地方保健医療行政機関における健康危機管理のあり方についての実証的研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200101032A
報告書区分
総括
研究課題名
地方保健医療行政機関における健康危機管理のあり方についての実証的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
藤本 眞一(県立広島女子大学生活科学部人間福祉学科)
研究分担者(所属機関)
  • 小窪和博(岐阜県東濃地域保健所長)
  • 織田肇(大阪府立公衆衛生研究所副所長)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康危機管理に関しては、厚生行政に分類されるか否かにかかわらず、国民生活に直接影響を与える事件・事故がここ数年多発している。地方保健医療行政機関も、その本来の所管業務にかかわるものだけでなく、所管にとらわれず、あらゆる健康危機に的確に何らかの形で対応していく能力が国民から期待されている。そこで都道府県・指定都市・保健所設置市の本庁や、その出先機関である保健所を主体とした健康危機管理対応の在り方について研究することを本研究の目的とする。
研究方法
本研究は、3つの分野から構成される。①地方保健医療行政機関における一類感染症及び新感染症への対応実態とその権限についての研究は、健康危機として、ラッサ熱やエボラ出血熱等の患者発生時の健康危機管理対応として感染症予防法による一類感染症及び新感染症への対応の実態調査を行い、また権限の取扱いと保健所、特に福祉事務所等と統合された「統合組織」の権限のあり方について考察した。②保健所が使用する健康危機管理チェックリスト作成の試みは、地域における健康危機管理のあり方検討会のとりまとめた「地域における健康危機管理について~地域健康危機管理ガイドライン~」の現実的な使用を視野に入れて、その各論の内容を「危機発生時」と「平常時」に区分してチェックリストを作成することを試みた。③健康危機管理における地方衛生研究所の役割に関する研究は、地域における健康危機に際し、地方衛生研究所が迅速かつ的確に原因究明ができるように、平常時から検査などについてマニュアルを整備し、訓練を行い、問題点を明らかにしておくと同時に、情報入手の支援体制を整えておく必要があるため、a.検査方法の検討・整備、b.o157集団発生を事例として日米の疫学調査比較からみた今後の課題、c.情報入手を支援する危機管理ホームページの構築、以上の3研究について、実施した。
結果と考察
保健所などの出先機関の長に権限を事務委任させているかを、3事務権限について調査した結果、保健所長に委任されているところがほとんどであった。交通遮断のように、他の管轄区域に関わってくるような重要な権限に関しては知事のままとすることが適当であると考える。また、重大な感染症の対応実態は、一類感染症指定医療機関は12ヶ所しかなく、地域偏在もあるため、ブロック単位で全国的に均一に整備することが必要である。保健所が使用する健康危機管理チェックリスト作成については、マニュアルやチェックリストなどは「平常時の備え」にこそ有用性が大きい。また、健康危機発生時のチェックリストについてもっとも重要なことは、これらのチェックリストが保健所で実際に利用されるかどうかである。また、細菌や有害化学物質について、実際に測定・検討してマニュアル化を図った。すなわち、①2001年にバイオテロで問題が顕在化した炭疽菌、②血液中の鉛・クロム・水銀、③血液中メトヘモグロビン、④空気中有害化学物質(塩素ガス、シアン化水素、揮発性有機化合物類)の測定マニュアルを作成すると同時に、気中有害物質採取時の安全性確保のために、⑤防毒マスクや防護服などの着用についての手順や問題点を検討した。また、原因究明において重要な役割を果たす疫学解析のマニュアル化の過程において、o157集団発生の事例に日米の疫学調査の比較を行い、わが国の研究の問題点を探った。さらに、情報入手の支援として健康被害危機管理ホームページの構築を試みた。
結論
1.全国の保健所設置主体に対して、平成13年12月1日現在、各県市の首長(知事、市長、区長)の
権限の委任・専決状況及び重大な感染症が発生した際にどのような対応、対策を実施・検討しているかを調査した。その結果、重大な感染症発生時の代表的な3つの事務権限は保健所長に委任されているところがほとんどであった。また、一類感染症指定医療機関は12ヶ所しかなく、地域格差もあるため、ブロック単位で全国的に均一に整備することが必要である。2.「地域健康危機管理ガイドライン」の現実的な使用を視野に入れて、その各論の内容を「危機発生時」と「平常時」に区分して作成することを試みた。今後は、このリストを用いて、実際に保健所の現場で利用した上で改良を重ねていく予定である。3.健康危機管理における地方衛生研究所の役割を様々な側面から追求した結果、次の点が明らかになった。①これまで不備であった細菌や有害化学物質(炭疽菌、血液中の鉛・クロム・水銀、血液中メトヘモグロビン、塩素ガス、シアン化水素、揮発性有機化合物類)について、実際に測定・検討してマニュアル化を図った。②o157集団発生を事例に日米の疫学調査の比較を行い、わが国の研究の問題点を探った。③健康被害危機管理における情報入手の必要性に鑑み、情報入手の支援として、健康被害危機管理ホームページの構築を試みた。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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