文献情報
文献番号
200101024A
報告書区分
総括
研究課題名
市町村の指標化された中長期サービス政策立案に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 啓(宮城大学)
研究分担者(所属機関)
- 加藤清司(福島県立医科大学)
- 安齋由貴子(宮城大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
市町村においての健康日本21を初めとする事業の評価指標をもった中長期保健サービス政策(計画)立案方法について多角的な研究は少なく、本研究は具体的な市町村における策定立案方法論の確立を目的とするものである。さらに、策定立案方法論は保健所の市町村への策定立案支援策としての活用も望まれことから、本研究では保健所における市町村支援策としての実用性と有効性についても検討を行なった。策定立案手法には、いわゆる住民参加および住民自主グループの育成が重要であることから、策定立案方法論の手技として、これら住民参加および住民自主グループの育成の活用についても検討した。
研究方法
本年度は3年計画の1年目であることから、1)市町村において実用的な策定手法の確立、2)保健所の市町村策定支援方法論の基礎調査、3)住民参加手法の分析、を行なった。1)については、宮城県の政令指定都市を除く全70市町村に健康日本21策定についてのアンケート調査を行ない、策定においての障害について分析した。その調査に基づいて、市町村において実用的と思われる策定立案方法について宮城県の6町村で実証研究を行なった。2)ついては、a) 福島県内全市町村を対象とした、保健計画策定上の問題点および保健所の支援に対する期待に関する質問紙調査、b) 保健所保健婦を対象とした保健所の市町村支援上の問題点に関する聞き取り調査、c) 健康日本21二次医療圏計画策定過程の観察による、保健所による町村支援の実証的調査、を行った。3)については、宮城県T町で住民参加による二つの事業を企画・運営した保健師に半構成的面接を行った。面接内容をコード化し、カテゴリー化行ない、どのような政策手法を用いているか"という視点で比較分析した。
結果と考察
1)市町村において実用的な策定手法の確立
宮城県全市町村(政令市を除く)のアンケート調査から、健康日本21策定立案の障害となるのは、計画に先行する調査の予算がないこと、特にアウトカム評価指標の設定が困難であること、計画策定段階における住民参加が難しいこと、の3点であることが判明した。そこで、本研究の策定立案方法論は、市町村においての汎用性を高めるために、新たな事前調査や分析を前提とせず既存事業の再編成を基本とし、評価指標についてはアウトカム(成果)指標のみならず、アウトプット(サービス投入量)も柔軟に活用する方法を開発した。さらに、住民参加については立案段階に拘らずに、立案後の住民周知を重視する方策をとり、市町村にとってより柔軟な立案方法になることを配慮した。策定手順としては、既存事業の体系化⇒優先順位付け⇒評価指標の設定⇒住民周知というものであり、6町村へ実際に大学側で策定支援の形で介入研究および宮城県保健所2ヶ所と市町村策定立案支援研修会を行なった。その結果、介入研究を行った宮城県6町村のうち5町村で健康日本21地方計画の立案が終了し、人口規模の大きな1町が策定立案中である。また、宮城県2ヶ所の保健所において共同で市町村策定支援を行なったが、これによって市町村策定立案支援策としても実用的であるこを明らかにした。宮城県内6町村の介入研究から以下のことが明らかとなった。すなわち、策定立案の事前調査を前提とせず、管内保健所のデータも含む既存のデータによる現行保健事業の再編成を基本とし(体系化)、5、10年後の方向付けを行ない(事業の優先順位決定)、アウトカム指標だけでなくアウトプット指標も柔軟に応用し(評価指標の設定)、策定立案後の住民周知を重視する(住民周知)、という一連の策定立案方法論は、汎用性が高く、どのような市町村でもあるいは保健所による市町村策定支援策としても応用が可能であった。今後はこの方法論をさらに効率的に展開するために、定型的なマニュアルあるいはガイドラインのような標準化を行なう予定である。
2)保健所の市町村策定支援方法論の基礎調査について
調査の結果、市町村側では「具体的な評価指標をもつ計画で、すでに策定している様々な計画と整合性を持つ」保健計画を希望していた。しかしながら、業務量が多い小規模の町村では、マンパワーの面からも時間の面からも余裕がなく、そのため保健所からのアドバイザーを含めた支援を求めていた。一方、保健所が市町村支援する場合の保健所の問題点として、保健所内の組織のあり方が特に課題であると保健所保健婦は認識していた。 福島県南会津保健所管内の健康日本21二次医療圏計画策定では、策定作業に町村職員を参加させることにより力量形成を図り、町村が独自の行動計画を追加するだけで市町村計画として利用することのできる二次医療圏計画とすることを前提に策定作業を進行中であり、新しい保健所の市町村支援方法と思われた。以上から保健所は、特に規模が小さく保健担当者の数が少ない町村を優先的に支援する必要がある。支援する保健所の機構として業務担当と地域担当の連携のあり方を検討するとともに、計画策定や地域づくり・ヘルスプロモーションといった地域担当保健婦のみに行われている研修を、全体を把握するために業務担当保健婦にも受講させることが必要であろうと思われた。今回のこのような結果が他の保健所でも共通する支援における機構の問題かどうかを、今後検証する必要があるだろう。
3)住民参加手法の分析について
