アウトカムによるリハビリテーション病院の機能評価に関する研究開発(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200101184A
報告書区分
総括
研究課題名
アウトカムによるリハビリテーション病院の機能評価に関する研究開発(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
木村 哲彦(日本医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤高司(日本医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
病気になった時に、より良質な医療サービスを受けたいという気持ちは、国民が皆等しく願う思いである。特にわが国のように診療報酬体系によって、診療に関する価格が決まっている場合、個々の医療機関の差別化は、より良質な医療を提供できるかどうかに関わっていると言える。A. Donabedianによる医療の質評価の先駆的な仕事により、医療の質を評価するアプローチとして、「構造」・「過程」・「結果」の3つの評価アプローチが提唱されている。このような評価方法の内、「構造」評価は最も容易であるため、第三者評価の方法として古くから採用されてきた。米国のJCAHO(Joint Commission on Accreditation of Healthcare Organization)においても評価の中心は「構造」である。私どもは医療機関の第三者評価をわが国に導入するために、1990年に『医療の質に関する研究会』を組織し、第三者評価の実践的研究開発を行ってきた。私どもの実践は、(財)日本医療機能評価機構の病院認定事業に活かされている。しかし、『医療の質に関する研究会』にしても(財)日本医療機能評価機構にしても、その評価判定基準は、医療機関の「構造」評価を中心としたものである。「結果」による評価、即ち「アウトカム評価」は「構造評価」に較べて技術的な困難さを伴うものであるが、その評価は患者にとって当該医療機関のperformanceの良否を示す最も直接的な指標と考えられる。
客観性のある科学的に妥当な分析方法によって得られたアウトカム評価によって、低い評価結果が示された医療機関においては、アウトカム評価を改善するためのプロセスの問題点の追及・原因分析・対策立案が行われることになる。このようなPDCAサイクルによる改善は品質改善の分野で提唱実践されてきたが、医療の分野でPDCAサイクルが動くのは「構造評価」ではなく「アウトカム評価」か「プロセス評価」においてのみである。何故なら、「構造評価」では原因追求が困難であるだけでなく、構造を変えることが品質の改善を保証しないためである。このため、わが国おいては、真の品質改善は医療の世界に存在しなかったが、アウトカム評価の確立により品質改善が導入されることになる。
一方、医療機関の評価に関してリハビリテーション医療はどのような現状であろうか。米国においては、JCAHOとは別組織のCARF (Commission on Accreditation of Rehabilitation Facilities)がリハビリテーション病院の認定事業を展開している。わが国のリハビリテーション病院評価は(財)日本医療機能評価機構の病院認定事業の中で行われているが、評価内容は十分なものではなく、リハビリテーション病院(病棟)の質を保証するものとは言いがたいのが現状であろう。また、『医療の質に関する研究会』が一般病院の機能評価用に開発した『病院機能評価スタンダード』では、リハビリテーション病院(病棟)の評価は欠落していた。以上のような現状の下に、私どもは次の2点について研究開発するため厚生科学研究『アウトカムによるリハビリテーション病院の機能評価に関する研究開発』を平成12年度から行っている。
(1) アウトカム評価の方法論を確立し、リハビリテーション病院のperformance測定の実行可能性を検証する。
(2) リハビリテーション病院の構造評価のための評価スタンダードを開発し、病院の評価に実地応用する。
上記目的のために以下の研究を行った。
研究方法
【Ⅰ. アウトカム評価の研究開発】
アウトカム評価の研究開発は、共同研究者の太田久彦を中心に、主任研究者木村哲彦、共同研究者小林順子、陶山哲夫、高橋邦泰、草野修輔から成る開発チームにより検討された。
