医療機関における使用済放射線源及び診療用放射性同位元素の管理の合理化等のあり方に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100964A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関における使用済放射線源及び診療用放射性同位元素の管理の合理化等のあり方に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 啓吾(群馬大学)
研究分担者(所属機関)
  • 濱田達二(日本アイソトープ協会)
  • 小西淳二(京都大学)
  • 棚田修二(放射線医学総合研究所)
  • 佐々木武仁(東京医科歯科大学)
  • 青木幸昌(東京大学)
  • 菊地透(自治医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療用放射線源及び診療用放射性同位元素には現在のところ処分の道が開かれておらず、保管量は年々増加している。近い将来、処分が法制化されることを考慮し、処分を前提とした廃棄物の処理・処分の合理的な方策を検討し、新しい方法を提案する事により、法制化に備える必要がある。そこで 放射性廃棄物の処理・処分に関する合理化の気運及び国際放射線防護委員会1990年勧告と国際原子力機関の基本安全基準(BSS, 1996)に現れた動向に関連して、とくに医療機関における放射性固体廃棄物の処理・処分を取り上げて考察し、合理的規制方法の策定に資することを目的として研究を行った。医療用の線源が身元不明線源(Orphan Sources)として金属スクラップに混入する問題は、国際的にも対策が検討されており、我が国で対策が必要である。我が国においてPET薬剤の有効性に関しては、現在広く認識されて平成14年4月からFDG-PETが保険に収載される。そこで小型サイクロトロンをモデルとして、その廃棄・更新についての具体的な方策について検討を行った。
腫瘍の放射線治療はコンピュータ技術の進歩に伴って、定位照射や強度変調照射など高精度放射線治療が発達してきた。そこでこのこの高精度放射線治療における精度評価の改善が必要である。またX線装置の質的保証には信頼性が高く、簡便でしかもコストパーフォーマンスの高いX線の線量と線質の測定法の確立が重要と考えられる。そこで歯科診療をモデルとして我が国で開発された蛍光ガラス線量計素子をX線装置の質的管理に応用することを目的として検討してきた。
我が国には高価な放射線機器が数多く設置されているにもかかわらず、画像診断のための安全かつ有効な利用のための診断ガイドラインはない。また世界でも医療被ばくが最も多い国である。そこで放射線診療の標準化、医療被ばくの軽減を目的としてワーキンググループを作り、Evidence Based Medicine (EBM)に基づいた放射線診療ガイドラインの作成を行った。
研究方法
専門家によるふたつのワーキンググループを編成し、ひとつは放射線管理の現実的な対応策の検討、ひとつは放射線診療ガイドラインの作成を行った。前者では医療機関における使用済みの密封小線源、小型サイクロトロンの処理、処分の現状を調査するとともに、超短半減期核種の安全な利用、歯科診療における放射線管理の現状を調査した。後者では脳神経と頭頸部、肺・縦隔、心・大血管、肝・胆・膵、泌尿器・生殖器、骨・軟部、乳腺、小児の9つの領域について、ワーキンググループをつくり放射線診断ガイドラインの作成を行った。
結果と考察
1.放射線診療ガイドラインに関する研究(遠藤啓吾)
脳神経と頭頸部、肺・縦隔、心・大血管、肝・胆・膵、泌尿器・生殖器、骨・軟部、乳腺、小児の9つの領域について、我が国の放射線診療の第一人者にワーキンググループを作ってもらい、放射線診断ガイドラインの作成を行った。その一部をインターネットを通じて閲覧することができる(http://www.jcr.or.jp/guideline/VI.pdf)。できるだけ多くの方々の意見を広く求め、平成14年度に9つの領域の放射線診断ガイドラインを完成させる。  2.使用済放射線源及び診療用放射性同位元素の合理的な廃棄方法の研究(濱田達二)
医療機関における放射性物質管理の合理化の一環として、放射性廃棄物(使用済線源を含む)の処理・処分に係わる合理的規制方法の策定に資するため、12名の研究協力者からなるワーキンググループを設け、国内外のその後の動向も考慮しつつ、研究を実施した。まお、平成13年度においては、廃棄物のクリアランス(規制免除)の社会的受容性についても考察した。
3.PET薬剤の適正使用と合理的管理に関する研究(小西淳二)
平成14年度より保険に収載されるFDGを作製する場合の、製造指図書、製造記録、品質試験記録を作成した。
4.ポジトロン放出短寿命放射薬剤製造用小型サイクロトロンの使用状況と廃棄に関する研究(棚田修二)
我が国におけるポジトロン放出短寿命放射薬剤製造用小型サイクロトロンの設置状況とその廃棄・更新状況について調査を行い、今後解決すべき問題点について検討した。
5.歯科領域における放射線源の保守管理の現状と在り方(佐々木武仁)
我が国で開発された蛍光ガラス線量計素子をX線装置の質的管理に応用することを検討してきた。郵送方法による蛍光ガラス線量計を用いる口内法X線装置の出力測定とX線の半価層測定では、大きな誤差が生じるなどの問題点が明らかにされた。新たな補正法を考案した結果、1mmAlフィルターの有無による透過X線に対する蛍光ガラス線量計の読み値比を用いる補正法により、X線装置の出力測定は変動係数(CV)3%以内、半価層測定は、半価層1.36-2.71mmAlに対して標準偏差が0.1mmAlで、極めて信頼性の高いことが明らかとなった。
6.高精度放射線治療における精度管理(青木幸昌)
体幹部定位照射において患者呼吸移動を最小限に抑える手法として非侵略的固定具の有用性を検討したところ、自然呼吸下の体動はほぼ4mm以内に収まることが分かった。次に体幹部定位照射において線量集中性を高める手法の有用性を検討した。照射容積外で線量が急峻に低下することが周囲の被ばくの軽減に重要とされているため、その低下度合いをγナイフと比較した。歳差原体照射法ではγナイフと同等か之を凌ぐ集中性が認められた。
7.医療用放射性物質の線源保管状況調査と安全管理基準の研究(菊地 透)
医療用の線源が身元不明線源(Orphan Sources)として金属スクラップに混入する問題は、国際的にも対策が検討されている。医療用放射線源の保管状況を調査し、医療起源の身元不明線源を根絶するための対策や、医療用の線源が関与した事故の再発防止対策等について研究した。
結論
医療機関における使用済み放射線源および診療用放射性同位元素の廃棄物の処理、処分について調査し、新しい合理的な方策について検討した。さらにPET製剤、小型サイクロトロンをモデルとして放射線源の安全で合理的な処理、処分を検討するとともに、医科および歯科領域において放射線を安全に、かつ有効に医学利用するための放射線管理について研究した。放射線診療の標準化、医療被ばくの軽減に向けて放射線診療ガイドラインを作成中で、平成13年度にはその一部をインターネットを通じて公開しているが、平成14年度に放射線診断ガイドラインの完成を目指す。

公開日・更新日

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