インターネットおよび情報端末機器を用いた中高年期の健康づくり支援システムの開発

文献情報

文献番号
200101041A
報告書区分
総括
研究課題名
インターネットおよび情報端末機器を用いた中高年期の健康づくり支援システムの開発
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
新開 省二(東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 柴田博(桜美林大学)
  • 星旦二(東京都立大学)
  • 渡辺修一郎(東京都老人総合研究所)
  • 櫻井尚子(東京慈恵会医科大学)
  • 藤原佳典(東京都老人総合研究所)
  • 山田敦弘(日本総合研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成12年4月からスタートした第4次老人保健事業では、保健サービスの提供にあたり、住民一人ひとりのニーズの多様性と自主的なサービス選択を重視するという観点から、それぞれの地域の実情に即したアセスメント手法を活用し、個々のニーズに適合したサービスを体系的・総合的に提供することが基本的な柱に位置付けられている。本研究は、この第4次計画の保健サービスのあり方を具現化するための1つの具体的提案でもある。住民のライフスタイルや労働の多様化などに伴い、従来からの健康づくり事業への住民参加があまり進まない一方で、生活の場ではインターネットをはじめとした情報技術(IT)機器の普及が著しく、健康づくりの基盤となる住民の意識や知識、生活習慣の形成に、IT機器を介した情報提供が影響力を増しつつある。この状況の下、本研究では、インターネットや情報端末機器による中高年者の健康づくり支援システムを開発することを目的とする。時間や場所、対人関係の制限をあまり受けないIT機器は、住民(参加者)の生活習慣や健康に関わる情報を収集するシステムとして特に有用と考えられる。また、メンタルヘルスに関わる社会心理学的項目などは、面接調査よりもIT機器を介した情報収集の方が有利な側面もある。さらに、収集された情報を総合して、住民(参加者)の生活習慣の問題点や生活習慣病の危険因子等を分析し、健康づくりのためのアドバイスを即時に還元する手段としてもIT機器は有用性が高いものと考えられる。住民(参加者)が自己診断的に健康づくりのためのアドバイスを入手できる本システムは、住民(参加者)の健康・保健意識の向上にも役立つものと思われる。
研究方法
インターネット、携帯情報端末、およびタッチパネル式情報端末機器を用いて、住民(参加者)の生活習慣や健康に関わる情報を収集するシステムのプロトタイプを開発する。インターネットを用いたシステムは(株)東芝けあコミュティと、携帯情報端末を用いたシステムは(株)保健同人社と、また、タッチパネル式情報端末機器を用いたシステムは(株)新社開と、それぞれ共同して開発する。IT機器に搭載するコンテンツは、ヘルスアセスメント検討委員会が作成した「ヘルスアセスメントマニュアル」(2000年)をベースに、東京都老人総合研究所がこれまで地域住民を対象に行ってきた長期縦断研究の成果、さらに今回実施する生活機能、介護予防チェックリスト、および健康度自己評価の信頼性・妥当性の検討を踏まえて作成する。なお、生活機能の評価には老研式活動能力指標を用い、その信頼性は、某病院の外来に通院する高齢患者74人を対象とした2回のtest-retestの成績により検討する。また、介護予防チェックリスト16項目の妥当性は、70歳以上の地域在宅高齢者約1,000人を対象とした横断調査を行い、得られたデータから年齢・生活機能を外的基準として検討する。さらに、健康度自己評価は、地域特性の異なる二つの地域にすむ65歳以上の在宅高齢者約2,550人を対象とした横断調査を行い、健康度自己評価の年齢分布や関連要因における地域差を分析し、妥当性を検討する。インターネットを介する情報配信・収集システムについては、某大手企業を退職した高齢ボランティアを、電子メール群119名と郵便群83名の2群にわけ、約6か月間にわたって介入研究をおこない、その実用性を評価した。最後に、こうした健康づくり支援システムが、住民の主体的な保健行動を促す健康づくり活動のツールとして広く活
用されるための条件を明らかにするため、多摩市の高齢者実態調査や、事業所労働者を対象に行った健康学習の効果についての無作為化対照試験などから、ヘルスプロモーション理念や民間活力の活用の意義について検討する。
結果と考察
インターネット、携帯情報端末、およびタッチパネル式情報端末機器を用いて、住民(対象者)の生活習慣や健康に関わる情報を収集するシステムのプロトタイプを開発した。携帯情報端末を用いたシステムは、すでに訪問保健指導担当者からのヒアリングを実施し、その利点・欠点を整理している。これらシステムに搭載されたコンテンツのうち、生活機能(老研式活動能力指標)、介護予防チェックリスト16項目、および健康度自己評価については、信頼性、妥当性の検討を行った結果、測定誤差による変動は少なく、外的基準妥当性も確認することができた。インターネットを介する情報配信・収集システムは、対象者の偏りや個人情報の保護の面でいくつかの解決すべき課題があるが、時間、マンパワー、費用などの面から非常に有用な調査法であることや、高齢者に対する健康情報の伝達手段としても十分実用性があることがわかった。こうした健康づくり支援システムが、住民(参加者)の主体的な保健行動を促す健康づくり活動のツールとして広く活用されるには、ヘルスプロモーションの理念のもとに『健康日本21』で示された、住民参加・地域協働の体制で、地域での健康づくりを推進していくことが重要である。その際、時間や場所、対人関係の制限をあまり受けないIT機器は住民の生活習慣や健康に関わる情報を収集するシステムとして有用と考えられる。また、メンタルヘルスに関わる社会心理学的項目などは面接調査よりも、IT機器を介した情報収集の方が有利な側面もある。さらに、収集された情報を総合して、住民の生活習慣の問題点や生活習慣病の危険因子等を分析し、健康づくりのためのアドバイスを即時に還元する手段としてもIT機器は有用性が高いものと考えられる。今後予定されている、本システムの有用性や対費用効果などの検討により、その優れた点が裏づけされれば、各地の保健サービス拠点や産業保健現場などへの普及が将来的に期待される。
結論
インターネットおよび携帯情報端末、タッチパネル式情報端末機器を用いて、住民(対象者)の生活習慣や健康に関わる情報を収集するシステムのプロトタイプを開発した。今後、収集された情報を総合して、住民(対象者)の生活習慣の問題点や生活習慣病の危険因子等を分析し、健康づくりのためのアドバイスを即時に還元するシステムへと開発を進める予定である。本研究で開発されるシステムにより、健康づくりのための個別的な情報提供を中心とした健康づくり支援が期待される。

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