医療用具の警報装置の現状と問題点の調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100996A
報告書区分
総括
研究課題名
医療用具の警報装置の現状と問題点の調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 敏(北里大学医療衛生学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小野哲章(神奈川県立衛生短期大学)
  • 加納隆(三井記念病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療用具に関係するトラブルが多発しており、その多くのものがヒューマンエラーに起因しているといわれている。トラブルの中には、警報装置そのものが持つ問題に起因する以外に、警報装置の適切な設置、操作等で防止できるものも多々あると思われるが、この辺に関する検討が十分行われていないのが現状である。
本研究では、現在臨床の場で使用されている医療用具、とくに生命維持に直接関係する医療用具である患者情報モニタ、人工呼吸器、麻酔器、輸液ポンプ、血液浄化装置の警報装置について、その現状および問題点を調査し、警報装置のあるべき姿についてあらためて検討を加えることを目的とした。
研究方法
医療用具関連の企業および医療関係者からの警報装置に対する実状調査を行うと同時に医療用具の警報装置から出る警報音の収集と分析を行った。企業に関しては、患者情報モニタ、人工呼吸器、麻酔器、輸液ポンプ、血液浄化装置などの生命維持に直接関係する企業で、各医療用具が備えている警報装置の実状、問題点などについてアンケートによる実状調査を行った。医療関係者については、患者情報モニタ、人工呼吸器、麻酔器、輸液ポンプ、血液浄化装置などの生命維持に直接関係する医療用具を実際に操作、管理を行っている医療従事者(医師、看護婦、臨床工学技士)に対して、アンケートによる実状調査を行い、現在使用している医療用具の警報装置の問題点、実際に経験したトラブル事例、要望する点などについて調査した。医療用具の警報装置から出る警報音の収集と分析は、患者情報モニタ、人工呼吸器、麻酔器、輸液ポンプ、血液浄化装置などで行い、警報音の最大および最小音圧レベル、基本周波数、基本波形、周期等の分析を行った。
結果と考察
企業では24社から回答が得られた(回答率45%)。アンケート結果では、「医用電気機器の警報通則(JIS T 1031-1991)」への準拠状況は、一部準拠を含め70%以上の企業が「準拠している」としている。70%以上の企業が「操作性が容易である」で、また80%の企業が「当該機器の警報に問題点がない」と回答していたが、これは医療関係者の声と乖離していることを示している。警報機能については一時停止機能は90%以上が「ある」としているが、一部の医療用具では警報音と警報光を同時に停止できるものもあることがわかった。自動復帰機能は18%に「ない」と回答していることがわかった。警報の信頼性で問題となる「偽警報」について、その防止のための設計上の配慮している企業がわずか20%で、「偽警報」対策が容易でないことがわかった。医療関係者に対する調査では193病院(1043人)より回答があり、回答者の内訳は医師22%、看護師54%、臨床工学技士22%であった。医療関係者の警報装置に対する満足度は100点満点で70点(25.9%)と回答した人が最も多かったが、60点以下という回答が48%もあった。16%の医療関係者が警報装置に関係した重大事故を経験し、それは人工呼吸器、血液浄化装置、モニタ、輸液ポンプに見られ、具体的には、「警報をオフにしていた」、「警報が鳴らなかった」、「警報が聴こえなかった」、「対応が遅れた」などがあった。35%の医療関係者が警報装置に関係したニアミスを経験し、それは輸液ポンプ、人工呼吸器、モニタ、血液浄化装置に見られ、具体的には、「警報をオフにしていた」、「操作・設定ミス」「警報が鳴らなかった」、「警報の識別困難」などがあった。73機種の機器について行った緊急警報の聴覚表示の実状調査では、基本周波数は1,000Hz~4,000Hzの範囲にあったが、人工呼吸器などの生命維持管理装置では3,000Hz以上のものが多いことがわかった。最大音圧レベルは70dBより低い機種もあり、また、最小音圧レベルが環境音より低いために測定できない機種があることがわかった。警報の基本パターンは72%の機種で断続音で、その周期や断続時間は機種により異なっていることがわかった。今回の調査結果で、現時点での医療用具の警報装置の現状と問題点がはっきりしたが、今後は、医療関係者に対する医療用具の警報装置の正しい使い方のガイドラインの提言、企業に対する医療用具の警報装置の理想的な設置方法についての提言、国内外で検討される各種医療用具の警報装置の規格案作成へ提言、警報音のライブラリの作成等の努力が必要と思われる。
結論
今回の調査で、医療用具関連の企業及び医療関係者からの警報装置に対する実情と問題点を知ることができた。とくに、警報装置に対する認識について企業と医療関係
者の間で解離があること、医療用具の中には警報音と警報光を同時に停止できるものや自働復帰機能がないものがあること、偽警報対策が容易でないこと、警報装置に関係した重大事故やニアミスが起こっていることなどが明らかになったが、今回の調査結果をもとに、現在使用されている警報装置及びこれからの警報装置に対して検討を加え、医療用具の安全性と信頼性の向上に努める必要がある。

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