輸血用血液製剤の安定的な供給及び血漿分画製剤の国内自給に向けた原料血漿確保量に関する研究

文献情報

文献番号
200100993A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血用血液製剤の安定的な供給及び血漿分画製剤の国内自給に向けた原料血漿確保量に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
高野 正義(財団法人血液製剤調査機構)
研究分担者(所属機関)
  • 七川博一(財団法人血液製剤調査機構)
  • 鴨慎一(財団法人血液製剤調査機構)
  • 沼田芳彰(日本赤十字社)
  • 遠藤邦夫(株式会社矢野経済研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
-
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸血用血液製剤は、日本赤十字社が一貫して採血から検査・製造・供給を行なっており、無償の献血者の血液により、国内自給が達成されている。しかし、血漿分画製剤については、今だにその一部を輸入に頼っている。本研究では、血漿分画製剤も100%国内献血による自給を達成するために、最も需要量の多いアルブミン製剤及び静注用免疫グロブリン製剤(以下免疫グロブリン製剤)を対象に原料血漿の必要確保量を予測した。
○100%国内自給に必要な原料血漿確保目標量について、今後10年間に期間を限定して予測を行なう。
○現行の環境変化が続くものと推定し予測する統計学的手法を用いることが困難であるため、シナリオライティングによる手法を用いた。
※シナリオライティング:遠い将来に向けて、マーケティング環境がどのように変化するか、その結果市場がどの段階にまで到達するかというシナリオを文章や表や図で作成すること。(「体系マーケティングリサーチ事典 」同友館より)
研究方法
専門医へのインタビュー調査結果、企業関係者へのインタビュー調査結果、臨床医へのアンケート調査結果などを総合的に検証し、過去の製造・輸入量の推移をベースとして、2005年、2010年における使用量を予測する。
結果と考察
○専門医へのインタビュー調査結果
・アルブミン製剤は適正使用が浸透→「今後も使用量は減少」
・免疫グロブリン製剤は神経疾患領域での使用増加、造血幹細胞移植の普及による使用量増加、重症感染症での使用抑制→「ゆるやかな増加傾向」
○企業関係者へのインタビュー調査結果
・遺伝子組換えアルブミン製剤が2005年以降に上市される可能性が大きい。
・免疫グロブリン製剤のモノクローナル抗体製品が上市されれば影響が出るが、10年以内に上市されることはない。
○臨床医へのアンケート調査結果
・アルブミン製剤の今後の使用量の予測
5年後も10年後も「変化なし」が最も多く、それぞれ15.8%、11.0%。その他、増減に自由回答を加えた場合は以下の通り。
5年後の増減率「6~10%減」と予想した人が最多→平均減少率10.59%減
10年後の増減率「16~20%減」と予想した人が最多→平均減少率14.26%減
・免疫グロブリン製剤の製造・輸入量の予測
5年後も10年後も「変化なし」が最も多く、それぞれ22.7%、15.2%。その他、増減に自由回答を加えた場合は以下の通り。
5年後の増減率「1~5%増」と予想した人が最多→平均増加率15.14%増
10年の増減率「1~5%増」と予想した人が最多→平均増加率21.38%増
○過去10年間のアルブミン製剤及び免疫グロブリン製剤の製造・輸入量推移
・アルブミン製剤については、昭和63(1988)年~平成13(2001)年実績から年平均減少率2.14%減。
・免疫グロブリン製剤については、平成4(1992)年~平成13(2001)年実績から年平均増加率1.32%増。
結論
○遺伝子組換えのアルブミン製剤が上市されるという要因を除去して予測すると、2010年のアルブミン製剤の使用量は過去の増減率に基づき算出すると156万Lとなる。シナリオライティング手法を用いたアンケート調査結果に基づくと176万Lとなるが、2001年のアルブミン製剤の使用量は189万Lであったので、予測量を修正すると2010年には167万Lとなる。
○遺伝子組換えのアルブミン製剤が平成9(1997)年の「血液行政の在り方懇談会報告書」で示され供給量75万Lを加味して予測すると、2010年のアルブミン製剤の使用量は過去の増減率に基づき算出すると81万L、アンケート調査結果に基づくと101万L、2001年の使用量で修正すると92万Lとなる。免疫グロブリン製剤の2010年における使用量は、過去の増減率に基づき算出すると4,008kg(L換算では111万L)、シナリオライティング手法を用いたアンケート調査結果に基づくと4,239kg(L換算では117万L)となる。
○2005年以降に遺伝子組換えのアルブミン製剤が上市され、2010年までに50万L相当量が供給されれば2010年時点では免疫グロブリン製剤が最大影響要因となり、原料血漿確保量は117万L~111万Lの間となると予測される。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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