文献情報
文献番号
200101188A
報告書区分
総括
研究課題名
診療施設間患者情報交換と情報収集形式の標準化に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
木村 通男(浜松医科大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
患者紹介時の診療情報交換は、定められた様式でほとんどの場合、手書きで詳細まで記入されている。診療中の手作業であるから、必然的に、その情報量は十分なものにはなりにくい。病院情報システムには処方内容、検査結果が電子的に保存されているので、これを電子的に受け渡しできれば、チーム医療として患者ケアの向上になる。しかしこの際に問題となるのが、病名、検査項目、検査部位等の記載である。チーム医療の職制それぞれに求められる記載の詳細度が異なる。本研究の成果により、一旦詳細な記述がなされれば、求められる詳細度に応じて、より簡単な記述等を自動で生成できるようになり、情報移転がスムースとなる。平成11年4月に、診療録の電子保存に関する通達が出て、今後、診療録内容を電子的に保持する施設が増加すると考えられる。その状態で、各施設バラバラな形式での処理が行なわれると、情報が交換困難になってしまう恐れがある。幸い本邦にも、HL7, DICOMといった医療用規格が定着しつつあるので、医療情報交換の基本である、こういった項目についてのよい記述形式、変換機能を定めることが、本研究が急がれる理由である。また、平成11年度の厚生省から(財)医療情報システム開発センターへの委託事業に、データ項目セット検討があるが、そこでは、患者情報交換の基盤となる大きな分類の記述項目が定められ、専門的なニーズのための詳細については個別の検討に任されている。本研究の2、3年目では、この事業の成果を基盤とし、その上で、必要な詳細を定める。これにより、大規模な浅いものでも、専門的なものでも、ともに対応出来る病院情報システムの構築が可能となり、各種情報収集と分析に資する点が大である。
研究方法
診療報酬請求病名集の一つであるMEDIS病名集は、構造は平板であるが、各分野の専門家が追加しただけあって、様々な病名が収採されている。現状では、MEDIS病名集からICD-10および診療報酬請求病名集に対して、1対1対応するもののみ対応が記述されている。本研究では、これに足して、相手の上位概念へのリンクも作成する。これにより、バラエティの多いMEDIS病名集から、他の2つの病名集へ必ず対応を付けることが出来ることとなり、詳細な記述が必要な場合は、MEDIS病名集などを使い、統計的データ収集や、診療報酬請求等の用途には、詳細病名をそれぞれ必要な記述の詳細度に変更して用いることができるようになる。初年度には、このリンクのためのデータ構造、補助語などの扱いなどについても検討をおこなった結果、病院情報システムとして持つべき病名等の形式が明らかになった。本年度では、診療情報提供紹介状・逆紹介状を基本に置き、これを、付随する検査結果、処方歴、画像、各種レポートなどとともに、診療施設間で電子的に情報交換する方法について検討した。すでに一般的な紹介状形式については、申請者の過去の厚生科学研究費により実装までおこなわれているので、特定の専門臨床領域での患者情報交換とデータ収集を念頭に置いた。申請者の研究協力者に糖尿病の専門医グループに属する研究者がおり、この協力を得て、専門領域としてはまず糖尿病の管理を考えた。そのため、まず、どのようなデータ形式で上記各要素を表現するかを検討し、その結果を規格とする。初年度の、病名についての成果がここで利用される。次に、これらの情報を実際の病院情報システムを使っての業務の流れのなかで、簡単に電子化紹介状を作成するためのエディタを試作し、組み込む。最後に、これによって作成された電子化紹介 状を受けた診療施設側が、これを見て、願わくば病歴に加えるためのPC上のブラウザを作成する。
これらは一般的な紹介状としてはすでに実績がある。本研究は、個人情報を含む保健医療福祉情報のプライバシー保護等を確保することも含めた情報伝達(情報交換)の方法を目的として行った。研究推進に当たって人や動物等を直接対象とすることは、無かったため、倫理面における新たな問題を発生することはなかった。
これらは一般的な紹介状としてはすでに実績がある。本研究は、個人情報を含む保健医療福祉情報のプライバシー保護等を確保することも含めた情報伝達(情報交換)の方法を目的として行った。研究推進に当たって人や動物等を直接対象とすることは、無かったため、倫理面における新たな問題を発生することはなかった。
結果と考察
まず、初年度におこなった研究成果であるJJ1017コード(画像検査項目コード)について、内外からの意見を集約し、その結果をJJ1017ガイドラインとして 英文も含めて作成した。また、MEDIS-DCから出された、電子化された診療情報交換のための項目コード集(J-MIX)に準拠する形で、MERIT-9紹介状XML-DTDおよびXMLスキーマを作成し、MERIT-9 v.2とした。最後に、糖尿病分野で実際に用いられているさまざまなデータ交換形式を収集、分析をおこない、次年度に向けての基礎情報を収集した。JJ1017ガイドラインおよびJJ1017コードは、日本ラジオロジー協会主催のコンベンション(2学会合同)における、画像システムと病院情報システムの連携デモ(IHE-J)で用いられた。その内容は工業会のホームページで公開されており、英語版はDICOM委員会へ提出された。このコードはHELICS協議会(医療情報標準化推進協議会)の認定を受ける準備が進んでいる。また、主任研究者がちょうど画像関連コードのWGの長を務めるMEDIS-DCの標準化委員会でも、画像検査用コードとして提出する予定である。J-MIX準拠としたMERIT-9紹介状v.2は、浜松医科大学医療情報部のホームページで公開されているが、これを用いて実際の病診連携をおこなう例がすでにある群馬大学病院では試験的使用がすすんでおり、またこれを実装し商品とした企業も出現している。
結論
MERIT-9紹介状のJ-MIX準拠については、単純に置き換えが可能なものがほとんどであったが、J-MIXそのものが構造を持つ場合があり(例えば患者氏名や住所など)これらをどれほど再使用可能な形で取りこむかについて議論があった。結論としては、XMLスキーマをある程度利用することによって、少数の基本的な情報については、そのまま取りこんだ。糖尿病については、CoDiCと呼ばれる、メーカ(Novo)が主導のもの、国立京都病院を中心として数多く症例を集めようとするもの、などについて内容を検討した。結論としては、やはりそれぞれは独自の目的、使われ方(ユースケース)のためのものであり(例えば、患者情報の病診連携、集学的研究、、)ユースケースが定まらない限り、ことごとくの所見などを標準化することは、不可能であるだけでなく、あまり意味が無い、ということであった。そういう画一化よりも、検査結果、処方内容などは基本としてHL7形式などを用いて標準化したものを基礎として、その上にそれぞれの目的用の詳細な追加する、という方法が望ましい、ということがあきらかになった。この、階層的な詳細の積み上げは、HL7 CDA(Clinical Document Architecture)(臨床情報の構造、であり、HL7の電子カルテ形式、とも言われる)と全く同じである。来年度はこれをCDA準拠とする予定である。本研究推進において、生命、健康に重大な影響を及ぼすと考えられる新たな問題及び情報はなかった。
公開日・更新日
公開日
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