H5N1型全粒子不活化インフルエンザワクチンの安全性・有効性に関する研究

文献情報

文献番号
200100989A
報告書区分
総括
研究課題名
H5N1型全粒子不活化インフルエンザワクチンの安全性・有効性に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
田代 眞人(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 神谷 齊(国立療養所三重病院 院長)
  • 小田切孝人(国立感染症研究所ウイルス1部)
  • 板村 繁之(国立感染症研究所ウイルス1部)
  • 田村 慎一(国立感染症研究所感染病理部)
  • 堀内 清(千葉県血清研究所)
  • 大塚 道夫(三菱化学安全科学研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
20,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近くトリウイルスに由来する新型インフルエンザの出現が想定されるが、新型ウイルス大流行時には未曾有の健康被害と社会的混乱が危惧される。その対策には新型ワクチンの緊急増産が必要であり、トリウイルス由来の新型ワクチンの安全性と有効性について予め検証しておく必要がある。感染研では、1997年の香港トリ強毒H5N1型ウイルスに対する弱毒ワクチン製造株の開発に成功したが、試作したHAワクチンは、ヒトに対する安全性は確認されたが有意な血清抗体の上昇が認めらず、新型ウイルスには現行HAワクチンが対応できない可能性が示された。そこで、H5N1型ウイルスについて、アジアかぜ、香港かぜ大流行時の効果が示されている全粒子型不活化ワクチン製剤を開発・製造して安全性と有効性を検証し、今後の新型インフルエンザに対するワクチン準備体制全般の確立に資すること、および現行ワクチンに免疫賦活剤を加えた経鼻接種ワクチンの開発を目的とする。
研究方法
香港で流行したトリ由来強毒型ウイルスA/香港/156/97(H5N1)株のHA遺伝子を遺伝子操作技術により弱毒型に改変したワクチン製造株を用いて、GMPに準じて全粒子型の不活化ワクチンを試作した。生物学的製剤基準を満たすことを確認し、臨床第1相試験を行うために必要な動物を用いた前臨床試験を行った。また、変異コレラ毒素併用経鼻ワクチンの防御免疫能を検討した。
結果と考察
1)H5N1型インフルエンザに対する全粒子型不活化ワクチンの試験製造。生物学的製剤基準に準じて、BSL3対応施設において不活化ワクチンを製造した。これについて、生物学的製剤基準の各項目について検査を行い、基準に合致していることを確認した。2)H5N1型ワクチンに対する動物を用いた前臨床試験。(1)ラットを用いる単回投与毒性試験:臨床用量の100倍量を5週齢SPFラットに皮下接種して14日間に亘り毒性を検討した結果、尾の紅潮以外には、体重増加や剖検所見に異常は認められず、単回投与毒性は低いと判断された。(2)ラットを用いる複数投与毒性試験:臨床用量及びその100倍量をラットに4週間反復皮下投与して毒性を検討した。病理組織検索では、接種部位に軽い細胞浸潤が認められたのみで、体重、摂餌量、血液学的検査、血液生化学検査、尿検査、眼科検査、器官重量、剖検結果に対する影響は認められなかった。(3)マウスを用いる小核試験:臨床量の100,200,400倍量をマウスに2回皮下投与して骨髄細胞の小核誘発性を調べた結果、小核を持つ多染性赤血球の出現数・出現頻度には対照と差がなく、小核誘発性は陰性と判断した。(4)染色体異常誘発試験:チャイニーズハムスター細胞株に対して、ワクチン希釈液でS9mix存在・非存在下で6時間の短時間処理、または連続24時間処理し、染色体構造異常を調べた結果、S9mix存在下短時間処理と長時間処理では10%異常の異常が認められたが、S9mix非存在下短時間処理では5%未満であった。本製剤は染色体異常誘発性を持つが、生体内のように代謝活性化条件では抑制されることが示唆された。(5)復帰突然変異試験:臨床用量から7段階に希釈し、9株のネズミチフス菌と大腸菌に対する遺伝子変異原性を調べた結果、S9mixの有無に関わらず、全ての菌株で復帰変異コロニーの数は対照値の1/2以下であったことから、変異原性を有さないと判断された。3)組換えコレラ毒素添加ワクチンをマウスに経鼻接種した結果、安全性と有効性が示された。
結論
前臨床試験結果に基づいて
来年度は臨床第1相試験を行い、ヒトでの安全性と有効性を検討する。

公開日・更新日

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