特定疾患に関する評価研究班

文献情報

文献番号
200100857A
報告書区分
総括
研究課題名
特定疾患に関する評価研究班
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
清野 裕(京都大学)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎承一(聖マリアンナ医科大学)
  • 三木知博(東亜大学)
  • 長谷川敏彦(国立医療・病院管理研究所)
  • 高野謙二(自治医科大学)
  • 関野宏明(聖マリアンナ医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 特定疾患対策研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
28,670,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定疾患研究は原因解明はもとより治療に直結する成果が期待されることが多く、研究計画段階で疾患の成因のみならず、患者の予後、治療方法の開発までも含む治療に対する科学的評価、患者およびその家族の経済的、精神的負担の改善、特定疾患の医療に係わる直接費用(医療費・医療関連費)、間接費用(労働損失など)などの医療経済に対する貢献などを評価して、今後の研究に反映していく必要がある。最終年度である平成13年度はこれまで当研究班で行ってきた評価研究の結果を踏まえ、特定疾患対策研究事業全体の見直しを含めた再評価を行った。疾患の定義、診断基準の策定、正確な診断の確立、発症率、有病率の掌握、病態の解明、治療ガイドラインの策定を含んだ研究が行われているかを評価の指標とし、この観点から各分野の専門家とともに特定疾患対策研究事業および治療研究事業の見直しを行った。
研究方法
1)特定疾患対策研究事業および特定疾患治療研究事業の再評価:特定疾患対策研究事業・特定疾患治療研究事業の再評価のため各分野の専門家からなる外部委員会を設置し、研究事業の見直しおよび指定医制度に関する検討を行った。2)科学的評価:当班の分担研究者が実際に各研究班の班会議に出席し、評価の現状を解析した。そこで得られた結果を元に、平成11年度特定疾患対策研究事業に対する評価票に関する資料作成を厚生省に提言した。平成12年度には中間事後評価委員会でこの資料作成が採用されたため、平成13年度は主任研究者が作成したこの資料と班会議出席得られた成果報告を元に評価小委員が作成した評価票の分析を行い、また評価小委員に評価票に関するアンケート調査を行い、資料の有用性と評価の問題点を解析した。3)社会福祉的評価:一般の大学生を対象に平成12年度に医学生に対して行ったのと同様な特定疾患の認知度、告知に対する意識調査などに関するアンケート調査を行った。4)難病患者の将来予測:特定疾患受給者証交付件数、増加数を用いて、疾患別将来受給者数の推定を行った。5) 特定疾患への再生医療、遺伝子治療の導入:1)に関連して新たな特定疾患研究事業の研究班設置を提言するため、実験的基礎的検討を行った。
結果と考察
1)特定疾患対策研究事業および特定疾患治療研究事業の再評価:特定疾患対策研究事業全体の見直しを含めた再評価を行った。特定疾患対策研究事業においては臨床調査研究班のうち3班はその役割を終えた、あるいは他の研究事業での研究が適切であると考えられた。また近接した研究対象のため6班の合併ないし改編を提言した。横断的研究班のうち4研究班はそのほとんどが基礎的研究、動物実験を主体としており、特定疾患対策研究事業以外の研究費での推進が適当と考えら、5研究班が統合ないし何らかの改編が必要と考えられた。さらに新たに14の研究班の提案を行った。 治療研究事業の対象疾患のうち4疾患は治療法の進歩や患者の軽症化などの理由により治療研究事業での継続が不要と考えられた。さらに4疾患が重症例に限定し対象疾患とすることや他の疾患を網羅した対象疾患名に変更することが提案された。疾患の病態の解明、診断の確立、治療法開発への期待を理由として10疾患を新たに対象疾患として取り上げることを提案した。
2)指定医制度に関する検討:侵襲臓器や重症度に基づいて治療研究事業を推進するために指定医制度の検討を行った。特定疾患患者の診断と評価を遂行する「指定医」を疾患毎に各地域に任命し、診断・侵襲臓器・重症度を統一的な一定のレベルで評価していくことが必要であるが、この制度を実施するには患者サイドの負担の増加を懸念する声もあり、また指定医の選択方法や地域による専門医の偏りなどの問題点も指摘された。重症度分類や薬物治療の必要でない患者の把握などに指定医の存在は必要と考えられたが、実施にあたってはさらに検討を重ねる必要がある。
3) 科学的評価:評価小委員による評価は、研究班に求められている成果が十分に得られているのかを検証するとともに、進むべき方向性を示唆するものとして利用されるべきである。そのために評価小委員が作成した評価票の分析を当研究班で行った。これまで評価結果が研究班にフィードバックされることはなかったが、平成13年度には初年度および中間年度の評価票の分析を当研究班で実施し、厚生労働省を介して、各研究班の評価結果を当該研究班に還元する試みも実施した。さらに評価票のコメントを充実させることが評価結果を有効に活用するためにも重要である。 また評価小委員に対するアンケート調査を実施し、評価の現場からの声を直接聞くことで、評価の実態の把握や評価体制の問題点の解析を行った。評価小委員制度は平成12年度で終了したが、このアンケートの結果は今後の評価体制の改善に役立つものと考えられる。
4) 難病患者の将来予測:特定疾患受給者証交付件数、増加数を用いて、疾患別将来受給者数の推定を行った。この結果、受給者数の増加が予測されたが、この30年間に診断基準が変更になった疾患や新たに追加になった対象疾患もあり、慎重に解析をすすめる必要がある。
5)社会福祉的評価:難病への知識は一般大学生と医学部1年生との間には差はなかったが、難病研究への興味は医学部1年生の方が強かった。本人への告知については自分が病気である場合、一般学生、医学部1年師絵、医学部6年生が最も積極的であり、一般大学生は医学部1年生より消極的であった。本人への告知は家族が病気の場合には違いはなく、約1/3だけが賛成であった。告知をすみやかにすべきという意見は、病人が自分であろうと家族であろうと、医学生よりも一般大学生のほうが多く、告知する側とされる側の立場の違いが現れた。今後対象者を増やし、医学教育の有り様、医学生としての適正などについて検討する必要がある。
6) 特定疾患への再生医学、遺伝子治療の導入:再生医学の分野を将来は特定疾患にも拡大するべく、特定疾患における再生医学の基礎的検討を行った。この結果得た知見は、今後特定疾患に広く応用可能なものであり、特定疾患対策研究事業の再評価に生かし、1)において再生医療を含んだ新たな研究事業の必要性について提言を行った。
結論
特定疾患対策研究事業の推進のため、現行の評価体制の評価および事業全体の見直しの再評価を実施し、特定疾患対策研究事業における新たな提言を行った。

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