その結果、一つの事例内容から148のコードがあがり、41の具体的な政策手法が見いだされ、さらに15の政策手法に分類された。他の事例においても、164のコードから、最終的に14の政策手法に分類された。両事例から共通しているのは段階的なステップであり、『地域住民の実態を把握して、対策の必要性を感じ、対策を思案する時期』、『対策案を実施して、事業が定着する時期』、『事業が発展、拡大する時期』の3つの時期が見いだされ、各時期については時期固有の政策手法が明らかとなった。以上から住民参加および自主グループ育成のプロセスには、3つの段階ステップが見いだされ、各時期については時期固有の政策手法が明らかとなったが、具体的な政策手法においては、二つの事例ではかなりの違いも見られた。そこで、今後はこれらの違いについて、分析する事例を増やし、かつ継続的な事例の分析から検証する必要がある。
宮城県全市町村(政令市を除く)のアンケート調査から、健康日本21策定立案の障害となるのは、計画に先行する調査の予算がないこと、特にアウトカム評価指標の設定が困難であること、計画策定段階における住民参加が難しいこと、の3点であることが判明した。そこで、本研究の策定立案方法論は、市町村においての汎用性を高めるために、新たな事前調査や分析を前提とせず既存事業の再編成を基本とし、評価指標についてはアウトカム(成果)指標のみならず、アウトプット(サービス投入量)も柔軟に活用する方法を開発した。さらに、住民参加については立案段階に拘らずに、立案後の住民周知を重視する方策をとり、市町村にとってより柔軟な立案方法になることを配慮した。策定手順としては、既存事業の体系化⇒優先順位付け⇒評価指標の設定⇒住民周知というものであり、6町村へ実際に大学側で策定支援の形で介入研究および宮城県保健所2ヶ所と市町村策定立案支援研修会を行なった。その結果、介入研究を行った宮城県6町村のうち5町村で健康日本21地方計画の立案が終了し、人口規模の大きな1町が策定立案中である。また、宮城県2ヶ所の保健所において共同で市町村策定支援を行なったが、これによって市町村策定立案支援策としても実用的であるこを明らかにした。宮城県内6町村の介入研究から以下のことが明らかとなった。すなわち、策定立案の事前調査を前提とせず、管内保健所のデータも含む既存のデータによる現行保健事業の再編成を基本とし(体系化)、5、10年後の方向付けを行ない(事業の優先順位決定)、アウトカム指標だけでなくアウトプット指標も柔軟に応用し(評価指標の設定)、策定立案後の住民周知を重視する(住民周知)、という一連の策定立案方法論は、汎用性が高く、どのような市町村でもあるいは保健所による市町村策定支援策としても応用が可能であった。今後はこの方法論をさらに効率的に展開するために、定型的なマニュアルあるいはガイドラインのような標準化を行なう予定である。
2)保健所の市町村策定支援方法論の基礎調査について
調査の結果、市町村側では「具体的な評価指標をもつ計画で、すでに策定している様々な計画と整合性を持つ」保健計画を希望していた。しかしながら、業務量が多い小規模の町村では、マンパワーの面からも時間の面からも余裕がなく、そのため保健所からのアドバイザーを含めた支援を求めていた。一方、保健所が市町村支援する場合の保健所の問題点として、保健所内の組織のあり方が特に課題であると保健所保健婦は認識していた。 福島県南会津保健所管内の健康日本21二次医療圏計画策定では、策定作業に町村職員を参加させることにより力量形成を図り、町村が独自の行動計画を追加するだけで市町村計画として利用することのできる二次医療圏計画とすることを前提に策定作業を進行中であり、新しい保健所の市町村支援方法と思われた。以上から保健所は、特に規模が小さく保健担当者の数が少ない町村を優先的に支援する必要がある。支援する保健所の機構として業務担当と地域担当の連携のあり方を検討するとともに、計画策定や地域づくり・ヘルスプロモーションといった地域担当保健婦のみに行われている研修を、全体を把握するために業務担当保健婦にも受講させることが必要であろうと思われた。今回のこのような結果が他の保健所でも共通する支援における機構の問題かどうかを、今後検証する必要があるだろう。
3)住民参加手法の分析について
その結果、一つの事例内容から148のコードがあがり、41の具体的な政策手法が見いだされ、さらに15の政策手法に分類された。他の事例においても、164のコードから、最終的に14の政策手法に分類された。両事例から共通しているのは段階的なステップであり、『地域住民の実態を把握して、対策の必要性を感じ、対策を思案する時期』、『対策案を実施して、事業が定着する時期』、『事業が発展、拡大する時期』の3つの時期が見いだされ、各時期については時期固有の政策手法が明らかとなった。以上から住民参加および自主グループ育成のプロセスには、3つの段階ステップが見いだされ、各時期については時期固有の政策手法が明らかとなったが、具体的な政策手法においては、二つの事例ではかなりの違いも見られた。そこで、今後はこれらの違いについて、分析する事例を増やし、かつ継続的な事例の分析から検証する必要がある。
結論
結語=1)市町村における策定立案方法論を確立した。 2)市町村への策定立案支援内容および対応する保健所組織の有り方を明らかにした。 3)住民参加おおび自主グループ育成の基礎的な分析が終了した。 4)次年度からは以上について市町村および保健所での実証研究が必要である。
公開日・更新日
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