。
結果と考察
新評価項目の試行調査結果を踏まえて、最終修正を施した後、評価項目を公表し、実運用に供することとなる。試行調査では、適用される評価項目数と審査日数のバランスや、評価調査者の担当領域ごとの負荷のばらつきが指摘されており、それらを運用上どのように解決するかが課題として残されている。また、新規項目や新たな審査方法について評価調査者の習熟が必要であり、今後、教育研修を通じて、スキルアップを図る必要がある。受審を予定している病院に対しては、さまざまな媒体を通じて普及・啓発を図る必要があるが、診療報酬上の施設基準要件となったことや、認定更新病院の審査が始まる事などにより、新評価体系は比較的速やかに普及するものと思われる。新評価体系の普及によって、より的確な審査の実施はもちろん、病院活動の継続的な改善指針としての活用が期待される。また、現任の評価調査者に対する研修教育を行う。一方、実運用に伴い、実務的な問題点が把握されることとなるため、運用細則の見直し、または評価項目解釈の精緻化とそれを反映した小規模な改定などが必要となることが予想される。
結論
統合版評価項目の開発・運用によって、どのような性格の病院であっても共通の基準で評価判定するシステムが確立された。今後は付加機能(モジュール)評価項目の開発を行い、統合版とあわせて運用することで、病院機能評価システム全体を運用することが課題である。また、新評価体系では項目数が多く業務負荷が大きいことから、受審数の増大に対応すべく、審査の効率化を早急に図る必要がある。

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)