健康日本21策定に関する研究

文献情報

文献番号
200101007A
報告書区分
総括
研究課題名
健康日本21策定に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 勝美(聖マリアンナ医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 池田俊也(慶應義塾大学医学部)
  • 濱島ちさと(聖マリアンナ医科大学)
  • 伊津野孝(東邦大学医学部)
  • 杉森裕樹(聖マリアンナ医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康日本21は21世紀の国民健康づくりとしてスタートした保健事業であり、数値目標の設定、住民の主体的参加、他分野の参加を特徴としている。その中でも対象集団の健康課題を優先順位を付け、適切な地域保健サービスの介入を図ることが求められる。本研究では、健康課題を定量的に評価し、地方計画の立案を支援するシステムを検討した。検討した課題は、1)現状で提供されている資料を基にした支援システムのデータベースの構築と米国Guide to Community Preventive Servicesの内容の調査、2)現状の疾病構造からみた障害度分類の簡易分類と保健事業介入による改善効果の定量的表示の検討、3)作成支援システムの機能とその評価事項について検討した。
研究方法
1)データベース構築のための健康日本21の資料と米国Guide to Community Preventive Servicesの内容の調査は、伊津野、杉森両分担研究者が公表されている資料及び文献を整理して求めた。2)の現状の疾病構造からみた障害度分類の簡易分類と保健事業介入による改善効果の定量的表示の検討は、池田、濱島分担研究者が人口動態統計、患者調査、文献を基に効用値を求め、QALYを定量指標として算出した。3)作成支援システムは、吉田主任研究者と班友(飯田行恭、市村匠)がシステムの基本設計を行うと共にシステム工学的視点からwebデータベースとして概念設計を行い、評価項目を設定した。
結果と考察
1)伊津野分担研究者は、健康日本21各論編の9領域80項目について、重複の整理をすると55項目になった。この中で、具体的な保健施策や実現性が記載され項目はなかった。数値目標や現状値が記載されていない項目が栄養、アルコール、歯科領域、糖尿病、循環器、がんで16項目存在していた。目標値設定で数値が切りがよい項目も存在していた。疾病との関連を記載してない項目が存在しており、疾病負担の軽減を定量的に評価する際に必要な項目として記載が望まれた。また、現状値の記載された項目の出典を整理した。杉森分担研究者は、保健サービスに関するガイドラインとして米国のGuide to Community Preventive Services (http://www.thecommunityguide.org)について調査分析した。このガイドラインは地域予防介入手法を扱っている。対象とされる健康改善として、喫煙、アルコール、運動、性行動が扱われている。また、特定の疾病などの減少については、予防接種、がん、糖尿病、精神疾患、交通事故、口腔衛生、家庭内暴力が扱われていた。環境とエコシステムについては、高齢者の快適保健サービス、小児成長プログラムが取り扱われていた。これらの項目を設定するまでの作業として、介入内容の選択、有効性調査の検索、調査の質の評価と要約、経済性、実現性、副作用の記載、研究の集約作業から構成されていた。2)では、糖尿病危険因子の回避と健診事後指導による疾病負担の軽減程度をQALYを用いて分析した。QALYを求めるときの効用値として、網膜症0.52、失明0.45、腎症0.53、透析0.48、心筋梗塞0.54として設定した。介入プログラム実施前の50歳男性100コホートの生涯QALYは2153であったが、介入後2399となり、246QALYの改善が認められた。これは、介入前の11%に相当していた。濱島分担研究者は疾病負担を計算する際に基本となる障害度分類について現在の我が国の疾病構造との関係を解析した。22疾患の特性を定義するために、原法の翻訳を行い、ICD10との照合を行い、平成8年患者調査から入院外来推計患者数、人口動態統計から死亡率を求めたところ、患者調査の疾病分類に相応しない疾患および我が国で稀少な疾患が認められた。患者
数として多い疾患として狭心症、慢性関節リウマチ、水様下痢(腸管感染症)が挙げられた。また、死亡数については、狭心症、重症貧血(栄養性貧血・無形成性貧血及び他の貧血)、痴呆(血管性痴呆・詳細不明の痴呆)が多かった。専門医による疾患の順位付けによる障害度の決定については、DALYの分類との一致度が高く簡潔法の有用性が示された。3)支援システムの概念設計では統計データベース、施策データベース、疾病負担データベースに分け保健サービスの選択による根拠とその効果をプレゼンテーションできる機能を持たせた。データ転送量が多くwebデータベースとしての同期と分散を図る必要性を認めた。
結論
健康日本21策定を支援する観点から、現状の各論編の持つ情報量と米国のGuide to Community Preventive Serviceを参考に今後データベースの追加構築を行うと共に、定量的評価のための障害度を追加していくことが望まれた。また、地方計画作成支援システムとしてシステムの持つ機能を分析してwebデータベースの必要条件を決定した。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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