清掃作業従事者のダイオキシン暴露による健康影響に係る調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100938A
報告書区分
総括
研究課題名
清掃作業従事者のダイオキシン暴露による健康影響に係る調査研究(総括研究報告書)
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
高田 勗(中央労働災害防止協会)
研究分担者(所属機関)
  • 櫻井治彦(中央労働災害防止協会)
  • 工藤光弘(中央労働災害防止協会)
  • 山田憲一(中央労働災害防止協会)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
77,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全国数カ所程度の焼却方式の異なる施設の従業員の血液中ダイオキシン類濃度を測定し、現状のばく露実態を把握すると共に、健康影響との関係を検討し、量-反応関係及び量-影響関係の評価、研究を行う。
研究方法
調査対象施設:調査対象施設は平成10年度のアンケート調査から、調査に協力すると回答のあった一般廃棄物焼却施設3ヶ所、業界団体を通じて協力すると回答のあった産業廃棄物施設3ヶ所、また、併せて協力すると回答のあった解体作業を行う施設1ヶ所、計7施設を対象とした。調査対象者:調査対象者は、焼却施設内で作業に従事する者及び対照群として一部事務作業従事者を含めて、調査対象者を募った。調査対象者は4群に分類して検討した。即ち、Ⅰ群は焼却施設棟内に立ち入らない者、Ⅱ群は焼却施設内に立ち入るが作業に従事しない者、Ⅲ群は焼却施設内での支援作業等に従事する者、Ⅳ群は焼却施設内の関連設備の作業を行う者である。調査内容:調査内容は医師による問診、作業歴ヒアリング調査、アンケートによる健康調査、皮膚科医師による皮膚視診、血液・生化学検査、リンパ球機能検査、血液中ダイオキシン類濃度の測定である。
結果と考察
平成13年度に行った廃棄物焼却施設6施設と解体工事を行う1事業場の労働者の血液中ダイオキシン類濃度と健康状態に関する調査結果をまとめた。本調査に協力を得た対象者は、6施設で104名、1解体工事現場で8名である。血液中ダイオキシン類濃度が分析可能な対象者は、6施設で104名、解体作業従事者の場合、解体前が8名、解体後が6名である。調査対象者113名(男性108名、女性5名)の平均年齢は43.4歳(男性43.8歳、女性40.0歳)であった。①焼却施設:6施設の労働者の血液中ダイオキシン類濃度は平均21.3pg TEQ/g lipid(最小3.5pg TEQ/g lipid~最大66.7pg TEQ/g lipid)で、この平均値は、平成11年度、12年度の調査とほぼ同じ結果であった。また、本年度の調査結果は平成12年度に環境省が行った一般住民の血液中ダイオキシン類濃度とほぼ同様の値であった。作業歴ヒアリング調査の結果から、解体工事従事者を除いた104名の焼却施設関連度分類別による分類の内訳はⅠ群16名、Ⅱ群2名、Ⅲ群3名、Ⅳ群83名であった。群間での血液中ダイオキシン類濃度の有意な差は認められなかった。Ⅳ群を対象とした従事期間と血液中ダイオキシン類濃度の関係は、PCDD、PCDF及びCo-PCBすべてに有意な正の相関が認められた。また、年齢で補正した偏相関分析でも有意な正の相関が認められた。血液中ダイオキシン類濃度と、年齢及びBMIで調整したいくつかの生化学検査項目とは有意な相関が認められたが、平成12年度で有意な相関が認められた血糖、HbA1cについては相関が認められず、統計的に一定の傾向は認められない。また、有意な相関を認めた生化学検査項目の数値は基準値の範囲内であった。ダイオキシンによると思われる皮膚のざ瘡様皮疹及び臨床所見も認めておらず、焼却作業に基づくダイオキシン類ばく露による健康影響はないものと考えられる。食事との関係では、魚の摂取頻度と血液中ダイオキシン類濃度との間に有意な正の相関が認められており、食習慣との関連が考えられる。また、血液中水銀濃度と血液中ダイオキシン類濃度との間にも有意な正の相関が認められた。これらの結果から、血液中ダイオキシン類濃度は食生活等の生活習慣との関係が示唆された。②解体工事:解体工事に従事する労働者の血液中ダイオキシン類濃度は、解体前の全労働者8名の平均が20.8pg TEQ/g lipid(最小7.4pg TEQ/g lipid~最大60.2pg TEQ/g lipid)
であった。また、解体前後の調査を実施できた同一の6名の平均は、解体前で22.7pg TEQ/g lipid(最小7.4pg TEQ/g lipid~最大60.2pg TEQ/g lipid)、解体後で24.1pg TEQ/g lipid(最小 9.2pg TEQ/g lipid~61.2pg TEQ/g lipid)であった。解体前後の血液中ダイオキシン類濃度の平均値の差は有意な差を認めていない。
結論
廃棄物焼却施設を対象とした健康影響調査は、平成11年度から3年間行ってきたが、各年度ごとの解析で有意な相関を示す検査項目に一定の傾向が認められず、また、対象者は解析を行う上で十分な人数とは言えず、今後更なる調査を行い、より精度の高い統計解析を行う必要があるものと考える。

公開日・更新日

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