文献情報
文献番号
200100962A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品等の品質規格に係る国際的動向を踏まえた評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
早川 堯夫(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
- 小嶋茂雄(国立医薬品食品衛生研究所)
- 吉岡澄江(国立医薬品食品衛生研究所)
- 山口照英(国立医薬品食品衛生研究所)
- 川西徹(国立医薬品食品衛生研究所)
- 新見伸吾(国立医薬品食品衛生研究所)
- 内田恵理子(国立医薬品食品衛生研究所)
- 川崎ナナ(国立医薬品食品衛生研究所)
- 豊島聰(国立医薬品食品衛生研究所)
- 武田寧(財団法人日本公定書協会)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
新医薬品等の製造については、バイオテクノロジー等の先端技術をより高度に応用した細胞・組織加工医薬品の開発や従来製品の製造方法の技術革新など、新たな展開がわが国においても急速に進んでいる。また、これらの新医薬品等の開発や技術革新の動向をうけて、品質、安全性を確保した製品を恒常的に提供する上で不可欠な品質・安全性確保基準及び製造管理技術・品質確保技術が検討されてきている。今後我が国において、当該医薬品の品質及び安全性確保対策を推進する上で、これらの基準や技術を学問・技術の進歩に対応したより一層適切なものとしていくためには、これら製品の開発の進展が著しい外国での状況等を踏まえ、国際的な水準を勘案しながら、絶えず評価・検証を行う必要がある。本研究は細胞・組織を利用した先端技術応用医薬品を含む新医薬品等の品質及び安全性確保基準、製造技術及び品質確保技術について、外国での進捗状況を調査するとともに、外国の技術水準に留意した科学的に妥当性のある品質・安全性確保規準や製造管理技術・品質確保技術の確立、検証及び評価に関する研究を行うことを目的とする。
研究方法
1) 細胞・組織加工医薬品の品質・安全性確保の国際的動向を欧米の動向などを基に検討した。2) Infectivity RT-PCRとポリエチレンイミン磁気ビーズによる新規ウイルス濃縮法を用いて増殖性レトロウイルス(RCR)の検出法を検討した。3) バイオテクノロジー医薬品の同等性/同質性(Comparability)をどのような観点で評価すべきかについて欧米での動向を基に検討した。4)起源の異なる3種類の遺伝子組換え型糖タンパク質(EPO)を用い、糖鎖マッピング及び糖ペプチドマッピングが類似糖タンパク質の構造の違いをどれだけ識別できるかを調べた。 5)医薬品の品質確保技術の国際調和を目指した研究の一環として、生物薬品の統一力価試験法の設定と標準物質の確立方策を、ヒトトロンボモジュリンを例に検討した。6) モンテカルロ法によって発生させた安定性試験データを用いてANCOVA法とレンジに基づく方法によるロット間変動の検出力を比較した。7) 不純物の安全性確認に関する問題点をアンケート調査などを通じて把握し、Q&A原案を作成した。8) 生物薬品の承認申請資料の記載方法についてICHガイドライン等を基に検討した。9) 薬局方国際調和の現状を理化学試験法、微生物試験法、生物薬品試験法、医薬品添加物各条について検討した。
結果と考察
1)細胞・組織加工医薬品の品質・安全性確保の国際的動向を踏まえた評価に関する研究: EUは(1)ウイルス等の感染症伝達の防止、(2) 品質の確保を担保するような製品の品質基準の設定、(3)製品の一定性を担保する製造方法の恒常性等を最も重視している。細胞・組織加工医薬品を自己由来か非自己の細胞かでその品質や安全性確保の方策を分けて考える点やウイルスのスクリーニング試験法のあり方等、各国に共通することが多いが、差異もあり、その科学的根拠の検討が必要であることが明らかになった。2)遺伝子治療用医薬品の品質・安全性確保の国際的動向を踏まえた評価に関する研究: RCRのエンベロープ(env)遺伝子配列を認識するプライマー、プローブを用いたリアルタイム定量RT-PCRによりRCRを定量的に測定可能であること、ポリエチレンイミン(PEI)結合磁気ビ