リハビリテーションのアウトカム評価に関して、評価の対象疾患をリハビリテーションの代表的内科疾患である脳卒中とし、評価するアウトカムを身体機能アウトカムとした。実際のアウトカム指標として、脳卒中の退院時の日常生活活動(動作) Activity of Daily Living (ADL)を取り上げた。退院時のADLをアウトカム指標としたのは、脳卒中の患者にとってADLの回復が最も直接的な治療成績に他ならないからである。
平成12年度のパイロットスタディーでは、本研究に参加した急性期病院3病院とリハビリテーション病院2病院を共同研究者の太田が訪問して、同年4月から10月までに脳卒中で入院し、リハビリテーション治療を受けた患者のデータを収集しデータベースを構築した。
平成13年度は、次の研究を行った。
(1) Retrospective study
平成13年度のアウトカム評価においては、平成12年度の調査の経験を踏まえて、新しい調査票を作成し、この調査票を元に調査を行った。調査参加病院は新規に募り、3病院が参加した:K病院(千葉県、医療法人、784床)、H病院(茨城県、医療法人、485床)、S病院(長野県、公立、980床)。
(2) Prospective study
平成13年度は、上記のretrospective studyに加えて、新規に脳卒中で参加病院のリハビリテーション科に入院した患者のデータを前向きに調査する事業を開始した。Prospective studyを行ったのは、retrospective studyでは、どうしても調査票の調査項目に制限が生じてしまい、リスク調整方法に限界がでてしまうためである。平成12年度のパイロットスタディーに参加した2病院に新規に1病院が参加して現在稼動中である:O病院(東京都、市町村立、床)、K病院(東京都、医療法人、329床)、S病院(静岡県、社会福祉法人、758床)。
(3) リスク調整方法の研究
客観的に妥当なアウトカム評価のためには、適切なリスク調整方法を用いた分析が不可欠である。平成13年度は、このような科学的に妥当な方法を検討するため、ボストン大学経営学部に滞在して分析手法の検討を行った。
【Ⅱ.評価スタンダード開発】
リハビリテーション病院評価スタンダードは、木村哲彦主任研究者を筆頭に次のメンバーの共同作業により開発された:太田久彦、小林順子、陶山哲夫、高橋邦泰、草野修輔、及川忠人、大田仁史、長谷川 幹、比留間ちづ子、羽生耀子、橋谷美智子、園田啓示。評価スタンダードの開発に当たっては、"JCAHO: 1998 Hospital Accreditation Standards"と "CARF: 2001 Medical Rehabilitation Standards Manual"の米国のスタンダードとわが国の「リハビリテーション機能評価表Version 3.0(日本リハビリテーション病院施設協会)」を参考にした。平成12年度の段階で評価項目が策定された。
平成13年度は、各評価項目に対して、評点基準が策定され、「リハビリテーション病院機能評価スタンダードversion 1.0」が完成した。更に、この評価スタンダードをサーベイヤーが病院サーベイの際に使い易いようにメモを付した「サーベイヤー・マニュアル」を作成した。
(倫理面への配慮)
Retrospective studyのデータは、退院した患者の診療記録を閲覧して、情報を調査票に記入する形式である。調査票には病院名と患者氏名及び病院の患者IDを記入せず、別個のIDのみを調査票に付した。このIDと患者を対応させる照合キーは調査者が所有せず、病院の診療録管理者が管理する。このような手順で、情報の非連結匿名性を確保した。また、データベースを構築するコンピュータは、スタンドアロン機器とし、外部からの進入が不可能なものとした。Prospective studyに関しては、入院してから退院するまでの患者情報の記入は、リハビリテーション科の主治医が担当する。調査票には病院名、患者氏名、患者IDを記入せず、個人情報を除くデータの記入が終了した段階で、主治医が郵送で調査者のもとに送付することとする。従って、研究者が受け取る情報は、非連結匿名性の確保された個人情報ではないデータである。
評価スタンダードによる病院評価については、患者の個人情報が病院評価に繋がるものではない。評価の過程で患者の診療記録を閲覧する場合は、病院管理者によって患者の個人名を伏せ、サーベイヤーには個人名が分からないように処理した診療記録のみを閲覧した。
結果と考察
【Ⅰ. アウトカム評価の研究開発】
(1) Retrospective study
