文献情報
文献番号
200100951A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の活性酸素毒性の定量的評価手法に関する研究(総括研究報告書)
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 直樹(名古屋市立大学大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 福原 潔(国立医薬品食品衛生研究所)
- 長野哲雄(東京大学大学院薬学系研究科)
- 阿部芳廣(共立薬科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
13,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
化学物質がどのような条件でどのような活性酸素種をどれだけ発生するかを、最新の分析手法を用いて定量的に評価し毒性評価のための科学的指標を得ることを目的とする。活性酸素種の健康影響は、発ガン、老化、アレルギー、痴呆など多方面で問題となっている。また、近年新たな活性酸素種として、一酸化窒素やナイトリックパーオキシドなど含窒素活性酸素種の生体作用も明らかになってきた。このような状況下、生活環境中に存在する化学物質の健康影響を活性酸素毒性の観点から解析する研究はすでに多くなされている。しかし、従来の研究で欠落しているのは活性酸素毒性の定量的評価であり、この原因の一つは活性酸素発生量の正確な測定が困難であることに起因している。たとえば、最も活性の高い活性酸素種の一つであるヒドロキシルラジカルについて、化学物質からどのような条件でどれだけの量のヒドロキシルラジカルが発生するかについてデータが不十分であり、健康影響を正確に評価することが難しい。生活環境中に存在する化学物質について、活性酸素の生成を定量的に評価する手法を確立することは、化学物質の健康影響を科学的根拠に基づいて評価するために、厚生科学研究分野で現在最も必要とされている研究課題である。本研究を遂行することにより、生活環境中に存在する化学物質の健康影響を活性酸素毒性の観点から評価するための科学的指標が得られる。
研究方法
化学物質から発生する活性酸素種を定量的に評価することを目的として、発生する活性酸素種の解析、活性酸素種の新しい検出方法の開発、活性酸素種の新しい定量法の開発に関する研究を行った。1)化学物質から発生する活性酸素種の解析に関しては、フェノール構造を有する抗酸化剤カテキン類から、アルカリ性条件下で発生する活性酸素種をUV、ESR、および反応速度の測定することにより解析を試みた。同じくフェノール構造を有する抗酸化剤レスベラトロールについては、すでに銅イオン存在下活性酸素種が発生することを明らかにしているが、染色体異常誘発試験を行い、活性酸素に由来する変異誘発が起きるかどうかを調べた。さらに、レスベラトロール誘導体を合成し構造と活性との相関を明らかにすることを試みた。環境汚染物質であるニトロアレーン類の活性酸素毒性についてはすでに化学的に予測し実証ずみであるが、今回新たに光励起下での活性酸素種の発生について解析を行った。C60フラーレンの研究では、フラーレンからスーパーオキシドが発生することをすでに明らかにしているが、スーパーオキシドの生成速度の解析を試みた。キノン類については、NADH存在下における活性酸素生成機構の解析を試みた。活性酸素種の新しい検出方法の開発に関しては、本年度は、活性酸素の一つである一重項酸素に焦点をあてて研究を行い、一重項酸素を効率良く高感度で検出することができるようなプローブの設計と合成を試みた。活性酸素種の新しい定量法の開発に関しては、引き続き、ヒドロキシルラジカルのHPLC-蛍光検出法ならびに化学発光検出法による新しい定量法を確立するための研究を行った。
結果と考察
本研究では、化学物質から発生する活性酸素種を定量的に評価することを目的として、活性酸素種の新しい定量分析法の確立、化学物質から発生する活性酸素種の解析と定量、さらに、活性酸素毒性の定量的評価のための研究を行った。その結果、化学物質から発生する活性酸素種の解析に関しては、フェノール構造を有する抗酸化剤カテキン類から、活性酸素種のひとつスーパーオキシドが発
