今後の歯科技工士に対する養成方策等に関する総合的研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200101178A
報告書区分
総括
研究課題名
今後の歯科技工士に対する養成方策等に関する総合的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 嘉一(日本歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 鳥山佳則(東京医科歯科大学歯学部附属病院総合診断部)
  • 佐藤温重(明倫短期大学)
  • 末瀬一彦(大阪歯科大学歯科技工士専門学校)
  • 田上順次(東京医科歯科大学大学院)
  • 五十嵐孝義(日本大学歯学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、高度・最新の知識および技術を必要とする歯科技工が一般歯科治療においても急速に普及し、従来では想定されていなかった領域にまで需要が広がっている。しかしながら、こうした状況変化に十分に対応する教育が行われていないのが現状であり、環境変化や社会的要請に対応したカリキュラムを構築し、それに基づいた効果的な教育を展開していくことが早急に必要になっている。このため本研究では歯科技工士学校養成所の現場で容易に適応が可能となるような教育内容,教授方法も含めた具体的な養成カリキュラムのモデルを提示すると共にその実施に必要な教員の質の確保対策等、基盤整備での対応策を検討することにより、時代の要請に適応した質の高い歯科技工士を確保し、適切な歯科技工物の安定的な供給に質することを目的とする。
研究方法
1.カリキュラムについて:全国の歯科技工士学校養成所72校の中から任意の8校を選び、その教務主任等からヒアリングを行った。厚生労働省の「歯科技工士の養成の在り方等に関する検討会」で示された「歯科技工士養成施設における大綱化された教育内容」と平成12年度の本研究において構築されたカリキュラムモデルプランについて、その実施の可能性及び問題点等を中心に精査を行った。2.歯科技工士試験について:全国の歯科技工士学校養成所72校の教務主任に、平成12年度に実施された歯科技工士試験についてアンケート調査を実施した。3.教員養成システム等の養成基盤整備に関する検討について:全国の歯科技工士学校養成所72校の教務主任にアンケート調査を実施した。
結果と考察
1.カリキュラムモデルについて(1)基礎分野(現行該当科目:外国語,造形美術概論):1)2年制の実施案では、倫理学等の新設科目が挙げられた。2)3年制の実施案では、現行科目は2年制より内容を拡充する他、倫理学,保健体育,経営学等の新設科目が挙げられた。(2)専門基礎分野:A.歯科技工と歯科医療(現行該当科目:歯科技工学概論,関係法規):1)2年制の実施案では、品質管理・作業環境衛生等の内容拡充が望ましい。2)3年制の実施案では、現行の内容拡充のほか、品質管理学等の新設科目が挙げられた。B.歯・口腔の構造と機能(現行該当科目:歯の解剖学,顎口腔機能学):1)2年制の実施案では、歯周及び口腔を加えた内容拡充が望ましい。2)3年制の実施案では、審美歯科技工学等の新設科目が挙げられた。C.歯科材料・歯科技工機器と加工技術(現行該当科目:歯科理工学):1)2年制の実施案では、新素材や歯科材料の安全性を加えた内容拡充が望ましい。2)3年制の実施案では、現行の内容拡充で、歯科理工学と歯科技工機器学に分割するのが望ましく、またCADシステム工学,生体材料学等の新設科目が挙げられた。(3)専門分野:1)ヒアリング校8校の全科目中専門分野(有床義歯技工学,歯冠修復技工学,矯正歯科技工学,小児歯科技工学)の占める比率は現状では36.8~43.8%、大綱化された2年制に改正すると43.9~47.7%、3年制に改正すると39.4~48.4%になった。2)新設科目としては、高齢者歯科学,歯周病学,インプラント技工学,審美歯科学,顎顔面補綴学等が挙げられた。(4)歯科技工実習:1)臨床実習は、技術,知識,人間性・社会性の面から最善の授業科目である。2)歯科技工実習の内容は臨床模型,臨床的模型,臨床見学等がある。本研究では現状認識を目的として、本来あるべき姿を十分認識しながら敢えて具体的科目を挙げて、カリキュラム指針とした。その結果、現行科目に新設科目を追加することの必要
性が挙げられた。現在の教育内容でも過密といわれる中で、これらの内容を網羅する為には、養成年限を3年以上とする必要があると考える。一方、新設科目の導入については、今後実施可能性を十分に検討する必要があると思われる。2.歯科技工士試験について1)実施時期,受験料,出題数,出題形式は、都道府県によって大きく異なっていた。2)出題形式は○×方式が最も多かった。5)学説試験の所要時間は平均4.9時間であった。3)実地試験は全国統一であったが内容は都道府県により異なっていた。本調査結果から、各都道府県で行われている歯科技工士試験には、出題基準にも教科書にも記載されていないことが出題される場合があることが判明した。カリキュラムの構築に合せ、早い時期に出題基準の見直しを行い、歯科技工士試験が適切に行われるようにすべきである。学説試験と同様に、実地試験の見直し,客観的評価法についても科学的に研究を行い、早急にまとめる必要がある。3.教員について 専任教員457名、非常勤教員2019名、専任教員の大半は歯科技工士で、平均年齢は42.9歳、教員歴17年、担当教科数2.4教科で、91%が男性であった。教育者には年月で培われた豊富な経験が必要である一方、常に新しい情報にも敏感であることが求められており、さらに昨今教育機関各方面でその必要性が注目されている評価・点検等を含め、多方面にわたる研鑚が必要となり今後の重要な課題である。これらの点からも全技協等で行われている種々の教員研修で教員としての研修を受講し再履修することは大切なことと考えられる。しかし本調査結果から専任教員講習会,指導者講習会,実技研修会の受講歴のある教員はそれぞれ83%,73%,76%で、活用不足の感がある。
結論
「歯科技工士養成施設における大綱化された教育内容」の具体案については全国の歯科技工士学校養成所72校の中から8校を選び、アンケート調査,ヒアリングを行った。また、歯科技工士試験については全国の歯科技工士学校養成所72校の教務主任にアンケート調査を行った。これらの結果から、以下の結論を得た。1.カリキュラムについて1)2年制では、時間制から単位制への変更に伴い、内容拡充を行うが、科目は現行どおりである。2)3年制では現行の科目の拡大拡充に努め、基礎分野では倫理学,経営学,保健体育等が、専門基礎分野では品質管理学,審美歯科技工学,顎顔面技工学,CADシステム工学等が挙げられた。2.歯科技工実習について1)知識,技術,人間性・社会性のいずれの面においても歯科技工実習は最善の科目であり、3年制の実施にともない、歯科技工実習の時間を十分に確保することが可能となる。2)有効な歯科技工実習に際しては、診療機関や歯科技工所等の協力や教員の増員が必須であり、円滑な実施のためには関連諸団体の理解が必要である。3.歯科技工士試験について1)現行の学説試験は、出題基準に則って出題されていない場合があり、かつ出題数,出題内容にバラツキがある現状を鑑み、全国統一試験の実現を希望する意見が多い。2)現行の実地試験には、客観的採点基準がなくかつ、出題内容に問題点がある現状を鑑み、全国統一試験あるいは歯科技工士学校養成所で技能検定を行う等、実施方法の見直しを求める声が多い。4.教員について1)歯科技工士学校養成所1校当たりの教員数は専任教員が6.6人、非常勤教員は30.9人であった。2)専任教員は93%が歯科技工士で、平均で年齢は43歳、教員歴は17年、担当教科は2.4教科であった。3)専任教員の80%以上が、何らかの教員講習会に出席して研修を受けていた。

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