新しい調査票による脳卒中リハビリテーションの治療成績の収集が、新規に調査に参加した3病院にて行われた。データ収集が遅れたことと、下記に述べる分析手法の検討が、平成12年度のデータベースのデータを元に行われたことから、本報告における統計的分析は、平成12年度のデータを対象とし、平成13年度のデータに関しては、現在データが集積中であることを述べるに留める。
(2) Prospective study
Prospective study用の調査票が平成13年12月に完成し、新規入院患者の登録が平成14年1月から始まっている。現在、S病院6件、O病院1件、K病院0件の合計7件の症例が登録されている。Prospective studyに関しても、分析は症例の蓄積を待って行うことになる。
(3) リスク調整方法の研究
平成12年度の報告では、リスク調整のアウトカム評価の方法として病院をカテゴリー変数として病院間によるアウトカム(脳卒中患者の退院時のADLスコア)の違いをオッズ比として算出した。しかし、このような方法はアウトカム評価として一般的に行われている方法ではない。アウトカム評価が患者や保険者による病院の選択の手段として積極的に行われている米国において、一般的に行われている分析手法は、Lisa IezzoniとMichael Shwartzによって開発された。彼らによって提唱された一般的な分析手法を理解し、更に、オルターナティブな分析手法の可能性について検討するため、平成13年9月-10月の間ボストン大学経営学部経営管理学科に滞在し、Shwartz教授、Restuccia教授と分析手法の検討を行った。
一般的なリスク調整アウトカム評価法としては、従属変数であるアウトカム指標データが間隔尺度データの場合は、重回帰分析による回帰式(予測式)を求める。アウトカム指標が2値の場合は、判別分析或いはロジスティック回帰分析にて回帰式(予測式)を求める。次に、このようにして得られたモデルがアウトカムを正しく予測できるかどうかを検討することになる。予測能力の検討として、(1)Model discrimination、(2)Model calibration、(3)Cross validationを行う。この3段階の検討にて、予測能力が保証された予測回帰式を元に患者個人個人の予測アウトカムと実測アウトカムを比較する。この際2値データの場合は、二項分布をモデルに95%信頼限界を求める。
以上の一般的方法とは異なる分析方法としては、非線形多変量解析法やベイズ法に基ずく分析法があるが、これらについては平成13年度中には検討する時間が得られず、平成14年度に向けての課題となった。
平成12年度に作ったパイロットスタディーのデータベースを元に一般的な分析法による病院のアウトカム評価を行った。統計学的手法としてロジスティック回帰分析を用いたため、従属変数を2値化する必要がある。このため、まず、アウトカム指標の退院時Barthel Indexを85点以上と85点未満で2値化した。Barthel Index 85点を採用したのは、85点では、日常生活活動(動作)の内、入浴と階段昇降の他に整容か更衣で少し介助を要する段階であるため、ほぼ生活が自立していることになるが、85点未満では何らかの介助を必要とする場面存在することになる。即ち、日常生活の自立が達成できたどうかを治療成績の良否の判断基準とした。85点で2値化した退院時Barthel Indexを従属変数とし、説明変数として投入するリスク要因の選択は、カテゴリ変数についてはχ2乗検討を行って、p<0.2以下の説明変数をリスク要因とした。連続変数に関しては積率相関係数を求め、p<0.05の説明変数をリスク要因として分析対象とした。リスク要因として投入された説明変数は、「未婚・既婚」(図1)、「配偶者の有無」(図2)、「脳出血or脳梗塞」(図3)、「意識障害」(図4)、「視野欠損(評価不能)」(図5)、「患側上肢麻痺」(図6)、「健側上肢麻痺」(図7)、「患側下肢麻痺」(図8)、「失調(評価不能)」(図9)、「感覚障害(評価不能)」(図10)、「失認」(図11)、「失認(評価不能)」(図12)、「構音障害(評価不能)」(図13)、「高血圧合併」(図14)、「心房細動合併」(図15)、「痴呆の合併」(図16)、「入院中の合併症」(図17)、「年齢」、「脈拍数」、「入院一週間目のBarthel Index」(表1)であった。以上のリスク要因をもとに、ロジスティック回帰分析(変数増加ステップワイズ法)にて回帰式を求めた結果、表2の4つの変数が選択された:「入院1週間目のBarthel index」、「脳出血」、「感覚障害」、「失認(評価不能)」。