生することをESRを用いて実証するとともに生成反応速度の算出に成功した。同じくフェノール構造を有する抗酸化剤レスベラトロールについては、今回はじめて、染色体異常誘発試験により変異誘発を確認することに成功し、さらにレスベラトロール誘導体については構造と活性との相関が明らかになった。環境汚染物質であるニトロアレーン類の活性酸素毒性については、今回新たに、ある種のニトロアレーン類はその構造に起因して光照射下で活性酸素種の一つNOを発生することを明らかにした。C60フラーレンの研究では、フラーレンからの活性酸素種の生成速度と発生した活性酸素種によるDNA損傷を明らかにすることに成功した。キノン類については、NADH存在下における活性酸素生成機構を解析し、NADHからキノンへの電子移動の結果生成するキノンラジカルアニオンとNADラジカルが活性酸素生成に関与していることを明らかにした。活性酸素の生成量がキノンの酸化還元特性と相関し一電子還元され易いキノンは活性酸素生成量が多くDNA切断活性が高いことが示され、このような実験が、活性酸素毒性の定量評価に応用できることが示された。活性酸素種の新しい検出方法の開発に関しては、一重項酸素をバイオイメージングすることが可能なプローブDPAXおよびDMAXの開発に成功した。一重項酸素は活性酸素種の一種であるが、特異な物性から他の活性酸素種とは明らかに異なる反応種である。特に生体内でこの一重項酸素が生成しているかについてはまだ議論のあるところで、この点から高感度一重項酸素検出蛍光プローブの開発が求められていたがその開発に成功した。活性酸素種の新しい定量法の開発に関しては、ヒドロキシルラジカルのHPLC-蛍光検出法ならびに化学発光検出法による新しい定量法を確立することを目的として研究を行い、テレフタル酸を利用した水酸ラジカルのHPLCによる定量法の確立に成功した。本法を用いて、Fenton反応で生じる水酸ラジカルの定量を行ない、Fe(II)と過酸化水素とが化学量論的に2:1で反応することを確認した。また、2-ヒドロキシテレフタル酸は、化学発光検出法によっても検出可能であることがわかり、蛍光検出法よりもさらに高感度の検出ができる可能性も明らかになった。これらの知見は、化学物質の活性酸素発生能(どのような条件でどのような活性酸素種をどれだけ発生するか)を研究するための一般的方法論を提示するものであり、広く環境中の化学物質の活性酸素毒性の評価に活用できる。
生することをESRを用いて実証するとともに生成反応速度の算出に成功した。同じくフェノール構造を有する抗酸化剤レスベラトロールについては、今回はじめて、染色体異常誘発試験により変異誘発を確認することに成功し、さらにレスベラトロール誘導体については構造と活性との相関が明らかになった。環境汚染物質であるニトロアレーン類の活性酸素毒性については、今回新たに、ある種のニトロアレーン類はその構造に起因して光照射下で活性酸素種の一つNOを発生することを明らかにした。C60フラーレンの研究では、フラーレンからの活性酸素種の生成速度と発生した活性酸素種によるDNA損傷を明らかにすることに成功した。キノン類については、NADH存在下における活性酸素生成機構を解析し、NADHからキノンへの電子移動の結果生成するキノンラジカルアニオンとNADラジカルが活性酸素生成に関与していることを明らかにした。活性酸素の生成量がキノンの酸化還元特性と相関し一電子還元され易いキノンは活性酸素生成量が多くDNA切断活性が高いことが示され、このような実験が、活性酸素毒性の定量評価に応用できることが示された。活性酸素種の新しい検出方法の開発に関しては、一重項酸素をバイオイメージングすることが可能なプローブDPAXおよびDMAXの開発に成功した。一重項酸素は活性酸素種の一種であるが、特異な物性から他の活性酸素種とは明らかに異なる反応種である。特に生体内でこの一重項酸素が生成しているかについてはまだ議論のあるところで、この点から高感度一重項酸素検出蛍光プローブの開発が求められていたがその開発に成功した。活性酸素種の新しい定量法の開発に関しては、ヒドロキシルラジカルのHPLC-蛍光検出法ならびに化学発光検出法による新しい定量法を確立することを目的として研究を行い、テレフタル酸を利用した水酸ラジカルのHPLCによる定量法の確立に成功した。