文献情報
文献番号
200100924A
報告書区分
総括
研究課題名
脱臭機、空気清浄機、コピー機からのオゾン発生機構に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
野﨑 淳夫(東北文化学園大学)
研究分担者(所属機関)
- 吉野 博(東北大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
5,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、建材や接着剤、室内に持ち込まれた日用品や生活用品(家具、開放型燃焼器具等)、生理現象(排泄臭、体臭、呼気)から室内に放出されるホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)、炭化水素(HC)、アンモニアなどの室内ガス状物質汚染が社会的に注目されている。特に、病院、老人ホーム等においては、屎尿処理に起因した臭気汚染がクローズアップされている。
この様な社会的背景により、脱臭を目的としたオゾン発生装置、静電型空気清浄機などの設備機器が普及段階にあり、結果的に室内へオゾンを放出している。
事務室では、汚染発生源となりうる事務機器(コピー機、レーザープリンタ等)が用いられており、既にオゾンガス汚染が指摘されている。住宅、医療、社会福祉施設内では、消臭・殺菌装置が使用されている。このうち、高電圧や紫外線を利用したものは、有害なオゾンガスを発生しうる。また、オゾンガスは、執務者、居住者、要介護者等に軽視できぬ健康影響を与えるとの報告もある。
医学的には、オゾンの人体曝露により、呼吸器の機能低下、めまい、頭痛、倦怠感等の諸症状の発生が明らかにされている。
室内では、光化学反応を生じさせるほどの紫外線量は無く、オゾンが発生することは、稀である。オゾンを発生しうる室内発生源は、コロナ放電を利用した静電型空気清浄機やコピー機、プリンター、脱臭装置などである。20年ほど前に、Allen、Sutton、Selwayらは、空気清浄機とコピー機の発生量を求めている、国内では、野﨑らが社会福祉施設におけるオゾン濃度の実測を行っている。対象施設には、オゾン脱臭機器やオゾン発生設備があり、測定した室内濃度は外気濃度を上回る事を報告している。また、房家らは、静電式家庭用空気清浄機の発生量を求めている。
しかしながら、これらの報告を用いて、室内濃度を正しく予測し、効果的な室内汚染防止対策を講ずることは極めて困難な状況にある。特に、コピー機に関しては、近年の機種におけるオゾン発生量に関する報告が無く、脱臭装置に関する報告も見当たらない。また、温度、湿度、気流などの室内環境条件が、器具のオゾン発生量・特性に与える影響も不明である。さらに、脱臭性能が表記されている器具に対しては、その具体的な室内における脱臭効果とその限界が不明である。
そこで、本研究では、1)各種オゾン発生源の発生量を定量的に把握し、次に、2)脱臭装置における室内臭気物質の濃度低減効果とその限界を実験的に明らかにし、3)建築環境工学、建築衛生学的観点から室内オゾン汚染の防止対策を講ずることを目的とする。
結果として、・適確なオゾンの室内濃度予測法が実現され、・個人曝露量の推定が可能となる。
具体的には、
1)各種発生源の発生量・発生特性の解明が行われる。
2)オゾンを利用した脱臭装置等の室内臭気物質の濃度低減効果とその限界が明確なものとなる。
3)最後に、本研究により実験的に得られた発生量や発生特性と、室内濃度構成メカニズムを解明することにより、正確な室内濃度予測法が実現する。そして、正しい濃度予測値に基づいた工学的汚染防止対策(例えば、換気システムの構築、必要換気量の決定、適切な器具使用法、器具排出量の許容量等)が提案できる。
この様な社会的背景により、脱臭を目的としたオゾン発生装置、静電型空気清浄機などの設備機器が普及段階にあり、結果的に室内へオゾンを放出している。
事務室では、汚染発生源となりうる事務機器(コピー機、レーザープリンタ等)が用いられており、既にオゾンガス汚染が指摘されている。住宅、医療、社会福祉施設内では、消臭・殺菌装置が使用されている。このうち、高電圧や紫外線を利用したものは、有害なオゾンガスを発生しうる。また、オゾンガスは、執務者、居住者、要介護者等に軽視できぬ健康影響を与えるとの報告もある。
医学的には、オゾンの人体曝露により、呼吸器の機能低下、めまい、頭痛、倦怠感等の諸症状の発生が明らかにされている。
室内では、光化学反応を生じさせるほどの紫外線量は無く、オゾンが発生することは、稀である。オゾンを発生しうる室内発生源は、コロナ放電を利用した静電型空気清浄機やコピー機、プリンター、脱臭装置などである。20年ほど前に、Allen、Sutton、Selwayらは、空気清浄機とコピー機の発生量を求めている、国内では、野﨑らが社会福祉施設におけるオゾン濃度の実測を行っている。対象施設には、オゾン脱臭機器やオゾン発生設備があり、測定した室内濃度は外気濃度を上回る事を報告している。また、房家らは、静電式家庭用空気清浄機の発生量を求めている。