ーズを用いた新規ウイルス濃縮法によりRCRを濃縮可能であることを明らかにした。ウイルス感受性細胞を用いて増殖性を有するRCRのみを増幅後、リアルタイム定量RT-PCRで検出するInfectivity RT-PCR法と、PEI-磁気ビーズ濃縮法との組み合わせにより、従来のRCR検出法より短時間で高感度にRCRの定量的測定が可能であることを明らかにした。3)バイオテクノロジー医薬品の製造法変更時の品質確保、同等性/同質性評価に関する研究:欧州で最近施行されたバイオテクノロジー医薬品の同等性/同質性に関するガイダンスノートは、FDAガイダンスと科学的立場は共通しているが、臨床試験を繰り返さずに同等性/同質性を明らかにする手続きに重きをおくFDAと異なり、同等性/同質性評価の科学的方策を総合的にまとめる方向にある。どちらのガイドラインも同等性/同質性評価の第一段階である有効成分の特性評価のストラテジーが明確にされておらず、その問題点を補いながら、我が国における現時点での同等性/同質性評価における留意事項をまとめた。4)生物薬品の特性・品質解析、品質評価法に関する研究:液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)を用いた糖鎖マッピングは、糖鎖の構造と分布の違いに基づく糖タンパク質の差異を明確にできること、また、エキソグリコシダーゼ消化法を併用することによって、差異の原因となっている糖鎖の構造を解析できること、さらに、糖ペプチドマッピングを行うことによって、その糖鎖が結合している部位を明らかにできることを確認した。LC/MSによる糖鎖マッピング及び糖ペプチドマッピングは、製造方法変更等によって生じる新旧糖タンパク質の同等性/同質性評価法として有用であることが確認された。5) 生物薬品の統一力価試験法の設定と標準物質の確立方策に関する研究:生物薬品の統一力価試験法の設定と標準物質の確立方策について、現在抗凝固薬としての申請が予定されているヒトトロンボモジュリンを例に検討した。その結果、①既存の試験法の評価、②自家力価の評価、③共通力価測定法の確立、④共通力価の定義、⑤共通力価測定法の妥当性の評価、⑥標準物質の確立、⑦標準物質の保存安定性の評価、などが一般的な留意事項となることを明らかにした。これらの留意事項は共通性が高く、今後、他の生物薬品や生物薬品候補について統一力価試験法と標準物質を確立する際に有用と考えられる。6) 安定性試験における品質確保基準に関する研究:安定性試験データの解析におけるロット間変動の検定法として、FDAが推奨するANCOVA法と新たに開発したレンジに基づく方法の有用性を比較検討し、0.5%以下の誤差の分析法を用いて安定性データが得られた場合に、レンジに基づく方法はANCOVA法と同等の確率でロット間の分解曲線の傾きの差を検出できることが明らかになり、ANCOVA法に代わる方法として活用できる可能性が示された。7) 不純物の安全性確認に関するQ&Aの作成に関する研究:原薬および製剤の不純物ガイドライン(Q3AおよびQ3B)における安全性確認に関して、Q&A原案を基に官民の品質および安全性の担当者で検討を繰り返し、2001年9月に最終案が完成した。このQ&Aは不純物ガイドラインの解釈および運用方法を巡る混乱を解決するのに役立つものと考えられる。8) 新しい品質規格を用いた製品の評価法に関する研究:生物薬品の品質確保の基本的な考え方を明らかにするとともに、生物薬品の承認申請に際し、品質について添付資料に記載すべき事項、承認申請書及び添付資料概要に記載する事項に関して、それらの文書の位置付けとともに考察した。本研究成果の一部は厚生労働省審査管理課の事務連絡「新医薬品の承認申請資料などに関する留意事項」に反映された。9) 薬局方国際調和に関する研究:薬局方国際調和の概要、方針、手順、現況、進捗状況について検討するとともに、調和の成果の日本薬局方への反映における問題点を考察した。本研究の成果は国際的動向を踏まえた医薬品の品質評価に欠くことの出来ない国際調和された新しい品質評価基準の日本薬局方への反映の推進に資するものである。
ーズを用いた新規ウイルス濃縮法によりRCRを濃縮可能であることを明らかにした。ウイルス感受性細胞を用いて増殖性を有するRCRのみを増幅後、リアルタイム定量RT-PCRで検出するInfectivity RT-PCR法と、PEI-磁気ビーズ濃縮法との組み合わせにより、従来のRCR検出法より短時間で高感度にRCRの定量的測定が可能であることを明らかにした。3)バイオテクノロジー医薬品の製造法変更時の品質確保、同等性/同質性評価に関する研究:欧州で最近施行されたバイオテクノロジー医薬品の同等性/同質性に関するガイダンスノートは、FDAガイダンスと科学的立場は共通しているが、臨床試験を繰り返さずに同等性/同質性を明らかにする手続きに重きをおくFDAと異なり、同等性/同質性評価の科学的方策を総合的にまとめる方向にある。どちらのガイドラインも同等性/同質性評価の第一段階である有効成分の特性評価のストラテジーが明確にされておらず、その問題点を補いながら、我が国における現時点での同等性/同質性評価における留意事項をまとめた。4)生物薬品の特性・品質解析、品質評価法に関する研究:液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)を用いた糖鎖マッピングは、糖鎖の構造と分布の違いに基づく糖タンパク質の差異を明確にできること、また、エキソグリコシダーゼ消化法を併用することによって、差異の原因となっている糖鎖の構造を解析できること、さらに、糖ペプチドマッピングを行うことによって、その糖鎖が結合している部位を明らかにできることを確認した。