歯科医師の資質向上を目指した臨床研修の必修化及び国家試験の実技能力判定の整備等に関する総合的研究(総合研究報告書)

文献情報

文献番号
200101192A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科医師の資質向上を目指した臨床研修の必修化及び国家試験の実技能力判定の整備等に関する総合的研究(総合研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
中原 泉(財団法人歯科医療研修振興財団)
研究分担者(所属機関)
  • 住友雅人(日本歯科大学歯学部)
  • 真柳秀昭(東北大学大学院)
  • 井上宏(大阪歯科大学)
  • 櫻井薫(東京歯科大学)
  • 吉澤信夫(山形大学医学部)
  • 岩久正明(新潟大学大学院)
  • 俣木志朗(東京医科歯科大学大学院)
  • 久光久(昭和大学歯学部)
  • 道健一(昭和大学歯学部)
  • 齋藤毅(日本大学総合歯学研究所)
  • 川添堯彬(大阪歯科大学)
  • 花田晃治(新潟大学大学院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は歯科医師臨床研修が必修化されると想定してのソフト・ハード面に関する整備についてである。3年間の本研究期間中に必修が法制化され、大きな変化がみられている。その大きな変化とは各施設において対応が本格化してきたことである。歯科医師臨床研修に対する実態調査として必修の対象となる学生への制度の説明は重要な意味をもつ。必修化は7年間の歯学教育とも位置づけられることから、早期に実施しておかなければならない。本人はもちろん、家族の対応も必修前、後では大きく違ってくるものと思われる。そこで各歯科大学・歯学部の状況を把握し、取り組みを公開することから、歯学生に均一化された情報が行きわたる対応がなされることを目的とする。平成8年に歯科医師臨床研修が歯科医師法に制定され、6年間が経過した。この間に到達目標ならびに運営上の諸問題が生じてきている。本研究ではそれらの問題点を抽出し、改善案を提案することである。その問題点・改善案については歯科医師臨床研修に関わる多くの方々からのご意見をいただき、ブラッシュアップし、草案を構築することにある。国家試験に実技能力の判定すなわち実技試験を導入することには総論的には賛成する関係者が多い。確かに従来行われている客観試験では主として知識領域の評価しか判定できない。資質を向上させ、国民に望まれる歯科医師を養成するためには、やはり態度、技能領域の評価は避けて通れないものである。必要であるというのは先述の通り多くの関係者の意見ではあるが、実際に実施するとなると壮大な人的、物的資源が要求される。そこでこの研究においては、現状での卒前臨床実習の内容の把握、すなわち設備、実習項目などの調査を行い、可能性を探ることが目的である。それによって得られたデータを検討し、モデル試験を実施し、より具体的な検討項目を明らかにすることにある。
研究方法
[歯科医師の資質向上を目指した臨床研修の必修化]平成18年4月から施行される必修の対象となる学生に対して、各大学の対応について調査した。とくに必修化についての説明状況について詳細なデータを得た。平成12年度に開催した公開シンポジウムにおいて、研究班の到達目標に対して多くの方々から意見をいただいた。平成13年度はより細部にわたり検討し、完成度を高めるために多くの施設の臨床研修担当医に参加していただいてワークショップを開催した。そこでの意見をまとめ、最終的な試案を作成した。加えて臨床研修修了の評価基準ならびに臨床研修施設の指定基準および第三者評価についてのワークショップを開催し、現状での問題点を抽出し、改善策を構築した。これらの試案を公開シンポジウムで提示し、いただいたご意見でブラッシュアップを図った。[国家試験の実技能力判定の整備]各大学における卒前ファントム実習に関する実態調査ならびに卒前臨床実習に関する実態調査を実施し、その内容を分析した。加えて、保存領域でのモデル試験を実施して、試験項目、実施方法および評価方法などについて検討した。
結果と考察
[歯科医師の資質向上を目指した臨床研修の必修化]臨床研修必修化が法制化(平成18年4月施行)され、各大学、および研修機関の対応は大きく変化しなければならない。本年度
は必修の対象となる学生への説明状況を中心とした調査を実施した。対象となる学生たちの臨床研修に対する認識は必修化に向けて重要な意味を持つものと思われる。全体的に必修化の説明はなされているものの財源等における具体的な方針が出ていないところから、説明不足の感をいだいているところが多い。平成12年度に開催した公開シンポジウムにおいて研究班が提示した到達目標案に対して多くの方々から多くの意見をいただいた。平成13年度はより細部にわたり、検討し、完成度を高めるために多くの施設の臨床研修担当医に参加していただいてワークショップを開催した。[国家試験の実技能力判定の整備]実習施設の面積、実習媒体の数については、既卒者も含めて十分な設備が確保されていることが判明した。また実習項目として広く実施されている課題も明らかとなって、したがって実技試験の内容をファントム実習の中から選択することは可能と考えられたが、実際の導入にあたっては、使用機器等の規格統一や試験課題の内容的な妥当性と評価の客観性に関する検討などが必要である。卒前臨床実習の内容と実施等の調査結果で、基本的審査項目、治療項目とも80%以上の施設で実施している項目は極めて少なかった。そのため模擬患者等を使った実技試験を導入する場合には、事前の準備として学部教育内容の検討も必要である。モデル試験の結果からは、使用する機器、材料、媒体等の設備関連の面と技能評価のソフト面から引き続き検討が必要と考える。
結論
[歯科医師の資質向上を目指した臨床研修の必修化]この研究期間中、すなわち平成12年12月6日に臨床研修が平成18年4月より必修となることが法定化された。これにより研修機関においては一段とその対応に拍車がかかることになる。そして平成18年4月の必修化の最初の該当者は平成12年の入学生である。したがって、対象学生にはこの制度の目的、具体的なカリキュラム、処遇などについて可及的に早期に知らせる必要が生じている。この3年間の研究では図らずも必修法定化前の調査と、必修が決定してからの調査を施行する結果となり、そのデータの持つ意義は大きいものである。歯学生ならびに、臨床研修修了者のアンケート調査によって、現状における制度の目的の浸透度と研修の実情が明らかになった。平成11年度、12年度に実施された臨床研修医の診療収入の調査では、医科との収入額の違いが認識された。給与財源の確保においては、歯科独自の形を構築する必要がある。また、研修機関の対応もハード・ソフト面に大きなバラツキが見られた。必修化においてはミニマムリクワイアメントもしくはコアとなる到達目標の設定が重要で、各研修施設の人的、物的基準の見直し案、そして修了認定の評価は平成18年に向けての草案作りに大いに貢献するものである。[国家試験の実技能力判定の整備]卒前ファントム実習ならびに卒然臨床実習に関する実態調査から現状の問題点が明確にされた。それに伴って今後の検討課題についての方向性も示すことができた。卒前ファントム実習に関する実態調査、卒前臨床実習に関する実態調査、特に保存領域における実施試験モデル研究、歯内療法学における実技試験項目、評価基準と判定方法についての一連の研究成果から現状の問題点が明らかになった。これによって国家試験に実技能力判定を導入する上での今後の継続的な研究課題を示すことができた。

公開日・更新日

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