インフルエンザワクチン需要予測に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100987A
報告書区分
総括
研究課題名
インフルエンザワクチン需要予測に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宜彦(埼玉県立大学)
研究分担者(所属機関)
  • 延原弘章(高崎健康福祉大学)
  • 大日康史(大阪大学社会経済研究所)
  • 渡辺由美(高崎健康福祉大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
21,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インフルエンザの流行は年次変動が大きい上に、平成6年度の予防接種法の改正を機にインフルエンザワクチンの接種が任意接種となったことにより、近年、インフルエンザワクチンの需要の予測は困難を極めている。さらに、平成13年度には予防接種法改正による高齢者(65歳以上)へのインフルエンザワクチンの勧奨接種が実施され、インフルエンザワクチンの需要を的確に把握することが求められている。本研究は、この要請にもとづき、インフルエンザワクチンの需要量の推計方法を確立することを目的とした。
研究方法
下記の2つの調査を実施して、65歳未満の任意接種需要量および13年度以降の65歳以上高齢者の勧奨接種需要量を推計する方法を検討した。
1.医療機関等におけるインフルエンザワクチンの接種状況調査:医療機関等に対し、シーズン前(平成13年9月中)に協力を依頼し、シーズン終了後(平成14年3月)に調査票の回収を行った。①対象医療機関等(平成11年度に供給実績のあった全国58,371施設から、都道府県を層として対象医療機関等を3,794施設を抽出した。)②調査項目(ワクチン購入本数、年齢(生物学的製剤基準に定められている年齢別)・接種方法別接種人数)
2.65歳以上の住民を中心としたインフルエンザワクチン接種意向調査:65歳以上の高齢者を対象にインフルエンザワクチンの接種意向調査を行った。①調査対象(東日本、西日本からそれぞれ都市部、農村部のモデル地域を設定し、その地域から無作為に抽出した65歳以上の高齢者約800人)②調査項目(平成12年度におけるワクチン接種の有無(有りの場合は接種方法)、勧奨接種となり公費負担となった場合の接種意向(公費負担割合別に調査)、Conjoint Analysisのための設問)
結果と考察
1.インフルエンザワクチンの接種状況調査
1)回収率を全国でみると68.1%で、都道府県別には神奈川県の58.6%から佐賀県の83.8%であった。また、母数に対する回収数率は4.4%で、都道府県別には京都府の3.3%から秋田県の7.4%であった。
2)接種率を推計した結果、1歳未満の接種率は6.5%で、そのうち82.8%は2回接種となっていた。1歳以上6歳未満の接種率は25.6%で、そのうち84.1%が2回接種、6歳以上13歳未満の接種率は11.5%で、そのうち76.7%が2回接種となっており、13歳未満ではいずれの世代においても2回接種の割合が8割前後であった。
13歳以上65歳未満の接種率は5.6%で、そのうち2回接種の割合は20.6%、65歳以上の接種率は38.6%で、そのうち2回接種が6.5%となっており、1回接種が多くなっていた。
接種率を全年齢でみると12.8%と推計された。
3)各医療機関等から返送された回答のうち、インフルエンザワクチンの購入本数、使用本数および次年度予測接種数について都道府県別集計を行い、その集計結果を母数に対する回収率で除することにより推計値を算出した結果、平成13年度の医療機関等におけるインフルエンザワクチン購入本数は10,263,922本、使用本数は9,448,197本と推定された。また、平成14年度のワクチン需要数は10,492,337本から11,378,291本と推計された。
2.インフルエンザワクチン接種意向調査
1)有効回答率は、92.1%であった。
2)平成12年度のインフルエンザワクチン接種率は16.1%と推計された。
3)Joint Estimationにより、13歳未満は2回接種、13歳以上65歳未満は65%が1回接種、35%が2回接種、65歳以上は1回接種と仮定して、平成13年度の需要予測を試みた結果、65歳以上の接種費用自己負担額が無料の場合780万~1120万本、1,000円の場合570万~940万本、2,000円の場合560万~930万本、3,000円の場合550万~920万本と推計された。
以上の結果より、1)1994年の法改正により、インフルエンザ予防接種は任意接種に変わり、全国的な接種率の把握については困難な状況にあるが、今回の全国的な規模での調査により、全体の接種率は12.8%と推定された。また、世代によって接種率は大きく異なり、65歳以上では4割弱と他の世代に比べればかなり高率であることが判明した。昨年度に行った調査では、全体の接種率が8.4%で、それに比較すれば今年度の接種率は若干上昇したが、世代別にみると、65歳未満の接種率には大きな変化はなく、65歳以上の接種率が昨年の19.7%から大幅に上昇していた。これは、今年度のシーズン当初に行われた予防接種法改正の影響があったものとみられる。
2)インフルエンザワクチンの接種状況調査では、ワクチン購入本数や使用本数も調査しているので、ワクチンメーカからの出荷量および返品量が都道府県別に把握できれば、医療機関等の規模の違いを補正して需要量の予測を行うことも可能である。また、このような製造量のデータによって、前年度に実施した需要予測の検証を行い次年度以降の予測に活用したり、本調査の世代別接種状況より得ることが可能な世代別の接種率に補正を加え、より正確な接種率を把握したりすることも可能であると思考する。
3)また、接種状況調査によって平成13年度のワクチン使用本数が945万本と推計されたが、インフルエンザワクチン接種意向調査から得られた平成13年度の需要予測値は、65歳以上の接種費用自己負担額が無料の場合でその中間値、1,000円の場合でその上限値にほぼ同値であったことから、Joint Esitimationによる予測は概ね妥当と考える。この検証には実際の負担額を確認しなければならないが、いずれにしても経年的調査が必要である。
結論
1.平成13年度のインフルエンザワクチン接種率は、世代間に格差がみられ、高齢者の接種率が他の世代に比べると高かったが、全年齢では12.8%と低率であった。
2.平成13年度のインフルエンザワクチン購入本数は約1026万本、使用本数は約945万本と推定され、平成14年度のワクチン需要数は約1049万本から約1138万本と推計された。
3.Joint Estimationによるインフルエンザワクチンの平成13年度の需要予測は、平成13年度の実際の使用量(推計値)と近似していた。
4.今後2年次の継続研究によって、インフルエンザワクチン需要量の定型的な推計方法を提案する。

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