LC/MSによる糖鎖マッピング及び糖ペプチドマッピングは、製造方法変更等によって生じる新旧糖タンパク質の同等性/同質性評価法として有用であることが確認された。5) 生物薬品の統一力価試験法の設定と標準物質の確立方策に関する研究:生物薬品の統一力価試験法の設定と標準物質の確立方策について、現在抗凝固薬としての申請が予定されているヒトトロンボモジュリンを例に検討した。その結果、①既存の試験法の評価、②自家力価の評価、③共通力価測定法の確立、④共通力価の定義、⑤共通力価測定法の妥当性の評価、⑥標準物質の確立、⑦標準物質の保存安定性の評価、などが一般的な留意事項となることを明らかにした。これらの留意事項は共通性が高く、今後、他の生物薬品や生物薬品候補について統一力価試験法と標準物質を確立する際に有用と考えられる。6) 安定性試験における品質確保基準に関する研究:安定性試験データの解析におけるロット間変動の検定法として、FDAが推奨するANCOVA法と新たに開発したレンジに基づく方法の有用性を比較検討し、0.5%以下の誤差の分析法を用いて安定性データが得られた場合に、レンジに基づく方法はANCOVA法と同等の確率でロット間の分解曲線の傾きの差を検出できることが明らかになり、ANCOVA法に代わる方法として活用できる可能性が示された。7) 不純物の安全性確認に関するQ&Aの作成に関する研究:原薬および製剤の不純物ガイドライン(Q3AおよびQ3B)における安全性確認に関して、Q&A原案を基に官民の品質および安全性の担当者で検討を繰り返し、2001年9月に最終案が完成した。このQ&Aは不純物ガイドラインの解釈および運用方法を巡る混乱を解決するのに役立つものと考えられる。8) 新しい品質規格を用いた製品の評価法に関する研究:生物薬品の品質確保の基本的な考え方を明らかにするとともに、生物薬品の承認申請に際し、品質について添付資料に記載すべき事項、承認申請書及び添付資料概要に記載する事項に関して、それらの文書の位置付けとともに考察した。本研究成果の一部は厚生労働省審査管理課の事務連絡「新医薬品の承認申請資料などに関する留意事項」に反映された。9) 薬局方国際調和に関する研究:薬局方国際調和の概要、方針、手順、現況、進捗状況について検討するとともに、調和の成果の日本薬局方への反映における問題点を考察した。本研究の成果は国際的動向を踏まえた医薬品の品質評価に欠くことの出来ない国際調和された新しい品質評価基準の日本薬局方への反映の推進に資するものである。
結論
1) 細胞・組織加工医薬品の品質・安全
性確保方策に関して欧米とわが国における現時点での留意事項と今後の検討課題を明らかにした。2)Infectivity RT-PCRとウイルス濃縮法の組み合わせによりRCRを従来よりも短時間で高感度に検出可能であることを明らかにした。3)バイオテクノロジー医薬品の製造法の変更時における同等性/同質性評価の科学的アプローチについて欧米とわが国における現時点での重要な論点を明らかにした。4)LC/MSを用いた糖鎖マッピング、糖ペプチドマッピングが生物薬品の同等性/同質性評価に有用であることを明らかにした。5)生物薬品の統一力価試験法の設定と標準物質の確立方策に関して、ヒトトロンボモジュリンを例に検討し、共通性の高い一般的な留意事項を明らかにした。6) ロット間変動の検定法としてレンジに基づく方法がANCOVA法に代替可能なことを明らかにした。7) 不純物の安全性確認に関するQ&Aを作成した。8) 生物薬品の承認申請に必要な添付資料、資料概要、承認申請書に記載すべき品質に係る事項を明らかにした。9) 薬局方の国際調和の現状と日本薬局方への反映における問題点を明らかにした。
性確保方策に関して欧米とわが国における現時点での留意事項と今後の検討課題を明らかにした。2)Infectivity RT-PCRとウイルス濃縮法の組み合わせによりRCRを従来よりも短時間で高感度に検出可能であることを明らかにした。3)バイオテクノロジー医薬品の製造法の変更時における同等性/同質性評価の科学的アプローチについて欧米とわが国における現時点での重要な論点を明らかにした。4)LC/MSを用いた糖鎖マッピング、糖ペプチドマッピングが生物薬品の同等性/同質性評価に有用であることを明らかにした。5)生物薬品の統一力価試験法の設定と標準物質の確立方策に関して、ヒトトロンボモジュリンを例に検討し、共通性の高い一般的な留意事項を明らかにした。6) ロット間変動の検定法としてレンジに基づく方法がANCOVA法に代替可能なことを明らかにした。7) 不純物の安全性確認に関するQ&Aを作成した。8) 生物薬品の承認申請に必要な添付資料、資料概要、承認申請書に記載すべき品質に係る事項を明らかにした。9) 薬局方の国際調和の現状と日本薬局方への反映における問題点を明らかにした。
公開日・更新日
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更新日
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