マネジドケアにおける医療システムの経営管理技法の導入効果に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200101208A
報告書区分
総括
研究課題名
マネジドケアにおける医療システムの経営管理技法の導入効果に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
小山 秀夫(国立医療・病院管理研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 みち子(国立健康・栄養研究所)
  • 西村 秋生(国立医療・病院管理研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
欧米で注目を集めているマネジドケアは、最近もその動向が各方面で注目されており、論文も数多く発表されている。本研究は、マネジドケアという観点から、医療システムにとって最適な経営管理手法を構築することを目的として実施した。
研究方法
今年度は、研究委員会を組織し、以下の研究を行った。
1)英国におけるロングタームケアにおけるケアマネジメント手法を英国の90年代の疑似市場並びに業績管理手法を中心にまとめ、問題点を整理し、わが国のマネジメント手法の参考とした。
2)病院管理者に対する意識調査を実施した。
3)アメリカ合衆国並びに英国における施設から在宅へのシステム開発と医療技術評価方法についての論文を整理し、分析を行った。
4)分担研究においては、「栄養ケア業務管理項目」を用いた栄養士業務調査手法の開発・実用性の検証を行った。
結果と考察
上記の結果として、以下のことが明らかとなった。
1)疑似市場については、OECD各国ですでに保健医療改革において採用されており、英国ではこの考え方に基づき多くの改革がなされている。また、これらの改革に伴い、業績評価が取り入れられることになった。
2)平成13年度の国立医療・病院管理研究所管理者研修会の受講生432名を対象に行った経営管理技法に関する意識調査の結果、医療機関の管理者は、経営管理に関する関心は高いという結果が得られた。また米国のマネジドケア、DRGs/PPS等に対する意見では、DRGs/PPSについての反対意見が医師に多いという特徴があった。また経営姿勢に関する要因を因子分析した結果では、①教育、②目標・動機づけ、③経営管理体制、④意識改革について、の4つのファクターにわけることができた。わが国においては、医療機関管理者への経営技法等の意識調査はほとんど行われていなかった。ゆえに、本調査によりわが国の医療機関管理者の経営意識、米国の医療政策等に対する考え方等が明確となり、貴重な知見を得ることができた。本調査は、今後のわが国の医療制度改革にも大きく寄与する調査であり、より詳細な分析を行い、次年度以降の研究につなげる必要があると考える。
3)アメリカ合衆国や英国にみられるような、施設から在宅への転換はわが国においても当然行われてきたことではあるが、これらをうまくなしとげたかどうかについての評価方法が明確ではないという問題点を指摘することができる。施設から在宅への転換が成し遂げられたかどうかによって、コストとケアの質を管理するシステムへと変換することが可能である。そして、中間的ケアは、それを可能にする一つの選択肢であるといえる。今後は、ケアシステムの施設から在宅への転換に伴うシステム開発が進めば進むほど、医療技術の評価方法や医療技術評価の方法自体が、大きく変化せざるをえないし、転換させるための科学的根拠に基づいた技術開発が必要になると考えられる。
4)分担研究は、「栄養ケア業務管理項目」を用いた栄養士業務調査手法の開発・実用性の検証を行った。国内外の先行研究から「栄養業務管理項目」を用いた栄養士業務調査手法を開発し、その実用性を確認することができた。  
結論
今年度の研究により、以下の成果が得られた。
病院幹部職員に対するアンケート調査では、病院幹部職員の経営管理技法や米国の医療政策への意見等の調査により、今後のわが国の医療経営に対する方向性を示唆することができた。調査結果は詳細な分析を行い、今後は、今年度の調査結果からさらなる調査を実施し、医療経営の最適化に資する研究を実施できるものと考える。
英国における保健医療福祉分野の疑似市場の研究では、今後わが国においても、保健・医療・福祉分野における疑似市場概念が広まるものと考えられる。特に、業績/成果という結果に対するアカウンタビリティはわが国においても取り入れられつつあり、制度政策や研究についても、経済産業省の平成12年度委託調査「研究開発制度の評価手法開発に関する調査」(三菱総合研究所)においても、詳しく述べられている。このような動向から、今後わが国の保健・医療・福祉分野におけるPFIは益々重要な位置づけとなるだけではなく、その実施経過にはアカウンタビリティが重要となることは明白である。わが国のアカウンタビリティをどのように実施していくかについての提言は今回はできなかったが、今後の研究課題である。
また、アメリカ合衆国と英国におけるインターメディエイト(中間)・ケアについては、OECD諸国でもわが国でも行われている施設から在宅への転換に伴うシステム開発や政策展開を研究することを目的として、文献研究を行ったが、これらの諸国における動向はわが国の保健医療福祉分野にも応用可能であり、特にこれらの政策転換がもたらす経営的指標の変化を追うことは重要である。本研究によって、インターメディエイト・ケアにおける経営管理技法についての応用が示唆できた。今後は、経営管理技法におけるインター値ディエイト・ケアのスケール作成等が必要となろう。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)