未成年者の喫煙及び飲酒行動に関連する環境要因についての研究

文献情報

文献番号
200101049A
報告書区分
総括
研究課題名
未成年者の喫煙及び飲酒行動に関連する環境要因についての研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
尾崎 米厚(鳥取大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根智史(国立公衆衛生院)
  • 福島哲仁(福岡大学医学部)
  • 谷畑健生(国立公衆衛生院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
7,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、わが国の未成年の喫煙行動や飲酒行動の実態とその関連要因およびそれらに影響を与えている環境要因を明らかにし、未成年者の喫煙対策,飲酒対策を効果的に推進する方策を提言することである。本研究の解析により,現在の未成年者の喫煙行動及び飲酒行動の実態が明らかになり、それらのハイリスクグループを特定でき、さらに関連要因や学校要因を明らかにすることで予防対策についての提言ができる。さらに、未成年者の飲酒及び喫煙行動に影響を与えるものとして特に広告とテレビドラマやコミック誌上での飲酒,喫煙シーンの取り扱いに的を絞り、それらの媒体別の量および内容を分析し、これらがどのように未成年者の飲酒及び喫煙行動に影響を与えているかを検討するこをと目的とする。本研究により未成年者の喫煙・飲酒行動に影響を及ぼしている社会的要因の問題点が明らかになるため、我が国において、どのような規制等の対策を講じるべきかという政策判断の極めて重要な判断材料を提供することになる。
研究方法
1年目は、2000年度に実施した中高生の喫煙および飲酒行動に関する全国調査のデータの詳細分析を実施する。詳細分析は,青少年の喫煙・飲酒行動の関連要因を明らかにする。諸外国の同様の調査結果と比較し,わが国の青少年の喫煙・飲酒行動に特徴的な関連要因を明らかにし、わが国に特有な対策を考察する.関連要因の解析方法は,層別解析から始め,多変量解析を実施し,交絡因子を調整する。2年目以降、たばこと酒の広告は、雑誌広告,新聞広告,交通広告(電車内)、街頭広告(東京の若者が集まる主な6地域)の調査を行う。雑誌や新聞については若者に良く読まれている雑誌(12誌)と主な新聞(4誌)を対象に15年間分全てのページの分析を行い,そこに掲載されていた全ての酒とたばこの広告の量的、質的面においての年次推移を解析するとともに、たばこのテレビCM中止等といった業界の自主規制との関連を見る。交通広告や街頭広告については毎月調査員が調査対象を分析して回る。これらの動向と、1996年度、2000年度の中高生の喫煙及び飲酒行動に関する全国調査の結果(喫煙や飲酒を経験した年次や喫煙銘柄)との関連を分析する。さらに、青少年によく視聴されているテレビドラマおよび青少年が良く読むコミック誌(業界の自主規制でたばこや酒の広告は掲載されていないもの)上での喫煙飲酒シーンの扱われ方についての分析を実施する.酒やたばこの取り扱われ方を、質的,量的に分析し,青少年の行動への影響を予測する。この分析結果を青少年がよく吸っている銘柄との関連も分析する。
結果と考察
①未成年者の喫煙及び飲酒行動に関連する要因についての分析:2000年度に実施された全国調査結果を詳細分析することにより、周囲の者の飲酒及び喫煙、生徒の生活習慣などの関連要因を検討した。月喫煙(この30日に1日でも喫煙した)に関連した要因は、友達の喫煙、喫煙の害がないと思っていること、兄弟姉妹の喫煙、母の喫煙(特に女子)等であった。相対危険度は、男子より女子で、中学より高校で高かった。生活習慣、学校生活の要因もモデルに含めると、上記に加えて、朝食をあまり食べないこと、高校ではさらに、クラブに積極的に参加しないこと、大学などへ進学希望が無いこと等が関連していた。睡眠障害やうつ傾向に関する項目の関連は、強くはなかった。月飲酒の関連要因も、喫煙の関連要因に類似していたが、相対危険度は喫煙のそれにくれべ小さく、男女差が小さく、中高の差(高校で相対危険度がやや高いが)も比較的小さかった。睡眠障害やうつ状態との関連も強くはなかった。1996年度調査との
比較を試みると、相対危険度の大きさやパターンはほとんど同じであった。飲酒の関連要因の関連度合いも、この96年と2000年度調査の間でほとんど差がなかった。
②1996年、親子3つ組調査の結果分析:1996年の全国調査と同時期に行っが未発表であった、生徒と父母への同時無記名調査の結果を分析した。生徒の回答による親の飲酒、喫煙状況は親の自己申告によるそれらと一致度がかなり高いこと、喫煙、飲酒とも親の影響を強く受けていること、しかし、親は自分の子だけは喫煙、飲酒をしていないと思っていること等が明らかとなったため、親への教育等を通しての、両親への関心を高める取り組みが急務といえる。
③未成年者の喫煙及び飲酒行動に影響を与える環境要因に関する調査:本年度は、飲酒に関する広告調査のうちテレビ広告の数量的分析を実施した。前年度録画してあった、2000年の3時期それぞれ1週間分の東京地区の民放各社における酒CMの分析を行い、ビール、発泡酒の広告件数が多いこと、8月初旬は発泡酒の広告件数が多いこと、平均1放送局1日23もの酒広告が流れること、昼過ぎるとすでに広告が流れ始め、夕方から深夜にかけて増加すること等が明らかになった。広告内容ものみやすさの強調、おいしさの強調、価格情報の提供があるものが目立った。
結論
青少年の飲酒、喫煙行動に関連する要因はかなり一定しており、2回の全国調査でも再現性が高かった。特に、周囲の者の飲酒及び喫煙行動などの影響を受けていることが推察された。親の関心の無さも大きな課題である。
酒のCMは分量も多く、放映時間帯も広く、未成年者への影響が危惧された。

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