健康日本21・歯の健康における健康指標の開発とその評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200101028A
報告書区分
総括
研究課題名
健康日本21・歯の健康における健康指標の開発とその評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
宮武 光吉(鶴見大学歯学部)
研究分担者(所属機関)
  • 安井利一(明海大学歯学部)
  • 尾崎哲則(日本大学歯学部)
  • 青山旬(国立公衆衛生院疫学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康日本21が策定され、都道府県においても地方計画の策定が進んでいる。我々が以前に実施した厚生科学研究において都道府県および市町村における歯科保健事業の実施状況、歯科保健に従事するマンパワーや施設などには格差があった。そこで今回は、都道府県において策定された健康日本21地方計画の中で、歯の健康の計画内容や目標設定について調査、分析することを目的とする。
研究方法
1)地方計画の収集:都道府県庁の健康日本21地方計画策定担当課長宛に、地方計画および歯科保健計画、現状値の評価に用いた調査報告について送付を依頼した。
2)地方計画・歯の健康における目標の分析:国の健康指標およびリスク低減目標ごとに、地方計画から一致する項目について項目の有無、現状値の把握、目標値などについて抽出し、資料を作成した。
3)歯科保健計画指標の検討:地域計画の記載内容から、ライフステージ別、目標値の種類別に集計し、都道府県単位での記載数を分析した。
4)歯科保健計画指標の適合性評価のための検討:健康指標やリスク低減目標のうち、評価指標が都道府県間で異なる可能性がある歯の保有状況について、同一地域で複数の調査を実施した結果について検討した。
5)歯科保健に関する既存統計の収集分析:健康日本21策定以降で発表された歯科保健に関する統計から、現状値の算出を行い、並びに歯科に関するニーズとディマンドについて検討を行った。
結果と考察
1)地方計画の収集:年度末までに計画書の印刷ができたものを入手し、すでに在庫の少ない場合は、コピーの他、ホームページから計画書そのもの(pdfファイル)あるいはホームページ情報を入手した。印刷されていない2県をのぞいて、45県の地方計画が入手できた。ただし、1県については、15年までの計画があるため、2010年目標は設定されていない場合があった。
2)目標の分析:地方計画にある歯の健康の目標について、すべての項目を入力し、データベースとした。その中から、国の設定目標と同様の目標について分析した。健康指標は、項目により29~44県が数値目標を設定していた。リスク低減目標については15~21県が数値目標を設定していた。
3)歯科保健計画指標の検討:地方計画の目標をライフステージ、目標の種類別に集計を行った。乳幼児期、学齢期の記載率がたかった。成人期、高齢期になるに従い、記載率がやや低くなった。健康指標はすべての都道府県で記載されており、リスク低減目標については40県が記載していた。
4)評価指標の適合性の検討:東京都の調査報告から、東京都歯科疾患実態調査結果と東京都歯科診療所患者調査の20歯保有率を算出し比較した。65歳以上では患者調査の方が、20歯保有率が高かった。歯が多いことは、歯科受診の選択バイアスが考えられたことから、保健福祉動向調査から算出した歯の保有数別の過去1年歯科診療所受診率を用いて患者調査のデータを調整したところ、実態調査のデータよりやや高いものの、かなり近い値を示した。
健康日本21の地方計画は、ほとんどの都道府県において平成14年度内に策定されているが、年度末に策定されたものの一部は、計画書の印刷中であった。健康日本21の歯の計画は、ライフステージ別に健康指標とリスク低減目標を設定しており、多くの都道府県がこの様な形式を用いていた。一部は各論よりも、ライフステージ毎に詳しく記載するものもあった。
目標別に見たところ、既存資料から現状値を把握可能な、乳幼児期と学童期の健康指標については、現状、目標ともにほとんどの計画に盛り込まれていたが、成人期や高齢期の目標、特にリスク低減目標については、都道府県によって項目数、内容などに格差があった。現状値を把握するための調査資料についても収集をしており、調査方法や調査予算などを踏まえた分析をおこう必要があると考える。
乳幼児期と学齢期のデータに比べ、成人期や高齢期のデータ収集方法にも、違いがあることから、調査方法の違いによる現状値の比較可能性の検討も20歯以上保有者率について行ってみた。患者調査と実態調査の比較可能性を示すことができた。都道府県は、同じ調査を同じ対象に同じ方法で行うことで、健康状態の変化を把握できると考えら得るが、都道府県間の比較には問題が生じる可能性がある。歯周疾患の評価については、その進め方によりデータの比較ができない場合も考えられ、これらの点についても検討を進める必要があると思われる。
5)既存統計の収集分析:歯科疾患実態調査、保健福祉動向調査(歯科保健)、国民生活基礎調査、社会医療診療行為別調査報告、患者調査から、歯科に関するデータを得、時間的な変化をみた。性・年齢階級別に見ても、う蝕の減少、未処置歯数の減少、補綴を要するものの減少、現在歯数の増加がみられた。有訴者率に比べ通院者率が低く、実態調査でも把握できる未処置歯所有者がいることも示された。全国規模ではこの様な既存情報が使用できる可能性は示されたが、地方計画での使用は困難と考えられた。全国調査では、歯科保健のかなりの情報、特に住民側の自覚症状や受診行動のある部分を評価できる資料があったが、地域の情報として利用可能性は低いと思われた。従って、地方計画に伴い実施された歯科保健を含めた調査について、継続的に実施可能な対応を検討しておく必要があると思われる。
結論
都道府県より健康日本21地方計画を入手し、歯の健康に記載されている目標について分析した。健康日本21・歯の健康の項目と地方計画の目標について比較したところ、1)健康指標については、よく記載されており、現状値も比較できるものが多く、地域の現状にあわせて目標を設定していると思われた。2)リスク低減目標については、現状把握されてない項目もあり、都道府県での違いが大きかった。3)地方計画の健康指標は、ライフステージ、種類別に見ても多くの県で記載されていた。4)方法の異なる20歯保有者率を同一自治体のデータで比較したところ、歯の保有数別の歯科受診率を用いて調整できる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-