これらの変数から得た回帰式を用いたモデルの予測能力の成績は表2(下段)に示したように、c statistic 0.901、calibration (Hosmer-Lemeshor) 3.734、cross validation 0.788であり、優れたモデルであることが示された。このモデルから得られた期待値(95%信頼限界)と実測値を図17に示した。一病院では、期待値域0.27~0.52、実測値0.54であり、期待以上の治療成績が上がっていたが、一方、他病院では、期待値域0.47~0.66、実測値0.45で期待値よりも劣った治療成績となっていた。
以上の検討は、脳卒中の退院時のADLをBarthel index 85点で2値化した場合のものであり、これ以外のADLの点数で2値化した場合について以下のような検討を加えた。Barthel index 80点で2値化した場合のリスク要因では、「紹介病院の有無」が加わった(図18)。これらのリスク要因の中から選択された説明変数を表3に示した。Barthel index 80点では、「入院1週間目のBarthel index」、「紹介病院の有無」、「感覚障害(評価不能)」が選択された。この3変数により作られたモデルの予測能力の成績は、表3下段に示した。c statistic 0.765、calibration 4.245、cross validation 0.82とやはり優れたモデルであることが示された。このモデルから得られた期待値と実測値を図19に示した。一病院では、期待値域0.33~0.593、実測値0.594であり、期待以上の治療成績が上がっていたが、一方、他病院では、期待値域0.46~0.66、実測値0.45で期待値よりも劣った治療成績となっていた。Barthel index 80点で2値化しても、Barhtel index 85点で2値化した場合と同様にHospital 0の成績は期待以上に優れており、Hospital 1の成績は期待よりも下回っていた。
次に、Barthel index 75点で2値化した場合について示す。この場合、ロジスティック回帰分析で選択された説明変数は、80点の時の同様に「入院1週間目のBarthel index」、「紹介病院の有無」、「感覚障害(評価不能)」であった。この3変数により作られたモデルの予測能力の成績は、表4下段に示した。c statistic 0.887、calibration 4.337、cross validation 0.718とやはり優れたモデルであることが示された。このモデルから得られた期待値と実測値を図20に示した。一病院では、期待値域0.36~0.62、実測値0.59であり、治療成績は期待値の範囲内であった。一方、他病院では、期待値域0.48~0.67、実測値0.50でやはり期待の範囲内に治療成績は収まっていた。Barthel index 75点での2値化では、Barhtel index 85点、80点での2値化した場合と異なり、2つの病院の治療成績は、期待値の範囲内であったが、Hospital 0の成績は期待の中で優れており、Hospital 1の成績は期待期待値の中で、やや劣っている傾向が見られた。
【Ⅱ.評価スタンダード】
これまでわが国に存在した病院評価スタンダードは、病院の構造そのものを評価するものがほとんどであった。私どもの開発した「リハビリテーション病院機能評価スタンダード」においては、構造評価に加えて次の4つの機能を評価している:①リハビリテーション専門職者のリハビリテーション・マインド、②リハビリテーション・チームの協働、③地域連携(ネットワーク)、④リハビリテーションにおける評価と計画。これらの機能評価項目と構造評価項目を盛り込んだスタンダードの基本構成に関して、平成12年度までに評価項目の策定が終わっていた。平成13年度は、各評価項目に評点(スコア)を付けるための評点基準をつける作業が行われた。スコアは全ての4桁項目がa,b,cの3段階で評価を行うこととした。作業班による評点基準原案の策定の後、全員による検討会を経て、『リハビリテーション病院機能評価スタンダード version 1.0』が平成13年8月に完成した。このスタンダードは、リハビリテーション病院(病棟)の第三者評価及び病院の自己評価用に開発されたが、サーベイヤーが実地の病院サーベイにおいて活用するための言わば『サーベイヤー用マニュアル』とも言うべき評価用ヒント付きのサーベイヤー用『リハビリテーション病院機能評価スタンダード』が引き続いて開発され、同年12月に完成した。