しかしながら、これらの報告を用いて、室内濃度を正しく予測し、効果的な室内汚染防止対策を講ずることは極めて困難な状況にある。特に、コピー機に関しては、近年の機種におけるオゾン発生量に関する報告が無く、脱臭装置に関する報告も見当たらない。また、温度、湿度、気流などの室内環境条件が、器具のオゾン発生量・特性に与える影響も不明である。さらに、脱臭性能が表記されている器具に対しては、その具体的な室内における脱臭効果とその限界が不明である。
そこで、本研究では、1)各種オゾン発生源の発生量を定量的に把握し、次に、2)脱臭装置における室内臭気物質の濃度低減効果とその限界を実験的に明らかにし、3)建築環境工学、建築衛生学的観点から室内オゾン汚染の防止対策を講ずることを目的とする。
結果として、・適確なオゾンの室内濃度予測法が実現され、・個人曝露量の推定が可能となる。
具体的には、
1)各種発生源の発生量・発生特性の解明が行われる。
2)オゾンを利用した脱臭装置等の室内臭気物質の濃度低減効果とその限界が明確なものとなる。
3)最後に、本研究により実験的に得られた発生量や発生特性と、室内濃度構成メカニズムを解明することにより、正確な室内濃度予測法が実現する。そして、正しい濃度予測値に基づいた工学的汚染防止対策(例えば、換気システムの構築、必要換気量の決定、適切な器具使用法、器具排出量の許容量等)が提案できる。
研究方法
a.オゾン発生実験
オゾン発生量を求める実験は、換気回数が制御でき、オゾンや臭気物質の吸収・吸着の抑制された実験室で行う必要がある。そこで、本実験においては、この様な条件を満たしたステンレス製のチャンバーを用いた実験システムを構築した。本チャンバーは、任意の換気量が得られる機械換気装置を有したもので、4.977m3(1.8m×1.8m×1.6m)の気積を有している。チャンバーには試料ガスを採取するため、サンプリング孔が設けられており、これを用いて試料ガスの採取を行った。また、発生源であるコピー機は、チャンバー内に設置されており、一定の換気量のもとに実験が行われた。
尚、チャンバー内には一様拡状態を得るために拡散ファンを設置し、オゾン濃度が均一になるようにした。この状態でトレーサーガスを用いて、換気率を測定したところ、目的値と同等の値が得られた。
b.オゾン利用機器の汚染物質の除去実験
生成するオゾンによるVOC等の汚染物質除去に関する実験を行った。実験チャンバーは、任意の換気量が得られる機械換気装置を有したもので、0.528m3(1.1m×0.8m×0.6m)の気積を有している。試料ガスの採取は、発生量を求める実験と同様である。汚染ガスの発生は、チャンバー内にボンベに充填られた汚染ガスをマスフローコントローラを用いて導入し、一定の換気量のもとに実験が行われた。
尚、チャンバー内には一様拡散のためのファンを設置し、オゾン及び汚染物質濃度が均一になるようにした。この状態でトレーサーガスを使用して換気率を測定したところ、目的値と同等の値が得られた。
オゾン発生量を求める実験は、換気回数が制御でき、オゾンや臭気物質の吸収・吸着の抑制された実験室で行う必要がある。そこで、本実験においては、この様な条件を満たしたステンレス製のチャンバーを用いた実験システムを構築した。本チャンバーは、任意の換気量が得られる機械換気装置を有したもので、4.977m3(1.8m×1.8m×1.6m)の気積を有している。チャンバーには試料ガスを採取するため、サンプリング孔が設けられており、これを用いて試料ガスの採取を行った。また、発生源であるコピー機は、チャンバー内に設置されており、一定の換気量のもとに実験が行われた。
尚、チャンバー内には一様拡状態を得るために拡散ファンを設置し、オゾン濃度が均一になるようにした。この状態でトレーサーガスを用いて、換気率を測定したところ、目的値と同等の値が得られた。
b.オゾン利用機器の汚染物質の除去実験
生成するオゾンによるVOC等の汚染物質除去に関する実験を行った。実験チャンバーは、任意の換気量が得られる機械換気装置を有したもので、0.528m3(1.1m×0.8m×0.6m)の気積を有している。試料ガスの採取は、発生量を求める実験と同様である。汚染ガスの発生は、チャンバー内にボンベに充填られた汚染ガスをマスフローコントローラを用いて導入し、一定の換気量のもとに実験が行われた。
尚、チャンバー内には一様拡散のためのファンを設置し、オゾン及び汚染物質濃度が均一になるようにした。この状態でトレーサーガスを使用して換気率を測定したところ、目的値と同等の値が得られた。
結果と考察
本研究では、高電圧や紫外線などを利用したオゾン発生源であるコピー機4台、レーザープリンタ3台、インクジェットプリンタ1台、空気清浄機3台、脱臭機2台の計13台について、実験対象機器とした。
