医療機器の開発促進のための医療における技術評価に関する研究

文献情報

文献番号
200101214A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機器の開発促進のための医療における技術評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
菊地 眞((財)医療機器センター(防衛医科大学校))
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1990年以降急速に減速傾向にある我が国の医療機器・用具産業の実状をふまえて、望ましい医療機器の開発促進のための医療における技術評価について研究することを目的として検討を行った。
研究方法
本研究は、主任研究者及び研究協力者による研究班を組織し検討を行った。効率的な医療機器の開発、普及、使用に必要な技術評価の評価因子と評価基準には様々な項目が包含されるが、医療機器の開発促進においては、研究・開発者の発想や技術力の他にも、医療制度上の問題、さらには経済的評価を強く左右する医療保険制度等の問題が含まれるため、初年度は「医療機器の医療における技術評価」における経済性評価の諸点について、より現実的な話題として取り上げて集中的に調査・研究した。また、米国の医療技術評価の傾向や公的及び民間部門の医療技術評価及び国際的動向について調査・研究した。
結果と考察
1. 医療機器の医療保険制度 技術評価の一要因である経済的評価を強く左右する医療機器の医療保険制度等について検討を行った。現在の保険制度の問題として、診療報酬上の評価と保険適用時期の2点が上げられる。日本のような国民皆保険制度においては、保険償還価格が公定化されることはやむを得ないが、この公定価格制度下で一般工業製品に見られる価格競争をどのようにして発現させ、他方で有用な新規製品に対して正当な技術評価(機能別分類による評価では正当な機能区分の設定)をなすことができるかが今後の重要な課題となることが解った。保険適用時期については、保険申請ルールはあるものの、原則2年に1回の診療報酬改定時期のみであり、新規開発品は製造承認を取っても保険適用の先が見えず時間がかかる状態である。このため、新たな製造承認を要しない一部変更承認として既存品の技術範疇での改良を行うことが多く、結果として、革新性の高い医療機器の開発促進を疎外する一要因となっていることが示唆された。また、平成14年度の基本方針策定で一応の体裁を整えたが、制度的整備の中心は出来高払いで保険償還される特定保険医療材料であって、価格評価が診療報酬の技術料に包括化されている医療用具(いわゆる「A区分」)は保険申請手続きまではルール化されたが、医療用具の視点からの技術料評価については手付かずの状態である。またいったん技術料の中に包括化された医療用具でも、その後の技術進歩を反映させた再評価がされず放置され、保険制度上の適正評価の難しさが伺われた。さらに、医療機器の導入から廃棄にいたるまでのライフサイクル・コストの考えをリスクマネジメント等の観点からも導入すべきであることが解った。 2. 米国の医療技術評価の傾向及び公的・民間部門の医療技術評価 欧米さらには国際社会においても医療技術評価は変化しており、現在次の9項目の傾向にあることが解った。また、医療技術評価活動が多様化・細分化・地方分散化するのに伴い、米国連邦政府では、医療技術評価を業務の一部とする機関が広範囲にわたり存在するが現在のところ系統的には調整されていない。しかしながら機能の一部を外注することで政府の医療技術評価能力を拡大させると共に、民間部門との連携強化を図っていることが示唆された。同時に欧州においても医療機器を医療現場に導入する際の評価機関が多数設立され、上記のような項目について評価が実施されていることが解った。1)医療技術評価のより広範な需要、2)医療技術評価機関の急増、3)より系統的で透明な医療技術評価プロセス、4)証拠基準の一層の高度化、5)技術データ及び情報の活用の増加、6)強調されるQOLの向上、7)コスト有効性分析と経済的分析法の利用増加、8)省庁間の医
療技術評価協力体制の強化・拡大、9)臨床試験時の条件付き保険適用制度の活用 これらの結果を踏まえ医療機器の開発促進の視点から技術評価を考えると、評価項目としては、まず第1に供給者側(研究・開発)評価としての技術そのものの評価、及び経済性評価の項目の一部について、より詳細に検討する必要が生じてくる。その他の評価側面や評価項目は、どちらかと言えば受益者(多くは患者側、もしくは機器・用具を使用すて診療を行うメディカルスタッフ側)の利便や利益、あるいは安全面を評価する立場からである。技術評価(アウトプット)に関しては、技術本来面、開発費用・資源面、環境面、国際面から評価がなされるが、現状では、医療機器・用具産業界の大方の見方として、アウトカムとしての経済性評価項目として挙げられている診療報酬や保険医療材料評価の設定に対する考え方や現状の矛盾点が、開発促進に対して負に作用しているものと考えられる。また、米国の医療技術評価の傾向からもわかるように、評価のプロセス、基準、技術情報、分析法の確立や国を挙げての評価体制の強化が必要であると考えられる。
結論
医療機器の開発促進に資する技術評価方針を策定する場合、診療報酬や保険医療材料評価は行政・社会といったマクロ的立場、医療機関及び産業からみた中間的立場からも重要視すべき評価項目であることが示唆された。

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