このスタンダードを用いた病院サーベイが、平成14年1月25日に河北リハビリテーション病院において実施された。また、同年2月13日に竹田綜合病院において実施された。スタンダードの実地運用の経験からスタンダードの問題点が指摘され、平成14年度中に改訂を行う計画が現在進行している。改訂版は書籍として上梓する予定である。
結論
【Ⅰ.アウトカム評価】
日常生活活動(動作)の自立を指標としたアウトカム評価では、ロジスティック回帰分析を用いてモデルを得た。このモデルは、リスク要因によるアウトカムを十分に予測する能力を有していることが、discrimination, calibration, cross validationの結果から判明した。今回のモデルでは、アウトカム指標として、脳卒中リハビリテーションの退院時ADLを取り上げ、Barthel indexとして85点、80点、75点の3つのADLレベルで検討した。その結果、今回の研究に参加した2病院のうち、ADLレベル85点と80点での分析では、一病院では治療成績が期待値よりも有意に優っていたが、残りの病院では、治療成績が期待値よりも有意に劣っていた。ADLレベル75点での分析では2病院とも期待値の範囲内に治療成績が入っていたが、85点、80点での分析と同様に一病院では治療成績がよい傾向であり、他病院では治療成績が悪い傾向にあった。
リスク要因による回帰モデルが実際の現象をすべて説明できる訳ではないが、今回の研究で、治療成績が期待値を下回っていた病院では、その原因がなんであるのかの検討が加えられる必要がある。
製造業においては、消費者の手に渡る製品の品質を良好な状態に維持することは会社の発展・衰退の鍵となる。病院における品質とは治療成績である。これからは、病院においても製造業と同様に、その品質によって消費者(患者)が病院を選択できるような情報を提供することが求められるようになるであろう。しかし、これまでわが国の病院の評価については、構造評価のみが行われてきており、治療成績のようなアウトカム評価は行われてこなかった。今後の病院の評価においては病院のperformanceを示すことになるアウトカム評価が必須である。ただし、後述するように、構造評価は軽んじられてはならず、アウトカム評価とは別個にその存在意義を有しなければならない。
しかし、私どもがここで特に強調したいのは、アウトカム評価の場合でも、単に評価結果を病院に提示するだけでは、それは単なる病院の格付けを行うに過ぎないものであって、病院に対して何らの前向きの効果をもたらさないということである。私どもの研究が目指すものは病院の格付けではなく、病院における品質改善である。アウトカム評価の結果も、品質改善に役立つものでなければならない。平成14年度は、本研究と併行してアウトカム評価結果からの品質改善のための原因分析を行う研究を立ち上げる予定である。
【Ⅱ.評価スタンダード】
私どもが開発した『リハビリテーション病院機能評価スタンダード』は病院の構造評価に加えて「リハビリテーション・マインド」・「チームの協働」・「地域連携」・「評価と計画」の4つのリハビリテーション機能の評価を盛り込んでいる。スタンダードによるプロセスの評価には限界があるものの、構造だけの評価にとどまらずに今後の改訂作業で、積極的に診療プロセスの評価を行う方向で発展させてゆく方針である。また、評価スタンダードは、それに基づいた自己評価・自己診断ができると、病院の自己改善努力が促されることになる。平成14年度には、『リハビリテーション病院機能評価スタンダード』を出版し、自己評価・自己診断を可能とする計画である。
E.結論
リハビリテーション病院のアウトカム評価は、一般急性期病院の脳卒中のリハビリテーション治療成績をアウトカム指標にした平成13年度の研究の結果、その実行可能性が確認された。平成14年度は、新しいデータシートをもとに構築している新規のデータベースでの評価を行うことになる。また、回復期のリハビリテーションを担当しているリハビリテーション病院のアウトカム評価を開始する。
アウトカム評価の方法論が確立しつつあるので、今後はスタンダードによる評価を行う病院でアウトカム評価が行えるような病院ごとのデータベースの構築が行えるような評価システムの開発が求められる。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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