本法を用いて、Fenton反応で生じる水酸ラジカルの定量を行ない、Fe(II)と過酸化水素とが化学量論的に2:1で反応することを確認した。また、2-ヒドロキシテレフタル酸は、化学発光検出法によっても検出可能であることがわかり、蛍光検出法よりもさらに高感度の検出ができる可能性も明らかになった。これらの知見は、化学物質の活性酸素発生能(どのような条件でどのような活性酸素種をどれだけ発生するか)を研究するための一般的方法論を提示するものであり、広く環境中の化学物質の活性酸素毒性の評価に活用できる。
結論
化学物質から発生する活性酸素種の解析に関しては、フェノール構造を有する抗酸化剤カテキン類が、塩基性条件下スーパーオキシドを発生することを実証した。生体内でも同様な機構で抗酸化剤が活性酸素発生剤になりうることを示す。同じくフェノール構造を有する抗酸化剤レスベラトロールについては、活性酸素種に起因する変異誘発を確認し、さらにレスベラトロール誘導体について構造と銅イオン存在下での活性との相関を明らかにした。金属イオンが活性酸素種発生に関与することは良く知られている。抗酸化剤においても金属イオンの関与により活性酸素種を発生することは、これらの化合物の活性酸素毒性を評価する際に重要な要素になる。環境汚染物質であるニトロアレーン類の活性酸素毒性についてはある種のニトロアレーン類がその構造に起因して光照射下でNOを発生することを明らかにした。今後は、ニトロアレーン類が活性酸素種NOを発生することによる生体作用を検討する必要がある。C60フラーレンの研究では、フラーレンが光照射によりスーパーオキシドを発生することから、その生物作用が注目される。キノン類については、還元剤NADH存在下における活性酸素種の発生にキノンラジカルアニオンとNADラジカルが関与していることが明らかになったが、NADラジカルが関与する活性酸素種発生は、今後より詳細に検討する必要がある。活性酸素種の新しい検出方法の開発に関しては、一重項酸素をバイオイメージングすることが可能な高感度一重項酸素検出蛍光プローブDPAXおよびDMAXの開発に成功した。生体内で一重項酸素が生成しているかについては
まだ議論のあるところであり、この検出試薬の利用性は大きい。活性酸素種の新しい定量法の開発に関しては、今回開発した、テレフタル酸を利用するヒドロキシルラジカルのHPLC-蛍光検出法、ならびに、2-ヒドロキシテレフタル酸を利用したHPLC-化学発光検出法は、高感度で選択的な検出法であり、今後有用な分析手法になると期待できる。以上、これらの知見は、化学物質の活性酸素発生能(どのような条件でどのような活性酸素種をどれだけ発生するか)を研究するための一般的方法論を提示するものであり、広く環境中の化学物質の活性酸素毒性の評価に活用できる。本プロジェクトでは、生活環境中に存在する化学物質の健康影響を活性酸素毒性の観点から評価するための新しい方法論の開発を目指して研究を展開した。本研究の成果は、将来的に広範に応用することが可能であり、定量的な毒性評価に基づいた健康影響評価は、国民の健康維持に貢献すると期待できる。
まだ議論のあるところであり、この検出試薬の利用性は大きい。活性酸素種の新しい定量法の開発に関しては、今回開発した、テレフタル酸を利用するヒドロキシルラジカルのHPLC-蛍光検出法、ならびに、2-ヒドロキシテレフタル酸を利用したHPLC-化学発光検出法は、高感度で選択的な検出法であり、今後有用な分析手法になると期待できる。以上、これらの知見は、化学物質の活性酸素発生能(どのような条件でどのような活性酸素種をどれだけ発生するか)を研究するための一般的方法論を提示するものであり、広く環境中の化学物質の活性酸素毒性の評価に活用できる。本プロジェクトでは、生活環境中に存在する化学物質の健康影響を活性酸素毒性の観点から評価するための新しい方法論の開発を目指して研究を展開した。本研究の成果は、将来的に広範に応用することが可能であり、定量的な毒性評価に基づいた健康影響評価は、国民の健康維持に貢献すると期待できる。
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