コピー機、レーザープリンタ、インジェットプリンタのオゾン発生に関して、機器運転に伴うオゾン濃度の上昇は、n(1/h)=0.20の換気条件でコピー機、レーザープリンタは、運転後30分程度でほぼ定常濃度に達した。また、インジェットプリンタからのオゾン発生はみられなかった。静電集塵式空気清浄機、オゾン脱臭機からオゾンの発生が確認された。尚、本実験条件下での機器のオゾン発生量はコピー機で4~16(μg/枚)、レーザープリンタで0.2~0.9(μg/枚)、静電集塵式空気清浄機で16980(μg/h)、オゾン脱臭機で1365~55884(μg/h)であった。本実験から得られた発生量から物品への吸着を取り入れたマスバランスモデルによる濃度予測法の提案を行った。本法を用いた濃度予測値と実験値の比較として、高い符号率が得られた。
また、固体吸着-加熱脱着法より分析検出した24成分について、相当換気回数を用いた評価法により、オゾン脱臭機のVOCs除去特性を求めた。自然換気回数N1と機器運転時の換気回数N2を比較するとほとんどの成分で機器運転時のN2の値が幾分大きいため、相当換気回数Nは正の値をとるケースが多かったが、いずれも小さく高い効果とは言い難い結果となった。チェンバー内のオゾンがより高濃度となった機種OD1では、メチルイソブチルケトン、n-ブタノール、2,4-ジメチルペンタンといった物質で相当換気回数が2(1/h)を上回り、これらは比較的除去(分解)されやすい物質であるとわかった。
コピー機、レーザープリンタ、インジェットプリンタのオゾン発生に関して、機器運転に伴うオゾン濃度の上昇は、n(1/h)=0.20の換気条件でコピー機、レーザープリンタは、運転後30分程度でほぼ定常濃度に達した。また、インジェットプリンタからのオゾン発生はみられなかった。静電集塵式空気清浄機、オゾン脱臭機からオゾンの発生が確認された。尚、本実験条件下での機器のオゾン発生量はコピー機で4~16(μg/枚)、レーザープリンタで0.2~0.9(μg/枚)、静電集塵式空気清浄機で16980(μg/h)、オゾン脱臭機で1365~55884(μg/h)であった。本実験から得られた発生量から物品への吸着を取り入れたマスバランスモデルによる濃度予測法の提案を行った。本法を用いた濃度予測値と実験値の比較として、高い符号率が得られた。
また、固体吸着-加熱脱着法より分析検出した24成分について、相当換気回数を用いた評価法により、オゾン脱臭機のVOCs除去特性を求めた。自然換気回数N1と機器運転時の換気回数N2を比較するとほとんどの成分で機器運転時のN2の値が幾分大きいため、相当換気回数Nは正の値をとるケースが多かったが、いずれも小さく高い効果とは言い難い結果となった。チェンバー内のオゾンがより高濃度となった機種OD1では、メチルイソブチルケトン、n-ブタノール、2,4-ジメチルペンタンといった物質で相当換気回数が2(1/h)を上回り、これらは比較的除去(分解)されやすい物質であるとわかった。
結論
① 各種オゾン発生源の発生量について
各種オゾン発生源の発生量について、実験室実験により求めた。さらに、ある任意の時刻における室内濃度から、その時の発生源発生量Mを求める室内オゾン濃度予測式を提案した。実験的に得られたオゾン発生源発生量と室内濃度予測式を用いて、高精度の室内オゾン濃度予測法を確立した。これにより、工学的な室内オゾン汚染防止対策を講ずる道が拓けた。
②脱臭装置の効果について
本研究ではオゾン脱臭式空気清浄機について、その有効性を検討するため、小型チェンバー内においてVOCsガスを発生させ、その除去特性に関する基礎的実験を行った。その結果、対象機器の運転によるオゾンの発生を確認したが、一部の物質を除いて明確な低減化は認められなかった。なお、今後の検討課題として、①臭気物質の種類と反応性、②健康基準値以下の低いオゾン濃度での除去効果、③周囲環境条件(特に湿度)が及ぼす影響、④副生成物の確認等が挙げられる。
各種オゾン発生源の発生量について、実験室実験により求めた。さらに、ある任意の時刻における室内濃度から、その時の発生源発生量Mを求める室内オゾン濃度予測式を提案した。実験的に得られたオゾン発生源発生量と室内濃度予測式を用いて、高精度の室内オゾン濃度予測法を確立した。これにより、工学的な室内オゾン汚染防止対策を講ずる道が拓けた。
②脱臭装置の効果について
本研究ではオゾン脱臭式空気清浄機について、その有効性を検討するため、小型チェンバー内においてVOCsガスを発生させ、その除去特性に関する基礎的実験を行った。その結果、対象機器の運転によるオゾンの発生を確認したが、一部の物質を除いて明確な低減化は認められなかった。なお、今後の検討課題として、①臭気物質の種類と反応性、②健康基準値以下の低いオゾン濃度での除去効果、③周囲環境条件(特に湿度)が及ぼす影響、④副生成物の確認等が挙げられる。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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