保険診療点数算定基準の電子的表現のための標準言語の開発および標準的算定ソフトウエアの自動生成システムの研究開発(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200101189A
報告書区分
総括
研究課題名
保険診療点数算定基準の電子的表現のための標準言語の開発および標準的算定ソフトウエアの自動生成システムの研究開発(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
大江 和彦(東京大学医学)
研究分担者(所属機関)
  • 山下芳範(福井医科大学医学部附属病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、保険診療点数算定基準は各医療行為の点数と算定条件、例外条件、加算条件、包括条件など、およびそれらの解釈方法を説明した文章で記述されており、人が理解することを前提に作成されている。そのため、この基準をすべて満たすプログラムを作成することは極めて困難なソフトウエア開発作業であり、定期的な医療費改訂のたびに、膨大かつ極めて複雑なソフトウエア開発が必要となっている。さらに現在稼動している多くの保険診療点数算定ソフトウエアが、文章で書かれた保険診療点数算定基準を完全に満たしているのかどうかも検証する理論的な方法がない。そこで、保険診療点数算定基準と算定ロジックを、コンピュータが自動処理可能な、人工的な言語の文法と、表現(記述)方法を新しく開発することにより、複雑なロジックを、計算機処理可能な矛盾のないルールで記述する方法を確立することを第1の目的とする。これにより、医療改訂のロジックを論理的な曖昧性のない言語で表現し、正確に基準を伝えることが可能となる。次に、このように定式化されコンピュータ処理可能な記述による保険診療点数算定基準を使って、自動的に算定ソフトウエアを生成する方法論とそのためのソフトウエアを試験開発する。このソフトウエアが出力するソフトウエアは標準的な保険点数算定ソフトウエアとして利用することが可能であり、既存の保険点数算定ソフトウエアを検証するソフトウエアとしても利用可能となる。
研究方法
1)現在の、文章で記述された、保険診療点数算定基準を、各医療行為の点数と算定条件、例外条件、加算条件、包括条件、解釈方法など適用にあたっての影響の与え方を論理的に分析し、これらが表現できる新しい記述言語を、オブジェクトモデリングという情報工学技術を使用して分析することにより新規に開発する。2)開発した言語を用いて、現在の保険診療点数算定基準が完全に記述できることを、実際に記述作業を行うことにより、シミュレーションを繰り返し、実証する。問題点があれば言語の仕様の変更に反映させる。3)上記の記述言語にもとづいて、算定ソフトウエアを生成するソフトウエアのプロトタイプの仕様を作成する。昨年度は診療報酬点数早見表を分析しXML形式で表記する方法を開発した。今年度はこの記述方式をさらに洗練され効率のよいものとするため、ソフトウエア工学におけるデザインパターンの手法を導入し、算定ロジックパターン分析を行い、基本的なデザインパターンの組み合わせによりロジックと条件を表現できるかどうかを検証した。
結果と考察
現在の診療報酬点数算定基準は、抽象化されたわずか8種類程度のパターンのいずれかに分類でき、算定条件も6種類程度のパターンに分類できる。従って、すべての算定基準をどの分類に適合したロジックであるかを割り当てることにより現在の一見複雑に見える算定ロジックは極めて見通しのよい形式で可視化できることが予想される。コンピュータプログラミングの世界ではデザインパターンと呼ばれる技術が導入されつつある。これは複雑なロジックからなる大規模プログラムであっても実は抽象化されたごくわずかのプログラムデザインパターンのいずれかの組み合わせにより表現でき、それを特化(具体化・複雑化)したものであることを利用して、プログラミングを見通しのよいものにする技術である。これと同様に診療報酬点数算定はデザインパターンをとりこんで単純化、構造化し、それから算定プログラムを生成することが可能であることがわかった。
結論
診療報酬算定ルールを10種以下の算定パターンと条
件パターンの組み合わせで表現できることがわかった。これにもとづいてデザインパターンを作成し、自動プログラミングが可能である。検査、処置、および基本診療料について試験的なプログラムを作成しそれを実証した。

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